
段取り八分
ISBN:978-4-487-81820-4
定価2,420円(本体2,200円+税10%)
発売年月日:2025年06月02日
ページ数:144
判型:B5変型
段取り力があれば、無駄なく過不足なくおいしく「段取り八分、仕事二分」という言葉がありますが、料理も、準備や段取りをしっかりしておけば、スムーズにおいしく仕上がり、料理を楽しめるようになります。
有元さんがごく自然に行っている、合理性に裏打ちされた工夫と、心躍る愉しさを。
――料理の段取りには心躍る愉しさがあります
元祖キャベツメンチから、ベトナム風揚げ春巻き、厚揚げで作る白あえ、五目中華スープ、トマトソースのショートパスタ、特製ハンバーガー、ちらしずし、お雑煮、朝ごはんやお弁当まで。
料理の段取りには 心躍る愉しさがあります
毎日のごはん作りをしながら思うことは、料理は段取りが何より大事、ということです。焼いたり煮たりのいかにも料理をしている体の作業ばかりでなく、はじめからお仕舞いまでの段取り全体がうまくいくことが大事ということです。材料集めから最終段階の盛りつけまで、そしてその結果おいしいと感じて心も愉しくなること、はたまた片づけまで含めてすべてが料理の段取りなのだと思います。
段取りには順を追ってさまざまな仕事がありますが、この本では段取りの中でも一 番要となる下ごしらえと準備に特化しました。 下ごしらえという段取りは人目につかず派手ではない作業です。そこにおもしろみを感じるかどうかが料理好きになるかどうかの分かれ目。焼いたり煮たりのいかにも料理らしい料理の動作や作業がうまくいくかどうかも、段取りにかかっているといっても間違いはないでしょう。
一例として超簡単な肉とキャベツの炒めものを作るとすると、どんなにいい肉やいい調味料を使ったとしても、キャベツが瑞々しくパリッとしていなければおいしく仕上がりません。このときのキャベツは畑からとってきたばかりのようにパリッ、シャキッとさせておく必要があります。キャベツの細胞にしっかり水分が含まれていれば熱した中華鍋の中で一瞬で火が通るので、おいしい炒めものができます。たかがキャベツの炒めものと軽んじるのは考え違いです。高価な食材かどうかではなく、ていねいに心を込めて扱ったかどうか、きちんと拵えたかどうかで、天と地ほどの差のある料理となります。そうしたところに下ごしらえの醍醐味があり、おもしろみがあると思います。
肉や魚の下ごしらえは目的に沿った形に切りそろえたり、下味をつけたりすることが主ですが、塩をすることで余分な水分を出したりじんわりと塩気をつけたりします。中でも貝類は砂の中にいて汚れを吸着しやすい海岸近くでとれるので、適切な下処理が必要です。砂抜き済みとなっているあさりも買ってきたらもう一度砂抜きと汚れ取りをした方が断然おいしくなります。また、酢じめやみそ漬けなども、適当な手当を施された段取りがあってこそのおいしさ。
この本では、さまざまな食材の下ごしらえをていねいにきちんとしてセットしておくことをお勧めしています。準備した食材をセットすることも、おいしい料理を仕上げるための大切な段取りの一つ。こうすることで一目瞭然で料理を把握できるし、頭の中も整理しやすいのです。
段取りがちゃんとできていれば八割がた終わったようなもの。あとは食べるタイミングを見計らって仕上げればいいだけ。きちんと美しく準備されたセットを見るだけで目も喜び、心躍る愉しさがあり、自ずと仕上げもうまくいきます。
有元葉子