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GEMS 美しき宝石と鉱物の世界

GEMS 美しき宝石と鉱物の世界

フランソワ・ファルジュ/監修 田中陵二/日本語版監修

ISBN:978-4-487-81521-0
定価5,280円(本体4,800円+税10%)
発売年月日:2022年07月19日
ページ数:304
判型:B5変型

解説:
フランス国立自然史博物館とヴァン クリーフ&アーペルの華麗なる競演。
500以上の鉱物標本や宝石とともに、石の美しさを語り尽くす。

ヴァン クリーフ&アーペルの作品200点を収録。

《序文》

 鉱物と宝石に着目した《貴石》展は、ヴァン クリーフ&アーペルと、フランスの文化および科学の中心であるフランス国立自然史博物館(パリ)との新たな共同事業として開催されました。2007 年に《パール:一つの自然史》展が実現し、ヴァン クリーフ&アーペルのコレクションから数点が紹介されて以来、私たちハイジュエリー・メゾンと自然史博物館は10 年以上にわたり関係を深め合ってきました。2012 年以降は、ヴァン クリーフ&アーペルが支援する「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」を介して結び付きが強まり、この提携がきっかけとなって、自然史博物館の所蔵するロジェ・カイヨワの鉱物と化石のコレクションが完成しています。カイヨワは20 世紀の著名な知識人であり、魅力的な石を見分ける眼識ももっていました。2016年には、シンガポールのアートサイエンス・ミュージアムにて《ヴァン クリーフ&アーペル:宝石にみる芸術と科学》展が開かれ、自然史博物館の貴重な鉱物とジェムストーンのコレクションが公開されました。
 この《貴石》展において、私たちが続けてきた鉱物学とジュエリーとの対話を一般の皆様と共有できることをうれしく思います。自然史博物館の科学的厳密性と正確性に、ヴァン クリーフ&アーペルの魅惑的なデザインを融合させた《貴石》展は、科学の世界と宝石の世界をつなぐ架け橋となるものです。自然のままの結晶、カットされた宝石、ジュエリー作品が並ぶ本展では、石本来の美しさのみならず、数十億年に及ぶ地球の営みや、卓越した職人技をも感じていただけるでしょう。
 この長期的な事業を通じ、ヴァン クリーフ&アーペルと自然史博物館を駆り立てているのは、自らの知識を他者に伝えたいという願いです。公立の高等教育・研究機関である自然史博物館は、科学知識を可能な限り広く提供し、普及することに尽力しています。ヴァン クリーフ&アーペルは長年にわたり、メゾンの代名詞である専門知識、技術力、創造力の継承と、ジュエリーの奥深さの周知に努めてきました。この《貴石》展で、私たちは互いの強みと財産を一体化させています。創業以来メゾンが制作してきたジュエリーと、博物館のコレクションのうち形や色などが不思議で珍しい鉱物とを一緒に展示しているのです。その他、ロジェ・カイヨワが所蔵していた素晴らしい標本数点も初公開されます。
 来場者はパトリック・ジュアンとサンジット・マンクがデザインした幻想的な展示スペースを進みながら、地球の中心から始まり、パリのハイジュエリー工房で終わる旅を経験します。その締めくくりとなるのは、ヴァン クリーフ&アーペルによる独創的な作品です。原石、宝石、ジュエリーを巧みに組み合わせ、貴重な石同士のロマンティックな出会いを表現したこの作品は本展のために特別に制作されました。

ニコラ・ボス (ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼最高経営責任者(CEO))


〈序文〉鉱物の自然史:地球への賛辞として

 自然史を学ぶことで、私たちは、自らを取り巻く世界の多様性に気づきます。驚きに満ちた事象の起源をも見通せるようになります。この確固たる前提のもと、地球の鉱物とジュエリーを集めた展覧会が開催される運びとなりました。
 そもそも、私たちが特定の石を「貴石」と呼びたくなるのは、その石に驚嘆の念を抱くからです。「マダム、今夜はじつに素敵なエメラルドのネックレスをお召しですね。ところで、その美しいジュエリーを生み出した自然の力については何かご存知ですか?」自然史的に言えば、エメラルドは緑柱石、すなわちアルミニウムのケイ酸塩とベリリウムが結合した鉱物であり、クロム、バナジウム、少量の鉄も含んでいます。そう説明されてロマンを感じる人は少ないでしょう。しかしながら、エメラルドのロマンティックなところは、これらの元素の組み合わせに極めて特殊な条件を必要とする点です。ベリリウムが地殻に存在するのに対し、クロム、バナジウムあるいは鉄はさらに深いところにある地殻下のマントルにあります。つまり、これらの元素が出会うためには、巨大な地殻変動が起こらなくてはならなかったのです。地殻を循環する高温の液体がアルミニウムやベリリウムを捕集し、クロム、マグネシウム、鉄を豊富に含むマントルの岩石まで運ばなくてはなりませんでした。これは信じがたいほど稀有な出会いです。めったに起きることではありません。ですからマダム、あなたのエメラルドが誕生するまでには、数千万年という気の遠くなるような時間が必要だったのです。
 では、あなたの耳元のダイヤモンドはどうでしょうか。何とも退屈なことに、ダイヤモンドは炭素だけで構成されています。といってもそれは、地球のマントルの深さ140kmを超える場所で、超高圧を受けて生成された純粋な炭素です。10 万気圧を超えるこの高圧がなければ、ダイヤモンドはただの黒鉛の黒塊と化してしまいます。この非常に深い場所で生成された後、ダイヤモンドは地表へ運ばれていったと推測されます。驚くべきはそのダイヤモンドの旅です。仮に上昇速度が遅すぎたとしたら、シンデレラの馬車のごとく、ダイヤモンドは真っ黒な黒鉛に戻っていたことでしょう。急上昇しなければ美しいダイヤモンドは生まれません。そしてこの上昇を可能にしたのが、下部マントルで生成されたキンバーライトと呼ばれるマグマの噴出でした。キンバーライトは、マントル内の岩石や、その岩石に含まれるダイヤモンドを素早く取り込みながら、地表へ上昇していったのです。数十億年前、現在の南アフリカ共和国キンバリー地域で起きたのは、こういう現象でした。
 かくも巨大な地球の力と長い年月が、最終的に人間という短命な生き物の装飾品に変わりうるとは、どこか不思議で崇高な事実ではないでしょうか。マダム、そのネックレスとイヤリングを身につけたあなたは、地質学の誉れです。地球の自然史から授けられる贈り物として、宝石以上に素晴らしいものは存在しません。

ブルーノ・ダビッド(国立自然史博物館(MNHN、パリ)館長)


著者情報

フランソワ ファルジュ(ふらんそわふぁるじゅ)

著者情報

田中陵二(たなかりょうじ)