文法、どこにありますか?
ISBN:978-4-487-81849-5
定価2,530円(本体2,300円+税10%)
発売年月日:2026年07月31日
ページ数:208
判型:A5
日本語検定の公式キャラクター「にほごん」は、日本語が大好き。何気ない言語表現に不思議を見つけては、日本語学者の高田先生に尋ねます。
「ねえねえ、高田先生。『布団に寝る』と『布団で寝る』は何が違うの?」
「にほごん、おもしろいことを考えているね!」
本書では、高田先生がにほごんの疑問に寄り添いながら、文法の世界へといざないます。「こういう言い方はするけど、こういう言い方はしないな」などと、感覚を頼りにして楽しめるのがこの書籍の大きな魅力。無意識に従っている規則に気づいたときの快感を、ぜひ味わってください!
各トピックには、にほごんの毎日を描いた漫画や、言葉について考えるネタを集めた「考えてみよう」も収録。読み進めるうちに身の回りの言葉が何だか気になってくる、言葉へのアンテナがぴんと立つ一冊です。
【「ゆる言語学ラジオ」水野太貴さん推薦!】
“文法さえ詳しくなれば、日常はこんなに面白くなる。なんてコスパのいい趣味なんだ!!”
「はじめにー文法探しに出かけよう!ー」より
文法はお好きですか? そう聞かれて「はい」と答える人は稀なはず。苦手だという人が大半でしょうね。僕の愛すべき友人(?)にほごんもその一人。好奇心旺盛で、日本語について考えることが大好きなにほごんですが、「文法は苦手なんだ」と口にしてはばかりません。
にもかかわらず、にほごんが毎日Twitter(X)でつぶやいている日本語ネタは、文法に関する興味深い疑問の宝庫。例えば、こんな具合です。
次の①②には、それぞれ「サンマ」と「にほごん」のどちらが入ると思う?
①「〇〇が海を泳いでいる」
②「〇〇が海で泳いでいる」
どっちでもいいのかなぁ?
いかがでしょう? ①には「サンマ」、②には「にほごん」が入りやすそうですね。これは、「海」という場所を表す言葉に付いた「を」と「で」の違いによると考えられます。どんな違いなのかは後のお楽しみとして、たった一字違うだけで、文の性質ががらりと変わるのは不思議ではないですか? 注意していなければ、さらっと流してしまうと思いますが、目の付け所が鋭いですよね。
「おもしろいことを考えているね!」にほこんのつぶやきを見ていたら、声をかけたくなってしまいました。そこから始まった僕らの日本語談義。ヒントを出してあげると、一生懸命考えを巡らせるにほごん。その姿が微笑ましく、いつしかにほごんと話すのを楽しみにしている自分がいました。やり取りを重ねるうちに、思いがけない展開が。それを見た方から好意的な感想をいただくことが増え、中には、この対話をまとめて本にしてほしいという声も。「いつか実現できたらいいですね。」何の気なしにそう返していたのですが、ある日、東京書籍さんから連絡をいただきました。「文法をテーマに、先生とにほごんの対話本を作りたい。」まったく「瓢箪から駒」とはこのことです。
「ぜひ!」二つ返事でお引き受けしたのは、一味違ったおもしろい文法本ができそうな予感があったからです。一方的に説明するのではなく、聞き役にあれこれ考えてもらいながら、答えに少しずつ迫っていくことで、文法が苦手な人でも分かりやすく、楽しめるものになるのではないか。本書で扱うトピックは、どれもにほごんが日々の生活の中で感じた疑問。にほごんの「なぜ?」の力を侮るなかれ。驚くほど沢山の疑問を挙げてくれました。そこから厳選した30のトピックについて、二人で話します。時に見当違いの方向へ行きつつも、一歩一歩答えに近づいていくにほごん。皆さんもぜひ一緒に考えてみてください!
それにしても、なぜ文法はこれほどまでに苦手意識を持たれ、忌み嫌われてさえいるのでしょう。一つの大きな理由として、文法というものに対する誤解があると思います。皆さんは、このように考えていませんか? 教科書や語学書に書かれた小難しい規則が文法。言葉を適切に使うためには、それを覚えなければならない、と。そうではありません。先ほど挙げたにほごんの疑問ですが、「〇〇が海{を/で}泳いでいる」という文で「を」と「で」にどんな違いがあるか、これを説明するのは難しい。ですが、「を」の場合に「サンマ」、「で」の場合に「にほごん」が入りやすいことは分かりますね。これは、皆さんが日本語の文法を既に知っているからです。その規則がどういったものかと聞かれても、すぐには答えられないけれど、普段言葉を使う際に無意識のうちに従っている。たとえるなら、真っ暗な迷宮をどう進めばよいかは分からないのに、アリアドネの糸を手繰って出口まで辿り着けるようなものです。
他の言語はさておき、母語について言えば、文法は覚えるべきものではありません。文法を理解するために必要なのは、無意識を意識化すること。本書では、にほごんと対話しながら、我々の使っている言葉の背後にどのような規則が潜んでいるのかを考えていきます。それはさながら迷宮の探索と地図作り。難しそう? 心配は要りません。日本語母語話者の皆さんは暗闇を照らす松明――「内省」の力――を持っている。ある表現、文について、日本語として適格かどうかを判断することが可能です。色々な例を挙げて、「これは適格、これは不適格」「この状況では自然だけど、この状況では不自然」などと検討していきましょう。例を注意深く観察することで、文法規則を明らかにできます。あ、非母語話者の方も大丈夫。日本語については、にほごんに任せて、ご自身の母語と比べてみてください。
文法は覚えるものではなく、見つけるもの。文法が食わず嫌いになっている方に、そう考えを切り替えていただく。そして、文法が意外と“おいしい”ものだと知っていただく。これが本書の目的です。内省の灯りを頼りに無意識の迷宮を探索し、文法規則を見つけることには、パズルや謎解きのようなおもしろさがあります。準備はよろしいですか? 答えはあなたの中にある。さあ、出発しましょう!
コンテンツ
1.助詞がないと気になっちゃう
「にほごんが2人いる」の「2人」の後には、何が省略されているの?
2.悩ましき深き「に」と「で」
「布団に寝る」と「布団で寝る」は何が違うの?
3.「に」の意味は場所のみにあらず
「お散歩に行く」の「お散歩」ってどこのこと?
4.「明日にやります」がダメなワケ
「土曜日にやります」とは言えるのに、「明日にやります」とは言えないのはなぜ? 「明日に“でも”やります」とは言えるのに……。
5.「は」と「が」の違いを追う
「猿がトイレにいる」と「猿はトイレにいる」は何が違うの?
6.イラっとさせる「は」
「このみたらしだんごはおいしいね」がイラっとさせるのはなぜ?
7.「を」が重複できない不思議
「壁を飾る」「ポスターを飾る」はそれぞれ成り立つのに、「壁をポスターを飾る」に違和感を覚えるのはなぜ?
2日目 言葉の分類、いろいろ
1.心ひかれるキャッチコピー
「まじめなアイドル、まじめにアイドル」にひきつけられるのはなぜ?
2.副詞化する「すごい」
「すごい楽しい」がダメなのはなぜ?
3.「開く」の違いは読み方だけか
「ドアがひらく」は「ドアをひらく」と言えるのに、「ドアがあく」は「ドアをあく」とは言えない。何が違うの?
4.空腹にするのかさせるのか
「あんみつがにほごんを空腹に( )」の空欄に入るのは、「させる」? それとも「する」?
5.「食べたくある」にならないワケ
「食べたくない」はあるのに「食べたくある」がないのはなぜ?
6.オノマトペと助詞の深い関係
「どろどろと溶ける」「どろどろに溶ける」は何が違うの?
7.「おいしいでした」にならないワケ
「です」の過去形は「でした」なのに、「おいしいです」の過去形が「おいしいでした」じゃないのはなぜ?
3日目 言葉にあらわれるものの見方と考え方
1.「た」で変わる印象
「おはようございました」はなぜ皮肉っぽく聞こえるの?
2.未来のことになぜ「来た時」
「今度来た時に食べようよ」と「今度来る時に食べようよ」は何が違うの?
3.文脈の中の「それ」と「これ」
①「にほごんには好きな遊びがある。( )はかくれんぼである。」、②「にほごんにはしっぽがある。( )は気持ちが高ぶった時に言葉をつづるためのものである。」、前者には「それ」が、後者には「これ」が入りやすいのはなぜ?
4.「こ・そ・あ」の使い分け
「これ」「それ」「その」「あれ」はどうやって使い分けるの?
5.「~ている」の謎
もう剥がれ終わったのに、「ポスターが剥がれている」と言うのはなぜ?
6.助数詞が映し出すもの
「一足」ってまぎらわしくない?
4日目 言葉と言葉の関係
1.複合動詞は語順が大事
「揺り起こす」「飛び起きる」とは言えるのに、「起こし揺らす」「起き飛ぶ」とは言えないのはなぜ?
2.「イカ焼き」と「たこ焼き」
「イカ焼き」はイカを焼いた食べ物なのに、「たこ焼き」はタコを焼いた食べ物じゃない。何が違うの?
3.「という」がおもしろいという話
「演者がドタキャンするという事態に陥った」「演者が欠席するという連絡があった」、前者は「という」を省略できて後者はできないのはなぜ?
4.格とあいまい文
「ネズミはにほごんが苦手」、誤解を生むのはなぜ?
5.語順とあいまい文
「いちゃもんは楽しそうに話すにほごんを見ている」は、誰が楽しそうなの?
5日目 語の形の変わり方
1.活用しないのに活用語尾とは……
活用語尾から送るなら、「食べる」は「食る」じゃないの? 「べ」は活用してないよ?
2.形容詞みたくなる動詞
「違くない」って、何が違うの?
3.「ら抜き言葉」の正体は……
「切る」と「着る」はどちらも kiru なのに、どうして「切れる」はよくて「着れる」はダメなの?
4.「そうだ」もいろいろあるそうだ
「いなくなりそうだ」と「いなくなるそうだ」は何が違うの?
5.「さ」の振る舞いが分からなすぎる
「切ない」が過ぎたら「切なすぎる」でしょ?