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ICT サポート情報 情報モラル 大人と子どもの「知らないこと」 2.子どもたちが知らないこと
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2.子どもたちが知らないこと
(1)出したら消えない

まず,中学校でのトラブルの中心になっているLINEというアプリについて,注意点を述べておく。ここでは詳しい説明はしないが,参加メンバー相互で言葉のやり取りをみんなで見ながらできる機能がある。これは,ネット上の他のサービスと違って,書いた文章の取り消しができない。LINEはメンバー全員に公開されたメールと同じなのである(メーリングリストを視覚化したものと言えばわかるだろうか)。メールで送った文章や写真は,誰かに間違って送ったとしても取り消すことはできない。必ず相手の目には触れてしまう。これと同じだ。1つ1つの発言をなかったことにはできないのである。
 LINE以外でも投稿した文章や写真が消えないことがある。削除機能が付いていて見た目は削除することができるが,実は内部には残っていて,技術に詳しい人ならば取り出せるのである。何千人を超える利用者が消した内容をいちいち本当に削除していては,システムに負荷がかかる。6か月や1年などの間隔で行われる定期メンテナンスで,はじめてキレイに消されることが多い。画面上から削除していれば「友人にのみ公開」などのセキュリティも無効である。ちょっとしたプログラムを数日動かせば,秘密の写真も取り放題だ。
 また,自分が困ったと思う書き込みや写真ほど注目度が高いので,見ず知らずの他人がすかさずコピーして保存してしまう。自分が完全に消したと思っても,幽霊のようにいつまでもデータが残るのである。

・データはあなたのスマホ内ではなくネット上にある
・一度書き込んだ文字やアップした写真は完全に消すことが難しい
・ネットのデータはコピーされてすぐ広まる

(2)出したら変えられる

自分が何の気なしに書き込んだ発言は,短いがために誤解を生みやすい。ネットの書き込みは,伝言ゲームのように勝手に解釈が付け加えられて意味がねじ曲げられることがよくある。本人の意図とは関係なく「そうであった」と断定され,悪者のように祭り上げられる(この状態を「祭り」とか「炎上」と呼ぶ)。心正しき友達が反論を書き込んでも相手にされない。真実などどうでもよく,ただ騒ぎを楽しみたい人たちによって収拾が付かなくなる。自分で書き込んだ発言は自分ですら訂正できない。それがネットの書き込みである。

・一度書き込んだ文字は誤解されても訂正を行き渡らせることが難しい
・わざと誤解して面白くして広めてしまう人たちがいる

(3)場所が丸わかり

子どもたちは自分の日常を写真に撮ってネットに投稿する。まず気をつけることは「写り込み」である。何気なく撮った写真でも,背景などに特徴的な建物や物体が写り込めば,場所が特定できてしまう。ネットの暇な住人たちは,写り込んだ物体の角度や大きさなどから撮影場所を割り出し,かなりの精度で学校や自宅を特定してくる。
 カメラ機能を使うときには頻繁に何らかのメッセージが表示されるが,よく読まないでOKや同意などを押してしまうと,GPS機能がオンになってしまうことがある。そうすると,撮影した写真データの中にGPS情報が組み込まれてしまうのだ。この情報をジオタグと言うが,ジオタグはパソコンのソフトやスマートフォンのアプリを使えば,地図を表示して場所を特定することができる。
 また,自分のサイトでは地名のほんの一部しか書き込んでいなくても,リンクされている友人のサイトをいくつか巡ってキーワードを拾い集めれば,住んでいる地域や学校を特定してしまうことも難しくない。個人が特定されてしまえば,個人情報をまき散らしているのと同じである。

・写り込みやジオタグに注意
・リンクをたどれば個人を特定される危険がある

(4)広範囲に拡散

子どもの世界は狭い。自分と親しい友達しか自分の書き込みや写真を見ていないと思っている。LINEの書き込みもグループ外には流出しないと信じている。人が作った技術は人によって破ることができる。100%のセキュリティなど未来永劫に存在しない。1人が数多くのグループにまたがって登録されていれば,中に書かれた内容の流出はたやすい。本文を書き写さなくても,スクリーンショットといって画面を写真のように保存してしまう機能もある。これが出回ればアウトだ。また,バイトテロと呼ばれる,アルバイト先で不衛生なことや違法なことを写真に撮影してネットに出す子どもが後を絶たない。友達だけに見せるつもりが広範囲に拡散してしまうことを微塵も考えていないから起こる事件である(主にtwitterに投稿されるので,バカッターなどと呼ばれる)。
 「ここだけの話だけどさ・・・」は,ネットでは成立しない。

・自分が考えている以上の広範囲の人が書き込みや写真を見ている

(5)誰も想定していない即時返信

メールでもLINEでも,昔から「何秒ルール」という言葉が知られる。例えば書き込みがあってから30秒以内に返信しないと,友達でなくなってしまうという強迫観念である。ネットのサービスを作った業者や個人は,そのような時間制限にしばられないツールとして使うことを想定していた。しかし現実は逆で,24時間片時も端末を手放せない状態を作り出してしまった。しかも,上記のように空気を読みつつ,何か書き込みがあったら即時に返事をしなければならない。この状態に慣れると,自分が書き込んだときに誰からも返事がないと,とても不安な気持ちに陥る。テレビ依存やゲーム依存と同じようにネット依存という言葉がある。テレビ依存やゲーム依存はいわゆるコンテンツ依存であるが,ネット依存は違う。「つながり」を絶たれるのが怖くて恐怖から使い続ける「つながり依存」である。本当はもうやめたくても,やめることができない。誰もそのような使い方を望んでいるわけではないのに,誰もがしばられているのである。

・即時返信はネットの基本ではない

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