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ICT サポート情報 情報モラル 大人と子どもの「知らないこと」 1.大人が知らないこと
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1.大人が知らないこと
(1)つながるのはケータイ・スマホだけではない

小学校の先生や保護者がよく言うのは「小学生の低学年はまだ持っていないから」。この場合の持っていないとは,携帯電話やスマートフォンのようなものを言っている。この言葉のあとには「(まだ持っていないから)指導の必要はない」と続く。本当にそうだろうか?
 民間の調査会社や,私が市区町村の教委と一緒に採ったアンケート結果を見ると,小学校では携帯電話やスマートフォン以外でのネット接続が圧倒的に多い。先生も保護者もゲーム機や音楽プレーヤーからの接続を見逃しているのである。ゲーム機も音楽プレーヤーも,Wi-Fi環境(無線LAN)があれば,インターネットに接続することができる。iPod TouchはiPhoneそのものと同じアプリが使えるし,Walkmanなども上位機であればAndroidと同じアプリが使える。NintendoDSもPSPもWebからの利用は,フィルタリングがかからず,やり放題である。家にW-Fi環境がなくても,近所の公園や道ばたで付近の家から漏れてくる電波で接続できることを,子どもたちはよく知っている。友達から友達へ,先輩から後輩へ,大人の知らないうちに伝授されていく。
 ゲーム機のゲームもネットを前提としているものもあり,それが元でトラブルに巻き込まれることが多い。「ともだちコレクション」という名前の平和そうなゲームでも,仲間はずれなどのイジメが発生している。そもそもネット接続ができる機器を持っている友達の家へ遊びに行けば,使い放題である。持っていなければ安全などとは言えない。いまや何からだってネットに接続し,トラブルに巻き込まれるのである。

・ゲーム機や音楽プレーヤーもネット接続できる
・無線LANが使える場所は子どもたちがよく知っている

(2)子どもの価値観と大人の価値観

子どもたちにとって最も大切なことは,身の回りの人たちとうまくやることである。子どもたちは「友達」と呼んでいるが,大人から見れば果たして友達と呼んでよいものか迷う人たちもいる。ただ,そんな大人の目線はどうでもよい。子どもたちは友達の価値観がすべてなのである。
 自分の好きなことや,やりたいこと。ちょこっと言葉の端で投げかけてみて,同意が得られるか確認してみる。同意が得られそうなら「だよね!」「ですよね」と言って乗っかる。ダメそうなら,そのまま流して封印する。みんなとうまくやること,空気を常に読み切ることが重要なのだ。「正しい」ことも重要ではない。
 掲示板で書き込みマナーを違反している人に対して注意を書き込めば,「そんなことぐらい指摘しなくったって」「○○くん厳しすぎ」と逆に意見されてしまう。「だって,うざい書き込みをするから・・・」と反論しても,「そういうおまえが,うざい!」とバッサリ。正論を述べた子がグループから出ていくはめになる。
 コミュニケーションするために掲示板を使っていたんじゃなかったの? 空気や流れに沿わない人をどんどん切って行ってしまうグループで生き残るためには,友達の価値観を探り合っていくしかない。グループの中で可能な限り価値観を一致させること(しているように見せること)が,ネットを生きる基本スキルになっている。なんかおかしい(これは大人の価値観)。言葉の行き違いによるトラブルは小学校・中学校が最も多い。

・考えが違っていても同じ価値観を持っているフリをして空気を読む
・短い言葉のコミュニケーションで誤解が生まれトラブルにつながる

(3)子どもたちと知識の勝負をしても無駄

子どもたちは無尽蔵の好奇心と,広大な時間を持っている(・・・いや,本当は時間は同じはずだが,睡眠を犠牲にできる強みがある)。大人がにわか勉強でネットに関する利用知識を蓄えても,勝負にならない。勝てない勝負はしないほうがよい。
 数多くのサービス名やアプリ名を知っていることが重要なわけではない。膨大な知識や豊富な経験など無くても「先生」であれば教えられる。世界中を旅したことが無ければ社会科の先生になれないのであろうか。宇宙に行ったことが無ければ理科の先生にはなれないのであろうか。
 実際に触れたことが無いものでも,その存在や有効利用や問題点をわかりやすく伝えることができるのが先生である。物事の根本を理解し,現象の原因を理解し,ポイントさえ把握すれば,教育や指導は行える。「私は喧嘩をしたことが無いので生徒指導ができません」と言ったら笑われるだろう。大切なのは,やる気があるか無いかだけ。逃げる理由を探しているだけである。
 知識はあるにこしたことはないが,情報モラル指導の根幹とは何の関係もない。

・以下のようなことはまったく必要ない
× 生徒に負けない技術・知識をつけること
× ネット上のサービス名やアプリ名を正確に知ること
× 危険な行為をすべて知ること
× 問題行動を禁止すること
・先生方にとって必要なこと
○ 知らないサービスや言葉は子どもたちに教えてもらえばよい
○ 知っていることもワザと知らないふりして聞けばオマケ情報も手に入る
○ 子どもたちがしている行動を日常モラルに照らし合わせて考える
○ 問題行動の事例だけを示して何が問題かを考えさせる
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