雑草先生の短歌教室_オンデマンド版
ISBN:978-4-487-81780-1
定価1,760円(本体1,600円+税10%)
発売年月日:2024年08月22日
ページ数:162
判型:四六判
おじさんだって 自由になれる 短歌という羽根をもて。
短歌という道具(ツール)で、こんな自由が体現できるなんて! 雑草学者で、自然科学エッセイ、そして短歌の名手でもあった著者が、身のまわりの自然や生き物、日々のよしなしごとを短歌に詠みつつ語る、抱腹絶倒、悲喜交交の日常。「短歌+エッセイ+自然科学」が融合した、新感覚のハイブリッド読書体験がここに。
『雑草先生の短歌教室』紹介動画
はじめに
この本には「短歌教室」というタイトルをつけられてしまったが、短歌を教える本ではない。
私は短歌の先生ではないし、他人に教えられるほど、歌がうまいわけでもない。
短歌というのは、奥が深い。簡単に極められるものではないのだ。
しかし、短歌の門戸は広く開かれていて、ハードルがとても低い。何しろ五七五七七になっていれば、それだけで、もうそれは短歌なのだ。しかも、何ともうれしいことに、短歌を一つでも作れば、それだけで「歌人」を名乗ってもいいらしい。
そんな誘いを真に受けて、私は10年ほど前に短歌を始めた。私はそんな歌人である
そしてこの本は、そのしがない歌人のつぶやきを綴っただけの本なのだ。
(こんな本、本当に売れるのだろうか?)
じつは、私は雑草の研究をする植物学者で、これまで、植物や生物に関する本を150冊ほど上梓してきた。しかしだからといって短歌の本など書いても誰かが読むとは思えない。もしかすると1冊も売れないかもしれない。本書にご尽力いただいた担当編集の方には、あらかじめ謝っておくことにしよう。
しかし……、しかし、である。
もし、あなたが、この「はじめに」を読んでくれているとしたら、この本は誰にも読まれなかったわけではない。バンザーイ! もしかすると、あなたはこの世界でたった一人のこの本の読者かもしれない。そんなあなたに心から感謝である。
短歌はいいものである。とにかく時間をつぶすにはちょうどいい。
人を待っている間、電車やバスを待っている間。スマホをいじるかわりに身の回りを観察してみる。そして、歌を詠んでみるのだ。
つまらない会議のときなどは最高によい。どんなに身体は拘束されていても、脳の中は自由なのだ。
短歌を作ろうと題材を探していると、見慣れた風景の中にさまざまな発見がある。ありふれた日常も少しだけ刺激的なものになる。
不思議と感動することが増える。記憶したい気持ちや思い出は、歌にして心に刻み込む。イヤなことも、つらいことも、すべておいしい歌の題材だ。
短歌はいいものだ。
もし、この本を読んで、もし、この程度ならやってみたいと誰かが思ってくれたとしたら……もしかすると、この本は「短歌教室」と呼んでもよいものなのかもしれない。
2024年 初夏
稲垣栄洋