CATHOLICA カトリック表象大全
ISBN:978-4-487-81569-2
定価4,180円(本体3,800円+税10%)
発売年月日:2023年02月19日
ページ数:256
判型:B5変型判 上製
絵画、彫刻、建築、衣装、装飾、装身具などで彩られた、
キリスト教・カトリック教会の視覚文化を一望する図鑑。
待望の日本語版が、ついに刊行!
オールカラー図版550点超!
「宝石できらめく聖人の髑髏、街角の聖母像、祭りの山車など、芸術にとどまらないカトリックの視覚文化がここにはある」——金沢百枝(本書「序文」より)
「カトリック芸術は、単なる宗教の副産物ではない。それは――聖書の言葉やミサの儀式同様——宗教そのものだ」——スザンナ・イヴァニッチ(本書「はじめに」より)
序文 —日本語版監修にあたって
本書は、Catholica: The Visual Culture of Catholicism (2022)の日本語全訳である。若き俊英スザンナ・イヴァニッチはこの最新刊でカトリック世界の視覚文化を豊富なカラー図版とともに解説する。キリスト教美術や建築というと、ゴシックの大聖堂やバロック美術などヨーロッパのものを思い起こしがちだが、本書は、メキシコの死者の祭りなど、ヨーロッパに限らない、「芸術」とも言えない、より多様な世界を紹介する。構成も明快で、「教義」「信仰の場」「霊性」の3部立て。第1部で名画を用いて聖なる世界の基礎を解説した後、第2部で大聖堂を例に建築の解説が続き、最後は祝祭や巡礼を通して、個人の信仰が世界的広がりを獲得するまでを詳述する。
著者イヴァニッチは、ケンブリッジ大学において博士号を取得後、現在は英国のケント大学の中世・近世研究センターで近世史の教鞭を執る。近世の中央ヨーロッパにおける宗教と物質文化・視覚文化との関係が専門だが、本書で発揮されているとおり、その興味はグローバルな広がりをもつ。
日本において、キリスト教図像学事典や、建築の解説集、キリスト教文化に関する一般書はあったが、これまで、本書のように、カトリック世界の視覚文化という切り口で一冊にまとまった解説書はなかったように思う。修道会の宗派によって異なる僧服の見分け方、ミサで用いる典礼具の詳細、土着の習俗と一体となった世界各地の祭りなど、カトリック世界のさまざまな側面について、絵解き風の解説ページがおもしろい。選ばれている図版も独特だ。宝石できらめく聖人の髑髏、街角の聖母像、祭りの山車など、芸術にとどまらないカトリックの視覚文化の粋がここにはある。
図版が多いうえ、難解な表現は可能な限り避けたので、最初から読んでもあっという間に最後まで読み終えてしまうにちがいない。しかし、特に読むべき順番はないので、ぱらぱらとページをめくって、興味を引いたところから読み始めるのもよいだろう。いずれにせよ、カトリックの視覚世界の迷宮に耽溺していただけたら嬉しい。
金沢百枝
美術史家、多摩美術大学教授
コンテンツ
はじめに
第1部 教義
1 神の言葉 2 神の意思を伝える者 3 信仰を統べる
第2部 信仰の場
1 大聖堂 2 家庭 3 聖地
第3部 霊性
1 共同体 2 個人 3 五感
参考文献
掲載図版(出典・クレジット)
索引