パスタの本
ISBN:978-4-487-81483-1
定価1,760円(本体1,600円+税10%)
発売年月日:2021年06月30日
ページ数:112
判型:A4判/並製
おうちで作るパスタが一番おいしいね。
ちょっとしたお昼ごはんや家族のために、簡単な1人ごはん用にも。
パスタはすっかり日常食になっています、という有元さんが「我が家のパスタ料理」を紹介。
我が家のパスタ料理
イタリア料理でプリモとして出されるパスタは今や世界中の人に愛され、イギリスでパスタはイギリス料理だと言っているのを聞いて、今やパスタはどこの国でも自国の料理になっているんだなあと実感しました。日本でも和風パスタが人気です。どこの国の食材でもおいしくできる、そんな懐の深さがパスタのよさだと思います。イタリアの人々がどこの国の人も温かく迎えてくれるのと通じるものがあります。私もしょっちゅうパスタを作っています。スタッフと食べるお昼ごはんやパスタ好きの家族のために、簡単な1人ごはん用にも。パスタはすっかり日常食になっています。
パスタをおいしくいただくための私なりのポイントがあります。野菜のソースは太めのパスタ、ソースにはほとんど塩気を使わず野菜の甘味を大切にし、パスタのゆで汁に塩を多めに使います。一方魚介のパスタは細め、魚介ソースには適度な塩気が必要なのでパスタのゆで汁の塩は少なめ、パスタはかためにゆでて魚介ソースの中でおいしい汁を吸わせながら煮てちょうど良いかたさに仕上げます。バランスとタイミングの勘所は作り慣れていくうちに習得できるようになるでしょう。
イタリア料理の食卓の我が家風の工夫、それは出す順序です。イタリア料理ではパスタはプリモで食事の最初の方に出てるものですが、我が家ではメイン料理のセコンドを先に出して、プリモのパスタはあとからにして無理なく食べられるように量を加減して、と順序を逆にしています。和食で言う締めのご飯のようにすると、日本人の胃にはちょうどいいようです。
パスタといえば忘れられない思い出があります。イタリア中部で大地震があったとき、私はちょうど現地の自宅に滞在していました。余震が何度となくあり、いつ自分の家が崩れるのかと心細い思いをしていたとき、お隣りさんから、こんなときに1人でごはんを食べちゃいけないよ、うちに来て一緒に食べよう、とありがたいお誘い。
こんな緊急時なのにフルコース。チーズをたっぷりとかけたトマトソースのパスタのあとにトマトで煮込んだ肉料理とサラダ、デザートはもちろん、ワインもちゃんとあります。こんなときですから紙皿と紙コップです。食事中に余震が起きると皆でお皿を持ったまま外に出ようかと中腰に。余震が収まると何事もなかったように食事に専念です。こんなときによくこんなご馳走ができるもんだなと思ってキッチンを覗くと、トマトソースの中に大きなかたまり肉が煮込まれ、今日使った鍋はこれだけよ、とお隣りのマンマは涼しい顔をしています。トマトソースで肉を煮込めば鍋1つでパスタもできるし肉料理もできる。なるほど!と合点しました。イタリア人の温かい思いやりの心に感謝して、どんなときにも食べることに気を抜かないという気構えをみました。思い出深いこの料理はこの本の中でもご紹介しています。
そしてパスタはおいしいばかりではありません。身体にもよいという嬉しい話があります。パスタが生活習慣病にいかに有効かを説いておられる横山淳一医師のお話(p.12〜13)もぜひお読み下さいね。
おうちで作るパスタが一番おいしいね、身体にもいいね、と言えるようにこの本が少しでもお役に立てばうれしいです。
有元葉子