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■疑問を多数 ピックアップ・整理
テレビやラジオ、インターネットや新聞・雑誌等、様々な情報はどのように私たちの元に届くのか。児童は学習者用デジタル教科書やNHKforSchool等を使って「疑問」を多数ピックアップ。それらを整理して自分の学習課題を1つに絞っていった。学習者用デジタル教科書を参照する児童が多く動画教材を参照している児童もいる。
疑問を持った箇所は教科書の一部や動画教材の一部を画面キャプチャし、GoogleJamboard上に貼り付け、付せんで疑問を書き込みながら整理。シンキングツールを使う児童や矢印を書き込んでいる児童もいる。キーボード入力や画面キャプチャの手際も速い。
ある程度まとめた後はグループで話し合う。「離れている場所の情報をどのように届けるのか」「情報が届くのにどれくらいの時間がかかるのか」「報道被害とは何か」等々、疑問も様々であった。
中休みには、仲間数名で制作している独自の情報サイトを更新している児童もいて、主体性を発揮する機会を楽しんでいることがわかる。
児童は疑問を持った箇所を画面キャプチャして疑問の内容を付せんで整理。まとめ方は様々だ
■主体性発揮の土台はツール活用のスキル
教員主体のICT活用から児童生徒主体のICT活用へ。言葉では簡単だがその移行は簡単ではない。長谷川教諭はどのように児童生徒主体の活用にシフトしていったのか。
「1人ひとり端末を利用してまとめ、それを使って話し合うためには、ツール活用のスキルが一定レベル以上である必要があった。キーボード入力スキルは最初の一歩で、これについては初年度、空き時間などを使い全校でタイピングツール等を使うことで解決した」
紙のノートにまとめる方が好きという児童も、タイピングスキルが身に付くと、端末を使ったまとめを好むようになったという。
授業では、情報収集の方法や、考えを整理する際に使うシンキングツール等の活用、まとめる際の画面キャプチャ等ツール活用を授業の中で1つずつ試していった。
ツール活用が身に付くと、児童の取組も積極的になっていく。そこで次に目指したのが、児童の選択の機会を増やすこと。
すると自分の力を発揮することに夢中になり、次第に主体的になっていった。
情報収集の方法が身に付いてからは、家庭で情報収集を行い、授業では、整理・分析を児童主体で行うことに時間をかけるようにした。
すると教員に聞くのではなく自分で調べることが当然になり「友達がまとめたものを見ることができて楽しい」という児童が増え、自分のまとめに意見がほしいと積極性が増していった。探究課題の取り組み方について、教員に改善案を求める児童も増え、向上心の高まりも感じられるようになった。
「クラウドを常時活用することで、お互いの学習状況が可視化され、協働編集や対話が当たり前になっていく。学習を児童に委ねるほど児童はデジタルツールや学習者用デジタル教科書を当たり前に活用し、主体的な活動が拡がっていく」と話した。
■授業中の指示や説明を精選
菅原弘一校長
初年度は「とにかく使ってみよう」から始め、今年度は情報活用能力を育む授業づくりをテーマに授業公開と研究会を行っている。外部講師から、端末は使っているものの教員のコントロールによる活用であると指摘を受け、端末は児童が主体的に学ぶための道具であり、そこが目指すところであることを共通理解したことが最初の一歩になった。
今年度始めの授業研究では、指導助言者の堀田龍也教授(東北大学大学院)から「教員が話しすぎており児童の思考を邪魔している」という指摘があった。長谷川教諭は「授業中の指示や説明を精選する」ことを目標に授業づくりを行い、ほぼ半年間で児童主体の授業になった。1人ひとりの端末活用スキルも明らかに向上した。今後は内容理解にシフトし、深めていく段階であると考えている。
学習者用デジタル教科書については当初、指導者用デジタル教科書と使い勝手が異なることに教員は戸惑っていた。しかし、児童は学習者用デジタル教科書の必要な場面にアクセスして活用している。それぞれの目的が異なることに気付いた教員から、活用が始まった。紙の教科書の場合は「習っていない部分を先に見てはいけない」という雰囲気もあったが、学習者用デジタル教科書では全単元を見て知りたいことを見つけ、そこに時間をかけて調べていこうという授業になった。
スキルが高まり、学習の目的が明確になってくると、端末を使う学習が楽しくなってくる。しかしそこまで達していないと、問題が起こる。クラスの実態から、休み時間の活用や端末持ち帰りについて制限を設けた時期もあった。その際は後戻りはせず立ち止まって児童と一緒に考えていくしかない。
市の広報誌には、変わりつつある学びの姿として本校の授業の様子が取り上げられており、保護者理解につながった。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです