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サンドイッチ・バー

サンドイッチ・バー

坂田阿希子/著

ISBN:978-4-487-81816-7
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
発売年月日:2025年02月17日
ページ数:128
判型:B5変型

解説:
お酒に合わせて、サンドイッチだからこそできる「仕掛け」がある。
それを考えるのがたまらなく好きだ。

サンドイッチを作るとき、わたしはいつも気持ちのいい緊張感に包まれる。 食べたときの食感や味の構造、アクセントになるような風味や香り。そしてなんといってもストンと切り分けたときの切り口の凛とした佇まいを考える。とにかく丹精込めて作るのだ。
サンドイッチこそ、緻密な構造で作るべき料理ではないかと考えている。だからこそ、とっておきのお酒に合わせて、ゆったりとした大切な夜の時間に合わせて作ってみてはどうだろうか。一日の疲れを癒すような時間に、小さく切り分けたサンドイッチをつまむ。そんな時間にぴったり合うようなサンドイッチの本をいつか作りたいとずっと思っていた。
――はじめに より

Introduction

 もしも私が小さなバーを開くとしたら、料理はすべてサンドイッチにしたい。
 パンは、シンプルな白い食パンかライ麦入りの食パン。時にはカンパーニュやハード系のパンで、ひとつひとつのお酒に合わせたメニューを考える。またはサンドイッチに合わせてお酒を選んでもらう。
 パンはトーストするのかしないのか、パンの耳は落とすのか落とさないのか、バターには何を混ぜるのか、具材は何を組み合わせて、アクセントには何をもってくる? 考えるとキリがない。
 薄い食パンで緻密に組み合わせたサンドイッチをキリッと小さく切り揃えて、一口頬張ってお酒を流し込む。鼻から抜ける香りはどうだろう。口の中の味わいはどうなるだろう。そんなことを考えてサンドイッチを作るのが大好きだ。
 たとえばハムサンド。もしもウイスキーに合わせるとしたら、パンはライ麦にしてトーストしよう。ハムはスモークの効いた少々厚めのものにしてフライパンでしっかりと両面を焼く。辛子の効いたバターもいいし、粒マスタードもいいかもしれない。隠し味にウスターソースとウイスキーを少々加えたマヨネーズを薄くぬって、ああ、これはハムカツにしてもいいな。もしも白ワインに合わせるならば、ディジョンマスタードを混ぜたバターにして、トーストしない白い食パンにする。ハムときゅうりのピクルスを合わせて、ピクルスは少々甘めのものがいい。耳を落として小さく切り分ける。
 お酒の種類も小宇宙のように限りないけれど、サンドイッチも考えれば考えるほどに広がる宇宙。その組み合わせは果てしない。そのマリアージュを考えることはとても楽しいことだ。
 撮影中のある日、カウンター席にみんなが座ってこれとあれを組み合わせて、なんてリクエストをもらってサンドイッチを作った。まるでお寿司屋さんの細巻きを作るように、きゅうりの糠漬けとハム、小鯛の笹漬けとすぐき漬け、キャロットラペやコンビーフとキャベツ。切り分けてホイッとカウンターから出すと、それをみんながすぐに頬張る。
 好みのお酒を飲んで「わあわあ」と喜んでいる。一口で味わえるサンドイッチは、まさに最高に楽しいお酒の「アテ」と言えるのではないだろうか。
 あまり難しく考えることはないけれど、サンドイッチだからこそできる「仕掛け」というものがある。Sandwich Barの魅力はそこにある。
 サンドイッチを作るとき、私はいつも気持ちのいい緊張感に包まれる。
 食べたときの食感や味の構造、アクセントになるような風味や香り。そしてなんといってもストンと切り分けたときの切り口の凛とした佇まいを考える。とにかく丹精込めて作るのだ。
 パパッと朝食やランチに、気軽に作るサンドイッチというのもいいが、私はサンドイッチこそ、緊張感を高めて緻密な構造で作るべき料理ではないかと考えている。
 だからこそ、とっておきのお酒に合わせて、ゆったりとした大切な夜の時間に合わせて作ってみてはどうだろうか。一日の疲れを癒すような時間に、小さく切り分けたサンドイッチをつまむ。そんな時間にぴったり合うようなサンドイッチの本をいつか作りたいとずっと思っていた。
 合わせるお酒はもちろんお好みで楽しんでもらえばいいのだが、なんとなくの私なりのルールを紹介しよう。
 たとえば魚介類を使ったものなら、キリッとした辛口の白ワインがとても合うし、それをフライにしてマヨネーズやウスターソースが加われば、モルトの香りが効いたウイスキーを合わせるのもよし。フィッシュアンドチップスがあるくらいだもの、ギネスビールももちろん合いそう。
 シュニッツェルのような薄いカツレツには、お国柄に合うモーゼルワイン。サワークリームとサーモンやタラモときたら、じゃがいものサンドイッチときたら、やっぱり清涼な生産地のワインが合うように思うし、ウオッカもよさそうだ。
 料理とお酒を楽しむときのように、肉のパテやステーキサンドなら、ちょっと重めの赤ワインが飲みたくなるし、フルーツサンドならシャンパーニュを合わせたい。チーズのサンドイッチには、そのチーズの生産地のワインならたぶんピタリとくるように思う。
 頭を悩ませる必要はない。その日に飲みたいお酒を選んで、それに合わせてサンドイッチを考えるだけ。
 ただ、少しの緊張感をもって、キリッとした佇まいのサンドイッチを作ろう。それだけでサンドイッチの完成度はまったく違ってくる。
 端正に作られたサンドイッチの味わいについては、もちろん言うまでもない。

著者情報

坂田阿希子(サカタアキコ)
料理家。フランス菓子店やフランス料理店での経験を重ね、独立。「studio SPOON」主宰。国内外を問わず、常に新しいおいしさを模索。プロの手法を取り入れた家庭料理の数々は、どれも本格的な味わい。
著書に『坂田阿希子の肉料理』(文化出版局)、『サンドイッチ教本』『スープ教本』『サラダ教本』『洋食教本』『おやつ教本』『オードブル教本』(すべて東京書籍)など多数。