図鑑 古代ギリシア
ISBN:978-4-487-81898-3
定価7,370円(本体6,700円+税10%)
発売年月日:2026年08月27日
ページ数:400
判型:A4変形
多様で豊かな古代ギリシア世界の興亡の歴史を読み解く1冊。
ミノア・ミケーネ文明の黎明期から、民主政の萌芽、アテネとスパルタが迎えた黄金期、マケドニアの台頭、そしてアレクサンドロス大王の急逝――。古代ギリシアの壮大な歴史をたどりながら、哲学、科学、芸術、建築、神話などについて、豊富なビジュアルで多面的に解説。最新のCGI技術でよみがえる、遺跡や当時の生活風景も必見である。
序文─日本語版監修者より
このたびDK社のThe Definitive Visual Historyシリーズから、『図鑑 古代ギリシア』邦訳版を日本の読者にお届けできることは、日本語版監修者にとって大きな喜びです。
古代ギリシア文明は、西欧近代文明の源流とよく言われます。しかし、古代ギリシア人が残した文化遺産は、欧米の人びとのみならず、全世界の人びとをひとしく魅了する普遍的な力を秘めています。ギリシア神話に登場する神々は、神様であるにもかかわらず、なぜあのように人間くさいのでしょう。
ギリシア悲劇はなぜ私たちの魂を揺さぶり、喜劇はなぜ心の底から私たちの笑いを誘うのでしょう。ギリシア人はなぜ2500年も昔に、民主政治を実現できたのでしょう。本書はこうしたさまざまな疑問に、美しいビジュアル資料をふんだんに用いながら、しかも学問的な正確さをもって、答えてくれます。
古代ギリシア史のビジュアル版概説書は、邦訳に限っても、とくにめずらしいものではありません。しかし本書は、時代の流れを縦糸として叙述するだけでなく、文学・芸術・建築・思想・科学などのテーマや、人びとの出生から死までのライフサイクル、そして文字・言語・奴隷といった具体的なトピックを、横糸としてきわめて豊富に織り込んでいることが大きな特色です。「パルテノン神殿」「アクロポリス」といったテーマの見開きページには、時系列の本筋を忘れて、思わず読みふけってしまう魅力があります。読者は必ずしも本書の冒頭からページをめくる必要はなく、目にとまるテーマをあちこち拾いながら読み進めてもいいでしょう。むしろその方が楽しいかもしれません。
さらに目新しい特徴は、本書が旧来の概説書よりも、はるかに長い時代を扱っていることです。アレクサンドロス大王の東征と死をもってギリシア史の終焉と見なす19世紀以来の歴史観は、すでに過去のものとなりました。ヘレニズム時代やローマ時代になっても、ギリシア人は自分たちが共同生活を営む都市を、依然として「ポリス」と呼んでいたのです。ポリスの生命力は、かつて考えられていたよりも、強靱で永続的でした。時代を「区分する」よりも、「つなげる」ことの方に、現在の学者たちは関心を向けるようになっています。本書が、ミケーネ文明からビザンツ帝国の滅亡までを、ひとつながりの「長いギリシア史」として描いていることは、今日の歴史学の到達点を反映していると言えるでしょう。
はるか時空を隔てた現代の日本に暮らす私たちにさえ、古代ギリシア文明は光を放ってやみません。本書が読者をその魅力ある世界にいざなってくれるよう、心から願っています。
日本語版監修者
橋場 弦
(はしば・ゆづる 東京大学名誉教授)
コンテンツ
はじめに
1.幕開け 先史時代~前900年
ギリシア最古の文明/先史時代のギリシア/キクラデス文明/ファイストスの円盤/ミノア文明期のクレタ島/クノッソス宮殿/ミノア美術/ミケーネ人の台頭/ミノアの海上交易者/ヴァフィオの金杯/神々の夜明け/オリュンポスの神々/ギリシアの英雄たち/トロイア戦争/
ミケーネ文明の終焉/レフカンディ
2.都市国家の台頭 前900~前600年
「暗黒時代」からの脱却/鉄器時代のギリシア/農業/言語と文字/イリアスとオデュッセイア/ポリス/アルゴス/幾何学様式の墓標/ギリシアの戦争/神話の生き物/ギリシアの統治/リュクルゴス/ギリシアの植民活動/健康と余暇/イオニア同盟/古代ミレトス/ギリシアの聖域/オリンピアの聖域/ゼウス神殿
3.後期アルカイック期 前600~前500年
文化の目覚め/哲学者/抒情詩/サッフォー/聖域の復元/スパルタの勃興/スパルタの社会/若者の記念碑/初期のアテネ/サモスのピタゴラス/民主革命/アテネ民主政/アテネのアゴラ/ギリシアの陶器/大ギリシア?/飛び込む男の墓/シラクサの勃興/旅行と移動手段/海戦/奴隷制/芸術家と職人
4.古典期のアテネとスパルタ 前500~前400年
対立の世紀/イオニア反乱/ダレイオスの侵略/歴史書と歴史家/ヘロドトス/クセルクセスの侵略/神託を仰ぐ/宗教的な祭儀/アテネ帝国/ギリシアの家/女性の生活/愛、性、結婚/リアーチェのブロンズ像/ペリクレス/ペリクレス時代のアテネ/アクロポリス/パルテノン神殿/古代ギリシアの劇場/戯曲と劇作家/第二次ペロポネソス戦争/ソクラテス/アテネの恐怖政治
5.不和と秩序 前400~前323年
新たな勢力の台頭/スパルタの覇権/刻まれた記録/アテネの外国人/ネアイラ/子ども時代/優位に立つテーバイ/死をめぐる流儀/ハリカルナッソスのマウソロス霊廟/死後の世界/ギリシアの医術/硬貨/ギリシアの経済/デルヴェニのクラテル/食べて飲んで/マケドニアの台頭/マケドニアの戦闘/アレクサンドロスの征服/自然科学
6.ヘレニズム時代のギリシア 前323~前31年
アレクサンドロスの後継者/プトレマイオス朝エジプト/プトレマイオス朝の勅令/アレクサンドリア/ファロスの大灯台/セレウコス朝の帝国/アンティゴノス朝/障がいと差異/牧歌/エペイロスの王ピュロス/同盟の時代/呪術と魔術/ペルガモンとポントス/ヘレニズム美術/休憩する拳闘士/ギリシアの数学/アルキメデス/テクノロジー/音楽/脅かされるギリシア/宝飾品/ローマによる征服/ミトリダテス6世
7.文化の存続 前31年~
ギリシアの再生/ローマ統治下で/世界を地図に/キリスト教の広がり/ビザンツ帝国の時代/ヒュパティア/後期ビザンツ帝国/オシオス・ルカス修道院のモザイク/ギリシアの遺産
8.要覧
都市国家/思想家と著作家/神と女神/神話/遺跡
用語集/索引