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ICT サポート情報 定期テストを廃止して授業改善・業務改善へ
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長年の“当たり前”見直し自立のための根っこづくり
 沼津市立大平中学校(佐藤正和校長・静岡県)は2019年度、それまで行っていた中間・期末定期テストを廃止して、授業での見取り(授業内の表れや活動内容)と単元テストで評価を行っている。佐藤校長は「定期テストをなくしたことでこれまでの『当たり前』を見直すきっかけになった。教員の意識が変わり、授業改善が進んでいる」と話す。定期テストをなくした理由とその効果について、佐藤校長と、研修主任の西井なおみ教諭に聞いた。

新たな挑戦

佐藤校長は、定期テストの在り方に疑問を持っていたという。「思考力・表現力等は見えにくい。定期テストだけでは、身につけたい力は見取れないのではないか。定期テストは授業の上澄みだけで勝負できる。上澄みの下にある子供たちの学びの過程をきちんと見取りたい」と感じていた。さらに、2021年度から始まる新学習指導要領に対応した「学びの実感を積み重ねることができる」授業づくりの必要性を強く感じた。

そこで大平中学校長として着任2年目の2019年度、定期テストを廃止した。それに伴い、授業中の生徒の表れを丁寧に見取ることを重視し、単元ごとにテストやレポートなども参考にして、子供の力を確かめていくこととした。

しかし、単元テストの作成が増え、教員の負担感が大きくなるという問題もある。そこで、単元テストを作成できる仕組みを検討。その過程で出会ったのが問題データベース(東京書籍)だ。

問題データベースは、問題を選択して出力するだけで単元テストを作成でき、たしかめプリント、フォローアッププリント、チャレンジプリントなど、習熟度に合わせた問題があり、実力テストも作成できる。英語ではリスニングの問題も作成が可能だ。この仕組みを活用することで、教員の負担は最低限で新しい取組を導入できると考え、定期テストを廃止し、国語・数学・理科・社会・英語の問題データベースを活用した単元テストを開始した。

問題データベースプリント教材

問題データベースプリント教材

深い学びに向けた授業づくりへ

研修主任 西井なおみ 教諭

研修主任 西井なおみ 教諭

定期テストの廃止など新たな挑戦についての教員の反応はどうだったのか。

西井教諭は、「校内には新しい取組を前向きに考える雰囲気が生まれており、タイミングが良かった。すぐにやってみよう、メリットやデメリットはやりながら考えていけばよい、と意見が合致した」と話す。

導入・活用による効果について佐藤校長は「授業やレポートなどで子供の表れを見取るようになり、1時間の授業や単元ごとにつけたい力を明確にして授業する意識が高まった。さらに、つけたい力がしっかりとつく授業にするためには、『どのように学ぶか』がカギになる。たとえ未知の状況・場面であっても、子供が持つ知識や技能を駆使して、課題の解決ができるように支援していく。1人では解決できない、実行できないことでも、協働することで解決できる、実行できるような環境を作っていく。そのような授業がいくつも見られるようになり、授業改善が着実に進んでいった」と語る。

単元テストも従来の形と変えていく試みも見られた。

数学では、教科書、ノート持参の単元テストも行なった。また、単元テストの再テストを自由参加で実施。予想以上に参加する子供が多かったという。

全員が同じ宿題をする必要があるのか、ノート点検をする必要は本当にあるのか、教員に見せるためにやるのではなく、自分のためになる宿題とはどのようなものかなど、これまでの「当たり前」を疑問視して重要性を改めて考えるようになった。

西井教諭は「問題データベースはとても役に立っている。さらにもっとうまく活用できるように考えていきたい」と話す。

 苦手な部分や伸ばしたい部分を問題データベースから生徒自らが選択して学習をするセルフマネジメント力をさらに伸ばしていきたいと考えている。

「授業が勝負」で思いをひとつに

新しい取組に対する説明は、生徒と保護者に、年度当初に実施。

文部科学省の新学習指導要領に関するパンフレットも利用しながら「なぜ学ぶのか」を説明。ビブリオバトルで生徒が紹介した「教室はまちがうところだ」(蒔田晋治著)も朗読した。

保護者からは共感している様子を感じた。PTA副会長は会の終わりの言葉で「世の中の流れにマッチした良い取組なので協力していきましょう」と話したという。

セルフマネジメントできる子供に

授業のための道具を学校に置いておき、必要なものだけ自宅に持ち帰る仕組みも導入。

「今日はこれとこれを自宅で勉強するから持って帰る」と生徒が判断して持ち帰るため、忘れ物も課題のし忘れも激減した。

掃除についても、「1学期間責任をもってきれいにする」場所を自分で選んで掃除する「掃除オークション」制度を導入。「課される掃除」から、「自ら考える掃除」になったという。自分の担当場所に常に注意を払うようになり、「気づく力」がさらに育まれていると感じている。

今年度は外部テストの採点・分析を外部に委託しており、自作テストは年間2回のみで、問題データベースを活用して作成。業務削減にもつながった。今後は2回の自作テストもなくし、単元テストと標準学力テストのみを実施していく考えだ。

沼津市内の学校からは「定期テストをやめた理由、その効果」などについて問い合わせがあるという。今後、市内で同様の動きが出てきそうだ。

次年度は、今年の実践をベースにさらに新しいことを取り入れてレベルアップしていくという。

佐藤校長は「『自立のための根っこづくり』を学校教育目標に掲げ、『授業が勝負』を合言葉に、教員や子供たちと思いを共有できたことが成功の一番大きなポイントであった。問題データベースとの出会いのタイミングも良かった。世の中はどんどん変わっていく。学校も変わっていく必要がある」と語った。

【掲載 2020/02/03付 教育家庭新聞】
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです

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