
般若心経手帳
ISBN:978-4-487-80444-3
定価1,540円(本体1,400円+税10%)
発売年月日:2010年08月07日
ページ数:144頁
判型:新書
「人生という旅」をテーマに,日本人に最も愛される経典「般若心経」を,中村元の現代語訳や玄奘三蔵をめぐる平山郁夫の壮大な仏教画をともにたどる,初めての手帳形式の書籍。
まえがき
日本において、最も多くの書物が著されている仏教聖典は、おそらく『般若心経』でしょう。しかも教説の解説だけにとどまらず、写真やCDを伴うものなど、もはや形態の面においてはおよそ考えられるものは出尽くしたのでは、と思われるほどです。
その中で、あえて本書が編まれたのには、理由があります。それは、「般若心経を常にそばにおいて人生という旅のともに」をコンセプトに、ポケットに入れていつでも手にできるよう手帳形式としたい、ということでした。
また本書には以下の特徴があります。第一点は、日本画の最高峰・平山郁夫画伯の画を用いること。二点目は、『般若心経』のサンスクリット現代語訳は、学的に最も権威のある中村元訳に拠ること。そして最後は、随意な解釈ではなく、経説を正しく理解できるよう、解りやすい解説を一句一句のすべてに施すこと、です。
十五年間おそばにお仕えし、中村元先生の謦咳(けいがい)に触れさせていただく機縁に恵まれ、学的業績はもとより、その偉大さを支えていた先生の生き方を最期まで目の当たりにしてきた者としては、先生の和訳が「人生という旅のとも」となるべき本書に入ることは、あまりにも当然のことでした。
また、平山画伯はシルクロードの各地を訪ねられ、『般若心経』を『大般若経』とともにインドから長安に持ち帰った玄奘三蔵を描いた「仏教伝来」で画壇に登場されて以来、仏伝とシルクロードを主題にした多くの作品を残されました。画伯のご生涯は、釈尊と玄奘三蔵
に導かれての「絵道」とも言うべきもので、その作品は、私たちを魅了してやみません。
仏教は、現に生きている人を導き救うために、悟りという、ほんとうの現実を確かに見ぬいた事実のある覚者(ブッダ) によって説かれた教えです。それは決して寺院にだけあるものではなく、日々の生活に生き生きと生きているべきもののはずです。その教えが伝わる
よう、解説に当たっては、できるだけ凡夫の私情を交えず、筋道がしっかり追え、教説がおのずと心に入ってくるよう努めました。しかもできるだけ短いすっきりした言葉で。
一流の和訳とすばらしい画を目にされながら、本書が少しでも役立ち人生の糧となることができたならば、編著者として、これほどありがたいことはありません。
堀内伸二