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非認知能力を伸ばす実践アイデアブック_オンデマンド版

スウェーデンと日本発!
非認知能力を伸ばす実践アイデアブック_オンデマンド版

中山芳一・田中麻衣・德留宏紀/著 

ISBN:978-4-487-81657-6
定価2,035円(本体1,850円+税10%)
発売年月日:2023年08月22日
ページ数:288
判型:46

解説:
教育先進国スウェーデンと日本発! 

教育現場で子どもたちの非認知能力、そして認知能力をいっしょに伸ばす実例とアイデアがたっぷり詰まった実践集。
文科省の指導要領や『国語教育』で令和の教師が知っておきたい「授業重要用語・キーワード」として取り上げられた非認知能力。
今後は「学習評価」にも取り入れられていくと言われ注目度が高い。

いっぽう、教育先進国スウェーデンでは、すでに認知能力と非認知能力の一体的な教育制度が国レベルで確立している。
本書では、スウェーデンと日本で実際に学校の授業や行事に非認知能力を伸ばす仕掛けを取り入れている実例とアイデアを紹介。
また、「子どもが非認知能力を自ら伸ばし使いこなすために、教育にかかわる大人は具体的に何ができるのか」について、非認知能力に関わる本を多数執筆し、また、現在全国の学校で非認知能力を伸ばす仕掛けを授業や行事に導入中の中山芳一先生と、スウェーデンの学校教育現場の事例を実践者兼運営者として携わる大変稀有な存在、田中麻衣先生、そして大阪の公立中学校で教科学習を通じて非認知能力と認知能力の向上を実現した徳留宏紀先生が、イラストや図、データを交えて紹介。
上記の紹介例について、さらに中山先生が非認知能力的視点から解説する、「単なる海外すごいよ本」ではない現場ありきの教育実践の書。

★非認知能力とは?
仕事の成果や人生の充実度が決まる力のこと。
最近では、落合陽一氏が自身の動画で『非認知能力』について語り、メンタリストD A I G OもYouTubeで『非認知能力』を取り上げ、ますます話題になっている。

もっと具体的に掘り下げると…。

○コミュニケーション能力(他者とやり取りできる力)
○思いやり・共感性(他者の立場に立ち、その思いを想像できる力)
○忍耐力(我慢する力)
○自信・自尊感情(自分をプラスにとらえる力)
○意欲(前向きに頑張ろうとする力)……などなど。
世界で初めて提唱したのは、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン氏。

はじめに

 2019年2月、非認知能力と小学生の放課後に関する調査研究のためにスウェーデンのストックホルムへ赴いたときのことです。
 ストックホルム大学教育学部の研究者陣とのカンファレンス……いま日本では非認知能力が注目を集め始めていることを知らせたとき、一人の老教授がやや冷ややかな笑みを浮かべながら「非認知能力と認知能力はコインの裏表だからね……」と呟いていた姿をいまも忘れることができません。
 「そんなことはこっちだってわかっとるわぁ!」と言いたいものの、こちらは非認知能力に特化した研究テーマで訪問しているので、いささか分の悪さを感じたものでした。
 私が『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』を出版したのは2018年、その1年前にも学童保育領域の本の中に非認知能力のことは紹介していました。正直なところ、近いうちに非認知能力などという言葉は下火になってくるだろうと思っていましたし、前述の前著でも書きましたが、こんな言葉を使わなくても当たり前に大切にされていってほしいと願っていました。しかし、あれから3年以上が経つのに、下火になるどころ かますます火が燃え盛ってきています。
 そのような中、経済学領域から生まれたといわれる「非認知能力」という総称について、心理学領域からも合いの手が入り始めました。そのため、客観的な点数化が困難な能力の総称である非認知能力の一つひとつが、より精緻に検討され始めていることに心強い思いを抱いています。非認知能力という総称もそこに包含される各能力についても概念の曲解を防いだり、心理学的に測定や介入が試みられていたりすることで、非認知能力の解像度がますます上がっていくことを期待できそうです。
 一方、私は、現在に到るまで保育所・幼稚園・認定こども園、小学校、中学校、高等学校、また学童保育所や社会教育のフィールドなど、本当に様々な教育現場に関わる機会をいただいてきましたし、それはいまでも変わりません。特に、2018年に出版した前著が、想像以上にたくさんの教育現場の方々へリーチしたことも相まっての現在です。どの現場に赴いても、先生方は「学びに向かう力・人間性等(いわゆる非認知能力)」や「自主 性・社会性・創造性」を子どもたちに育むために真剣に取り組まれています。また、それをどう評価するかについても大変悩まれています。
 私は、教育現場の先生方へ何か指導や講評をするつもりはなく、一緒に課題解決をするために伴走するスタンスを貫いています。これは現場に立っていらっしゃる先生方を最大限リスペクトしたいという私のこだわりでもあるのです。ともすれば、そうすることで、私こそが一番学ばせていただけているように思えてなりません。後ほど紹介しますが、先生方と一緒に現場の課題解決をしていく中で、これまで以上のご提案をさせていただけるようにもなりました。本書では、現在の最新のものをご提案として掲載しておりますのでぜひご参照ください。
 また、このような中で私は改めて大きな不安を抱くようになりました。非認知能力がブームになっている……。非認知能力がバズっている……。ある意味、年々身近になっているのかもしれませんが、ブームってやはり下火になるものなんですよね。先ほどの通り、仮に下火になったとしても、私たちの中で当たり前に大切な力として根付いてくれれば良いのですが、多くの場合、ブームの火が燃え上がるほど下火になったときの温度差は激しいものです。つまり、数年後には「非認知能力……そんな力もあったよね」で終わってしまいかねません。
 わが国でも、非認知能力が幼児教育を中心に注目され、その後、学校教育や社会人の間にも波及していきました。波及の背景には色々な要因が複合的に絡んでいますが、その中でもAI(人工知能)と人間とが協業・協働する社会では、「人間だからこそ求められる役割と能力」を身に付け発揮できるようになることが問われていて、そこに非認知能力(または社会情動的スキル)が重なってきたことが挙げられます。この時代の変化に相まって、とりわけわが国では認知能力(いわゆる学力)に偏り過ぎてしまっていたことを省みて、そのアンチテーゼとして非認知能力が注目を集めた傾向も考えられます。これは、ともすればこれからの時代には認知能力は不要で、非認知能力だけあれば良いんだ……といった論調にもなりかねません。
 さらに、非認知能力が認知能力の獲得・向上を支えるという構造が、ともすれば認知能力のために非認知能力を伸ばさなければならないというすり替えにもなりかねないのです。
 私自身も読者の方々へこうした誤解を与えないように努めてきましたが、申し訳ないことに誤解は与えてしまっていると思います。非認知能力は決して特別でキャッチーな力ではない。だからブームが下火になった後で当たり前になってくれればよいのだけど、忘れ去られてよいものでもない。認知能力と非認知能力は、双方を切り離して相対するものではなくて、認知能力と非認知能力とは、一体的な関係を築いていく必要がある。そんなことを強く考えながら、各教育現場の先生方と一緒に実践をさせていただいているところです。
 特に真新しくも特別でもない非認知能力……それは人格を形成する上でも、自己実現する上でも、幸福を追求していくためにも必要不可欠な力であり、教育の本質から見てもなくてはならない力だととらえています。非認知能力がいまのような過剰な扱いから解放されて、認知能力と一体化した当たり前の力にしていけるように私にできることは何があるのでしょうか? そう考えてみると、あのストックホルム大学の老教授のことが思い出さ れたのです。当たり前のように「コインの裏表」だと言い放った彼……。たしかに、スウェーデンへ訪れた際に教育要領(わが国の学習指導要領のようなもの)について説明を受けたときも、認知能力と非認知能力とを一体化しているような文言が散見できたものです。
 スウェーデンの教育がヒントになる本が書けるかもしれない、私はそう思いました。しかし、本書をよくある「〇〇〇〇(国名)の教育はこんなにすごいんだぞ! だから日本もぜひ真似をしよう!」というものにしたくはありません。そもそも風土や文化、成り立ちが違うのに、あっちがよいからこっちでも……なんて簡単にいくはずがないからです。それだけでなく、日本という国の教育の中にも素晴らしいものはたくさんありますし、何よりも現在私たちが取り組んでいる実践については、これからのモデルケースの一つにしていきたいとさえ考えているのです。
 だから、本書は単なるスウェーデンの教育紹介本ではなく、私たちの実践やこれからの提案とスウェーデンの教育の実際とをセッションしていく構成にしたいです。そこから見えてくるものがお互いの違いであったり、私たちの実践への後押しや、参考にしたいアイデアだったりするのではないかと期待しています。そんな一冊がこれからスタートします。
 なお、今回は私一人の力では乗り越えられない壁がたくさんあり過ぎますので、次のお二人のお力をお借りしていきたいと思います。。まず、スウェーデンの学校教育や就学前教育に精通している田中麻衣さん。私にとって、とても心強いパートナーです。また、この日本で私と一緒に実践をしてくださっている教育現場のパートナーである、德留宏紀さんに、ご自身の実践をしっかりと紹介していただこうと思います。こうした頼もしいパートナーたちと共に、「非認知能力ブーム」のその先を少しでも切り拓いていきたいです。

2023年7月 中山芳一

著者情報

中山芳一(なかやまよしかず)
1976年岡山県生まれ。岡山大学教育推進機構准教授。
専門は教育方法学。All HEROs 合同会社代表。各世代の子どもたちのための非認知能力育成のために尽力している。さらに、全国各地の産学官民の諸機関と協働した教育プログラム開発にも多数関与。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありきの研究」をモットーとしている。
著書に『新しい時代の学童保育実践』かもがわ出版(2017年)、『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(2018年)、『家庭、学校、職場で生かせる ! 自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(2020年)ともに東京書籍、『「やってはいけない」子育て 非認知能力を育む6歳からの接し方』日本能率協会マネジメントセンター(2023年)、『教師のための「非認知能力」の育て方』明治図書(2023年)など多数。

著者情報

田中麻衣(たなかまい)
福岡県生まれ。スウェーデンの就学前学校Förskolan Galaxen 及びFörskolan The Cottage 校長。
高校、大学と2度のスウェーデン留学を経て2012年にストックホルムへ移住。スウェーデンで放課後支援サービスの再建をしたことをきっかけに学校運営に携わる。ストックホルム大学にて校長資格取得。小・中学校の教頭、校長、教育コンサルタント企業運営を経験し、現在は2校の就学前学校で校長を務める。子どもも大人も学び、成長し続けられる組織づくりをめざす。

著者情報

德留宏紀(とくどめ ひろき)
1990 年大阪府生まれ。Nordic Educations 代表。
2013~2022年まで泉佐野市立新池中学校教諭を務める。教科学習を通じて非認知能力& 認知能力の向上を実現し、教育論文「教科学習における自立・協働型学習による非認知能力の向上」では、2021年度東書教育賞にて入選。22年から岡山大学大学院に在学し教育心理学と教育統計学の両面から非認知能力の研究を行う傍ら、23年からはフィンランドのヘルシンキ国際高校(Helsingin kielilukio)に勤務。

コンテンツ

第Ⅰ章 認知能力と非認知能力は「コインの裏表」

第Ⅱ章 あらためて非認知能力について

第Ⅲ章 教育現場で非認知能力を伸ばす実践ステップ

第Ⅳ章 見取りのレンズと仕掛けのギミック

第Ⅴ章 ある公立中学校教員の挑戦

第Ⅵ章 学校改革で実現した大人と子どもの非認知能力向上

第Ⅶ章 スウェーデンの教育実践「3つのLrarn」とは

第Ⅷ章 スウェーデンのPBL計画書-子どもたちの興味に寄り添う

第Ⅸ章 スウェーデンの感情教育実践-子どもが自分の感情について学ぶ-

第Ⅹ章 教育現場における評価は何のために、誰のためにあるのか?