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ICT サポート情報 情報モラル教育の必要性と全校体制での取り組みのすすめ
サポート情報
1.教育の情報化を推進していくための情報モラル教育

「教育の情報化に関する手引き」(文部科学省)のP117には,「『情報モラル』とは,「情報社会で適正に活動するための基となる考え方や態度」のこと」と書かれている。また,「第4章で述べた情報教育の目標の3観点との関係でいえば,情報モラルは,『情報社会に参画する態度』の重要な柱であり,情報モラル教育は,情報教育の一部として,『情報活用の実践力』や『情報の科学的な理解』との連携を図り,それら全体のバランスの中で指導する必要がある。」とも書かれている。

この定義を採用すれば,単なる問題を起こさないための指導では不十分であり,情報を有効に活用できるように育てることも必要である。情報教育の重要性を理解し,教育の情報化を進展させていくためにも,情報モラル教育の推進は重要である。また,タブレットPCの導入が進むと,これまでは,学校の外の問題として扱ってきたことが学校の中の問題になる可能性がある。一人ひとりの子どもが情報機器を正しく利用できるように指導することは,一人一台のタブレットPC環境によって教育を行うための準備としても重要である。

2.三層構造情報モラル教育アプローチのすすめ

近年,無料通話アプリやSNS等を子どもが使ったことで問題が多数発生しており,学校がその対応に追われていると聞く。問題を発生させない状況を作ることと,情報機器を有効に活用できるように教育することを同時に行う必要がある。

しかし,インターネット上には次から次へと新しいサービスが出てくるため,学校は常に新しい問題に対応しなければならない状況がある。それへの対応策として,札幌市立平岡中学校( http://www.hiraoka-j.sapporo-c.ed.jp/ 以下,平岡中学校と表記する)の三層構造情報モラル教育アプローチが有効であると考えている。私は2006年から平岡中学校に関わり,全校体制で情報モラル教育を行う状況を作るまでの過程を見てきた。平岡中学校の資料は東京書籍「情報モラルとコンピュータ」に収録されているので,ぜひ参考にしていただき,全校体制で情報モラル教育を実践していただきたい。そうすることで,事後対応に追われて教材研究のための時間やプライベートな時間など貴重な時間を奪われる状況を改善できると期待できる。実際に,他校から平岡中学校に転勤してきた先生にお話を伺うと,事後対応に追われていた前任校との違いを実感していることがわかる。

全校体制で情報モラル教育を行うための手順を説明する。東京書籍「情報モラルとコンピュータ」には,教員研修用教材として,私が担当する研修講座で話している内容を映像化したものが収録されている。外部講師を招くことが難しい学校でも校内研修ができるような構成にしているので,まずは,それを校内で視聴していただいた後,年間指導計画を策定するワークショップを行い,各学年で指導すべき事項について話し合っていただくと良いであろう。下の写真は,私が担当する教員免許更新講習で受講者に作成していただいた指導計画案である。これを校内研修会で作成することで,全校体制で情報モラル教育を行うために必要な指導計画を作ることができる。その際に,児童生徒のアンケート調査の結果や近隣の中学校で発生している問題,新聞やテレビ,インターネット上のニュース等で報道されている問題を参考にし,先手を打った指導によって,問題を発生させないように指導する年間計画を立てると効果的な指導が期待できる。

また,情報モラル教育を「予防教育」と問題発生後の「事後指導・再発防止教育」だけでなく,予兆を発見した際の「未然防止教育」の三段階で考えて,指導体制を作ることを推奨する。なぜなら,問題は小さなうちに対応した方が,解決させやすいからである。問題の兆候をつかんだ段階で指導することで,問題を未然に防ぐことができる。

3.おわりに

情報モラル教育を全校体制で行うことを目指した行動を起こしていただきたい。知識がないことを不安に思う先生もいらっしゃると思うが,「情報モラルとコンピュータ」のメニューページの「学校向けテキスト」やアニメーションの画面の「まとめ」のボタンをクリックして,授業のポイントをつかんでいただくと短時間に授業のポイントを把握できる。ぜひ,「情報モラルとコンピュータ」を活用してすべての先生が情報モラル教育を実践していただくことを望む。

長谷川 元洋 (はせがわ もとひろ)

1965年生まれ。金城学院大学助教授などを経て,現職。博士(教育学)。著書に「子どもたちのインターネット事件 親子で学ぶ情報モラル」(東京書籍),「どう対処する!校長・教頭のための個人情報保護対策」(教育開発研究所)など。

※平成27年3月掲載
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです

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