■映像で「マッスルスーツ」の機能がよく分かる
説明文は,ロボット研究者の小林宏さんによる「『着るロボット』を作る」。重い荷物を楽に持ち上げて運べる「マッスルスーツ」の仕組みなどを解説した内容。人工筋肉の機能やこのスーツの活用場面が書かれている。体が不自由な人の歩行を助ける「アクティブ歩行器」の機能や特性についても示す。
この時間は,説明文の読みを深めながら,「筆者が研究している『着るロボット』がどのようなものか,文章にまとめる」を課題にした。
デジタル教科書が生きる授業を模索し続ける
授業の前半には,課題に向けて「人工筋肉の力で重い物を持ち上げる」「着る人の体に合わせて自由に動ける」など,前時に読み取ったマッスルスーツの機能や特性の確認を行った。その後,デジタル教科書に収められている動画を視聴した。
動画は,マッスルスーツが重い物を楽々と持ち上げる仕組みとして,ゴムチューブに空気を送り込んで動かす人工筋肉の様子を分かりやすく描写。着用した人が,重そうな荷物やお年寄りを軽々と持ち上げる様子などが映し出された。
そんな動画を見つめながら児童は「教科書に書かれていた『重い物が軽くなる』という文章の様子がよく分かった」などとつぶやいた。また説明文から読み取った「人工筋肉は,モーターを使っていないので,水に濡れても大丈夫」「介護の補助として利用」などの意味を,具体的につかんだ。
■入力,消去を繰り返しても教科書が汚れない
後半は,教材文の「アクティブ歩行器」の説明箇所に着目させた。この歩行器は,足が不自由だったり脳に障害を抱えていたりする人の歩行サポートや回復を促す機能を備えている。長嶋教諭はこれを解説している箇所に線を引かせ,そこから分かる内容をまとめて箇条書きにする課題を出した。
児童は,マッスルスーツに関する文章の読み取りを思い起こしながら,各自のパソコン画面に映し出された教材文をじっくり読み進めていった。該当箇所へのライン引きはマウスで画面入力。デジタル教科書によって,跡を残さず気軽にラインの入力と消去が繰り返せる。
そんな使い勝手の良さを生かし,児童は何度も文章を吟味しながらチェックと読みを深めた。
箇条書きにする場面では,要点を絞り込む作業に多くの児童が苦しんだ。そんな様子に,机間指導する長嶋教諭は「関連した文に,線がきちんと引けているよ」「この部分を短く言うなら,どの言葉を使ったらいいかな」などと適宜サポートの言葉を送る。
児童らは,教員からの励ましを受け,苦労しながらも文章をまとめていった。
箇条書きは,紙のワークシートに記述させるようにした。この段階は手書きにこだわった。該当箇所から,必要な内容を適切に抜き出し,端的で分かりやすい文章にまとめる力を磨くためだ。学習場面や目的に応じて,デジタル教材と紙教材の適切な使い分けを大事にした。
児童は「下半身のまひでベッドから動けなかった人が,この歩行器を使って訓練をすることで,歩けるようになった」という部分から,「病気などでうまく歩けない人が歩行器を使って歩けるようになる」などと要約。それぞれの箇条書きを発表し合い,ブラッシュアップを図っていった。
■挑戦重ねてより良い活用策を探る
南里洋子 校長
同教諭は,「説明文の読み取りに困難を感じる児童が多いので,文章の理解をサポートするために,デジタル教科書の動画再生やラインを気軽に書き込める機能を生かした展開を試みた」と振り返る。
またデジタル教科書の中学年以上の国語の効果的な実践例が少ないようなので挑戦したとし,今後も,試行錯誤をしながら,デジタル教科書の可能性を追究していきたいと話す。
現在,国語のデジタル教科書は,低学年の漢字の書き順確認や昔話の方言を音声再生で聴く利用などで使用しており,効果を実感している。算数では,図形の学習などでシミュレーションを交えながら多くの作業量を確保できる利点があり,ほぼ毎時間使っているなどの意義をあげた。
同校では,現在,タブレット端末を40台整備。授業では実質1人1台の利用を可能にしている。
ICTやデジタル教科書を使った授業について南里校長は,「児童の学びの集中力が高まり,協働学習場面で効果が高い」と述べる。校内のICT活用を促進するため,教員が気軽に授業を視察し合えるような研修を工夫しているとする。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです