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ICT サポート情報 授業におけるICTの活用をめぐる2つの動き
サポート情報


1.授業におけるICTの活用


学校の授業において,ICT(情報通信技術)が学習活動で活用されている現在の動向を見ると,その主目的と関わって,大きくは2つの動きがあると考えられる(図1参照)。1つは「学力向上や学力保障と関わる活用」であり,もう1つは「汎用的能力(コンピテンシー)の育成などと関わる活用」である。




2.学力向上や学力保障と関わるICTの活用とその評価


学力向上や学力保障と関わるICTは,実際にICTが教科の授業の目的の達成に効果的に機能することを意図して用いられている。そして,授業研究などを通じて取り組みの評価がなされている。例えば,ICTによる課題の提示や説明が子どもの課題把握に効果的に機能していたか(主体的に学習に取り組む態度への影響),既習事項を用いて課題解決に臨む際,その思考を支援するために用いたICTが機能していたか(課題解決を図る思考力・判断力・表現力への影響),新規に学ぶ事項の把握やその定着,習熟のために用いたICTが機能していたか(知識・技能への影響)などが評価されている。あるいは,図2のような「習得」「表現・コミュニケーション」「活用」「探究」などを志向する学習場面で,ICTを活用し,その学習活動に寄与できたか,その学習活動をより効果的にしていくためにどのような工夫が必要か,それらが評価されている。

子どもたちの学びの姿の観察結果やノートの記録,タブレット上の履歴,練習問題の正誤記録などを根拠にして,その成果を判断し,個々の児童や場面に即して,用いる方法の検討が改善に向けて論議されている。そこで用いたデジタル教材は有効であったのか,そこで選択した教具や学習具は有効であったのか(書画カメラ,タブレット)などが評価されている。






3.汎用的な能力(コンピテンシー)等と関わるICTの活用とその評価


一方,情報活用能力の育成とも密接に関わると考えられる汎用的な能力(コンピテンシー)等の育成を意識した取り組みがある。

平成26年6月に第2回調査OECD国際教員指導環境調査(TALIS: Teaching and Learning International Survey)の結果が公表された。その中(日本を含む34ヵ国の中)で,日本の「教員は,生徒の主体的な学びを重要と考えている一方,主体的な学びを引き出すことに対しての自信が低く,ICTの活用を含め多様な指導実践の実施割合は低い」ことが明らかになったことは記憶に新しい。

また,平成27年3月に出された情報活用能力調査の結果でも,様々な学習の基盤となる多様な情報源から情報の読み取りや分類整理等に関わって,課題が指摘されている。

このように,付けたい力と関わった教員によるICTの活用というよりも,子どもたち自身に,その身に付けたい力と関わるICTの活用の原体験の機会の保証が問われてきている。もちろん,その環境が整っていないなどの問題もあるかもしれないが,その取り組みへの着目や実践が始まってきている。

例えば,チームで課題解決に挑む協働(コラボレーション)の力や現実的な問題解決に挑む力などについて,ICTを活用して挑み,その力を付けていこうとする取り組みがある。その場合,目指す学習者の姿を想定し,段階的に記したルーブリック等を作成し,実践している姿が見受けられる。

また,パフォーマンス課題を設定し,そこでの子どもの姿を見て,ルーブリックの修正を行いながら実践を進めている取り組みもある。

さらに,図3のように,むしろ,学習内容や場面によって,取り上げる活動は異なることを意識し,学習活動について中長期的見通しを持って設計するためのヒントとなる学習活動の設計ルーブリックを作成し,実践を組み立て,育てたい汎用的な能力等を螺旋的に培う実践自体を支援し,その取り組み全体を評価していこうとする動きも見られる。この場合,汎用的な力は課題解決の状況の中で文脈に応じて選択,発揮されるときにコンピテンシーとして意味を持つため,そのような大きな枠組みの評価手法がとられている。








4.授業におけるICTの活用で見失ってはならないこと


現行の学習指導要領では,(1)基礎的知識・技能の習得 (2)これらを活用して課題解決を図る思考力,判断力,表現力その他の能力 (3)主体的に学習に取り組む態度 といった,いわゆる学力の3要素を柱としている。そのため,教育の情報化の柱の1つである「教科指導におけるICTの活用」の在り方を考えていく場合,ICTの活用が目的というよりも,子どもに育てたい力等を意識して,また,それと連動する評価の枠組みを意識していくことを見失ってはならない。



参考文献

 21 世紀型の学習活動をデザインする

 http://www.microsoft.com/ja-jp/education/21cld.aspx



小柳 和喜雄 (おやなぎ わきお)

1965年生まれ。広島大学助手,常磐大学専任講師,奈良教育大学助教授を経て,現職。教育学博士。専門は教育方法,教育工学。文部科学省の情報活用能力調査に関する協力者会議委員や先導的な教育体制構築事業推進協議会新たな学び推進ワーキンググループ委員も務める。

※平成27年11月掲載
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです

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