
漂流者の生きかた
五木寛之・姜尚中/著
ISBN:978-4-487-81121-2
定価1,430円(本体1,300円+税10%)
発売年月日:2020年07月10日
ページ数:224頁
判型:46変形
解説:
見えない時代をどう生きるのか?
希望は必ずある!
「鬱の時代」「見えない戦争」「日本人の限界」
「ヘイトスピーチ」「格差社会の壁」「居場所を失った者」「震災と災害」
私たちの現実の切実な問いに
五木寛之と姜尚中が
初めて向き合い
ともに生き方を模索した
魂と魂の対話集。
衝撃の刊行!!
見えない時代をどう生きるのか?
希望は必ずある!
「鬱の時代」「見えない戦争」「日本人の限界」
「ヘイトスピーチ」「格差社会の壁」「居場所を失った者」「震災と災害」
私たちの現実の切実な問いに
五木寛之と姜尚中が
初めて向き合い
ともに生き方を模索した
魂と魂の対話集。
衝撃の刊行!!
「はじめに」より(姜尚中)
「吹っ切れとる」ひと
エンターテインメントとしての文学の「巨匠」にして、米寿を迎えようとしている現在でも第一線で活躍する五木さん。大家との対談である、緊張しないわけがない。それでも、五木さんと話をしたいと思ったのは、いつまでも枯れずに「青春」を生きているように見える五木さんの、私には異様なほどに旺盛なエネルギーがどこから生まれて来るのか、知りたかったからである。
それが、「引揚者」として生き残った者(サバイバー)の生命力に由来すると知り、意表を突かれた気がした。大切な人たちの犠牲の上に自分は生き延びた、いや、「悪人」だからこそ、生き延びたという思いが、今も五木さんの生命力の源泉になっていることを知り、私は今更ながら、五木さんの「吹っ切れとる」佇まいに脱帽せざるをえなかった。それは、私に欠けている人生の作法でもあったからだ。
その作法を自ら体現していたのは、私の場合で言えば、父であり母であった。彼らは、明らかに「デラシネ」であった。「デラシネ」が、悲哀に満ちた「根無し草」ではなく移植されることでより強くなった草を指すとすれば、彼らにはどこか五木さんと同じような「吹っ切れとる」胆力のようなものが備わっていたのである。五木さんに感じた懐かしさは、そうした父や母と共通する佇まいのせいに違いない。
学生の頃、私は自分たちのことを、日本にも、父母の国にも居場所のない「デラシネ」だと自嘲気味に語っていたものだ。しかし、今から思えば、それはセンチメンタルな「根無し草」の感覚を脱し切れていなかったことになる。そこには、「吹っ切れとる」したたかで柔軟な生きる作法が欠けていたのだ。
私にとって五木さんとの対談の最大の成果は、「吹っ切れとる」「デラシネ」で生きることが、「私たちはどう生きるか」の問いに答えるヒントになることを教えられたことである。
(中略)
五木さんとの対談を通じて、私はあらためて「不確実性の時代」を生きる作法について考えさせられた。読者は本書を通じて、これからますます不確実になっていく時代を生きる手応えのあるヒントを探し出して欲しい。
「あとがき」より(五木寛之)
静かに熱いひと
姜尚中さんとはじめて言葉をかわしたとき、なんと冷静な人だろうと思った。姜さんは私が生まれた福岡の隣の県である熊本で育っている。こちらは筑後であり、小栗峠という峠を越えたむこうは肥後だった。ともに九州の風土と縁があるにもかかわらず、姜さんはあくまで冷静で穏やかな印象だった。
私はひどく軽率な人間で、物事をあまり深く考えず、直感で動いてしまう典型的な九州人タイプなので、姜さんの冷静さが正直うらやましかった。知性とか教養とかいったものの差だろうかとも考えたが、そういうことでもなさそうに思われた。姜さんの静かさの奥には、なにか深い悲しみの気配が宿っていると感じられたのである。
(中略)
はからずも姜さんと語り合う機会を何度も持つうちに、私は自然と姜さんの「熱さ」に気づくことになった。
姜さんは抑制の人である。テレビの討論の場で姜さんが発言すると、なみいる論客たちも口をさしはさまずに耳を傾ける。その穏やかな口調の背後に深く広い世界の重みを嗅ぎとるからだろう。
私は若い頃からデラシネという言葉に執着してきた。一般に用いられるような「根なし草」といった意味でなく、国境をこえて生きる人々の謂である。現代ならさしずめ難民のことだ。それは私たちすべての現代人の運命である。姜さんの冷たく熱い言葉に、今を生きる人間に共通の感覚がある。
コンテンツ
第Ⅰ部 「鬱の時代」を生き抜く
悩むことの必要
躁の時代から鬱の時代へ
不安の時代における個人の発見
見えない戦争の時代を生きる
第Ⅱ部 無力=パワーレスパワー
東日本大震災の空気
浄土と希望
「二者択一」ではない世界
ビニール質の思想
第Ⅲ部 日本人であることの限界
日本人の御利益と階級社会
はみだしていった者たちの歴史
故郷を奪われた者として生きる
デラシネの末裔
第Ⅳ部 漂流者の生きかた
働く場所がふるさとだ
移動する者の減少
格差が生んだもの
漂流者の覚悟
第Ⅴ部 おれたちはどう生きるか
鵺として生きる
階級社会と格差
区別されることからのエネルギー
裁かない生きかた
悩むことの必要
躁の時代から鬱の時代へ
不安の時代における個人の発見
見えない戦争の時代を生きる
第Ⅱ部 無力=パワーレスパワー
東日本大震災の空気
浄土と希望
「二者択一」ではない世界
ビニール質の思想
第Ⅲ部 日本人であることの限界
日本人の御利益と階級社会
はみだしていった者たちの歴史
故郷を奪われた者として生きる
デラシネの末裔
第Ⅳ部 漂流者の生きかた
働く場所がふるさとだ
移動する者の減少
格差が生んだもの
漂流者の覚悟
第Ⅴ部 おれたちはどう生きるか
鵺として生きる
階級社会と格差
区別されることからのエネルギー
裁かない生きかた