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内面性の心理学

内面性の心理学
梶田叡一自己意識論集Ⅴ

梶田叡一/著

ISBN:978-4-487-81400-8
定価3,300円(本体3,000円+税10%)
発売年月日:2021年03月24日
ページ数:284頁
判型:四六判

解説:
日本の教育学の泰斗として知られる著者が、学生時代から一貫して取り組んできた「自己意識論」を集大成としてまとめた論集の最終第5巻。
 人は他人との比較において、ともすると誰もが同じ共通の世界で同じように生きている、と考えてしまう。しかし、一人ひとりの見ているもの、一人ひとりにとっての「現実」は、全く異なったものである。自分にとっての「当たり前」が他人にとっては「当たり前」でなかったり、自分にとっての「現実」が他人にとっては「現実」でなかったり、ということは日常茶飯事であり、当然至極のことである。
 一人ひとりが一人きりで生まれ、毎日の生活を通じて自分だけの体験を積み重ねていき、その人に特有の感性やこだわりを形作っていく。類似した「現実」を持っているように見える場合であっても、その内実は一人ひとりで全く異なってくる。こうした個々人の持つ「現実」の根本的相違を重いものとして受け止めるかどうかが、真の人間理解を進めていくうえでのポイントである。
 第5巻では、一人ひとりが個別に持つ内面世界について考察し、共同幻想にふりまわされることなく、人間理解を深め、いかに自分の「現実」を生きるかを説く。
 また、『徒然草』や千利休、聖徳太子、親鸞ら先人の教えをひもときながら、内面世界を豊かに育て整えるためのヒントを呈示する。

【発刊の辞】

自己意識の問題は、アイデンティティ、自己概念、自己イメージ、自尊感情、等々の形で論じられ、現代の心理学・社会学・教育学等において、最も重要な課題の一つとされてきました。個々人の言動の土台になるだけでなく、生き方の問題、さらには社会や文化の組織と機能にまでかかわってくるのが、自己意識の問題だからです。「人間の人間たるゆえんを解明するポイントは自己意識にあり」ということになるのではないでしょうか。従来はアメリカやヨーロッパでの研究が多かったのですが、現在においては日本の若手・中堅の研究者の間でも、非常にポピュラーな研究課題の一つとなっています。
私自身は、一九六〇年の京都大学文学部入学以来、今日まで一貫してこの領域の問題に取り組んできており、一九七一年に京都大学から授与された文学博士号も「自己意識の社会心理学的研究」というものでした。私の研究はその後、教育に関する諸問題などにも拡がっていますが、その際の大事な理論的枠組みにも自己意識の問題が大きくかかわっています。私の周辺の現役研究者にも、私の積み重ねてきた自己意識にかかわる仕事を一つの踏み台としてくれている人が少なくありません。
この論集は、私自身のこれまでの自己意識論に関する5冊の単行本を柱としながら、最近の論文等でこれを補い、新しいまとまった形で世に問おうというものです。
梶田叡一

著者情報

梶田叡一(かじたえいいち)
1941年(昭和16年) 4月 3日、松江市生れ。隣の米子市で幼稚園・小学校・中学校・高等学校を卒え、京都大学文学部哲学科(心理学専攻)卒業。文学博士[1971年]。
国立教育研究所主任研究官、日本女子大学文学部助教授、大阪大学人間科学部教授、京都大学高等教育教授システム開発センター長、京都ノートルダム女子大学長、兵庫教育大学長、環太平洋大学長、奈良学園大学長を歴任。
現在は桃山学院教育大学長。併任として、[学]聖ウルスラ学院(仙台)理事長、日本語検定委員会理事長。
これまでに、教育改革国民会議(総理大臣の私的諮問機関)委員[2000年]、第4期・第5期中央教育審議会[2007~2011年]副会長(教育制度分科会長・初等中等教育分科会長・教育課程部会長・教員養成部会長)、教職大学院協会初代会長[2008~2010年]等を歴任。
また、大阪府私学審議会会長、大阪府箕面市教育委員長・総合計画審議会会長、鳥取県県政顧問、島根大学経営協議会委員・学長選考会議議長、[学]松徳学院(松江)理事長等も歴任。
主な著作に、『生き生きした学校教育を創る』『教育評価』有斐閣、『真の個性教育とは』国土社、『教育における評価の理論(全3巻)』『<いのち>の教育のために』金子書房、『教師力の再興』文溪堂、『和魂ルネッサンス』あすとろ出版、『不干斎ハビアンの思想』創元社、等がある。

コンテンツ

第Ⅴ巻 目次
プロローグ それぞれの〈私〉にとっての「現実」……5

Ⅰ−内面世界とは何か
第1章 内面世界― 自己意識と有機体自己と社会的自己と……22
第2章 多様な自己提示と自己アイデンティティ― 社会的期待といかに対峙するか……37
第3章 心の構造をめぐって― 意識の世界から本源的自己まで……52

Ⅱ−内奥の本源的自己という基盤
第4章 意識下の「本源的自己」との連携強化―「深い生き方」のために……68
第5章 主体的であることの内面的基礎……81

Ⅲ−現代社会を生きるために
第6章 プロテウス的人間―「変身」の日常性について……90
第7章 生きる原理としての自己認識・自己概念……99

Ⅳ−自己実現と志と
第8章 「心」の望ましいあり方の実現のために……114
第9章 自己実現への渇きと促しを……127
第10章 自己提示の病理と志ないし宣言としてのアイデンティティの可能性……141

Ⅴ−内面性を重視した心理学のために
第11章 内面世界の心理学―「心」を研究するということ……156
第12章 内面性を重視した心理学の研究方法とは……168

Ⅵ−内面世界を育て整えるために
附章1 慎み― 欲望を制する……184
附章2 冷暖自知― 体験し経験化をはかる……193
附章3 不審の花―「覚」ということ……208
附章4 世間虚仮―〈我の世界〉を重視する……218
附章5 慎みにもとづく和を― 日本の精神的伝統の再認識…236
  
エピローグ 自己を見つめ、自己を語ること……247

あとがき……261

全5巻の索引(事項・人名) ……281