しょうがの料理
ISBN:978-4-487-81329-2
定価1,760円(本体1,600円+税10%)
発売年月日:2020年08月31日
ページ数:96
判型:B5変型判
しょうがの魅力
私の食事作りにしょうがは欠かせません。毎日のように登場します。豆腐にはおろししょうが、炒めものにはみじん切り、スープをとるなら薄切り、煮ものも薄切り、天盛りには針しょうが、ジンジャーシロップもおいしいし、と数え上げたらきりがないくらいです。
しょうが独特のさわやかな香りやピリッとした快い刺激は、なんでもない普段のおかずを引き立ててくれます。初夏に出回る葉しょうがはフレッシュでやわらかく、生で食べるにはうってつけ。子どもの頃から慣れ親しんだ、とろりとやわらかい酒粕にぶつぶつと旗のように刺した即席の粕漬けは、もう何十年も変わらぬ我が家の初夏の味です。新しょうが、ひねしょうがと季節とともに味も香りも厚みを増し、食卓にアクセントをつけてくれるしょうがは料理を楽しむ者にとってなくてはならないもの。体によい作用があるのもありがたい存在です。
しょうがも産地(土)によって変わります。今回取材をした高知では赤土で作るのが伝統だそうで、しょうがの色はやや赤みを帯びてヤワではないしっかりとした風味と口当たりが特徴です。ほかの土地のしょうがとは一線を画します。皮ごと使うことが多いので無農薬栽培であれば安心して食べられます。高知に住む若い人たちが大空の元で一生懸命まっとうなしょうが作りに励む姿は清々しく、感動を覚えました。
どこのスーパーでも国産のしょうがが手に入る日本では当たり前のように思うかもしれませんが、私がとりわけ日本のしょうがは素晴らしいと感じたことがあります。ヨーロッパでしょうがというと干からびたかたい薄茶色の石ころのようなもので、香りはなくてやたらに辛いというものしか入手できません。それでも頑張って「がり」好きな友人のために甘酢漬けの「がり」を作り、おすしを振る舞ったところ、しょうが、最高! と喜んでくれました。私としては満足のいくものではなかったのですが。そこで次は日本のしょうがで「がり」を作ってお土産にしました。素晴らしい! と手放しで喜んでくれたのは言うまでもありません。彼らには日本のしょうがは特別なおいしさがあるとすっかりインプットされたようです。
素晴らしいしょうががいつでもどこでも手に入れられるのは本当に幸せです。この本では我が家のしょうが使いをご紹介しましたが、皆さまのお宅にはそれぞれの素敵な使い方があると思います。
おいしくて体にもよいしょうがを上手に使って普段の家ごはんを楽しみましょう。
有元葉子