東京書籍

すべての人々に健やかな知的生活を

東京書籍

はじめてのジョリーフォニックス2

はじめてのジョリーフォニックス2
― ティーチャーズブック ―
CD4枚付き

ジョリーラーニング社/編著 山下桂世子/監訳

ISBN:978-4-487-81191-5
本体価格4,600円
発売年月日:2019年08月31日
ページ数:176頁
判型:A4

解説:
世界120か国で使われている信頼度No.1の英語の読み書き指導法、待望の第2弾!
第1弾の「はじめてのジョリーフォニックス」では、基礎として、アルファベット26字と「ai(エイ)」「ng(ン)」などの、ジョリーフォニックスの基本となる42音を学びました。

しかし、英単語のなかには、異なる綴りで同じ音(同音異綴り)をするものやフォニックスのルールに沿っていない単語があります。

異なる綴りで同じ音:【ee, ea】 meet と meat
フォニックスのルールに沿っていない単語:he, go, does, would, one など

こうした、異なった読み方をする単語を知っていれば、初見で読める単語の数がぐっと増えます。
本書『はじめてのジョリーフォニックス2』では、第1弾で学んだ基本の42音(s, t, p, ck……)を復習しながら、アルファベットの大文字と小文字の読み書きや、単語の確認、5~6語の英文の読みとりなど、「音」から「文字」、「文章」へ、英語を使ってできることを増やしていきます。
『1』と『2』を両方習得することによって、日本の中学校で学習する英単語の約7割は暗記せずとも読めるようになります。

※ティーチャーズブックには、音声CDが4枚付属しています。ステューデントブックには付属していません。

※実際に学習者に指導するには、本書に準じた学習者用ワークブック『はじめてのジョリーフォニックス 2― ステューデントブック ―』が必要です。



世界120か国以上で使われている信頼度No.1の英語の読み書き指導法! ジョリーラーニング社のホームページへはこの画面をクリック

ジョリーフォニックスとは何か

英語の「音」  日本語の音と英語の音は違います。母音を例に挙げると、日本語の母音は「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5種類ですが、英語には19 種類ほどの母音があると言われています。例えば、英語には日本語の「ア」の音に似ている母音が5 種類あります。英語話者はそれらを区別して使い分けていますが、日本人が聞くとほとんど違いがわかりません。また、英語には「th」や「r」のように日本語には存在しない音もあります。  英語には母音と子音を含めて約42 種類の音があると言われていますが、その多くが日本語ではあまり使わない音です。自分たちの言葉にない音を認識するのは難しく、このことが英語の学習を困難にしています。例えばbus(バス)もbath(風呂)も日本人にとっては同じ「バス」になってしまい、うまく区別することができません。  また、ローマ字の表を思い浮かべるとわかるように、日本語の音は基本的に「子音」と「母音」がくっついてできています。例えば、「か」は子音「k」と母音「a」が,「す」は子音「s」と母音「u」がくっついてできた音です。日本語では、子音が単独で使われることはほぼありません。これに対して、英語ではstop のs やpのように子音だけで表される音をよく使います。日本語よりももっと小さい音の単位(音素)が存在する言語なのです。日本人はこのような子音単体の音に慣れていないため、英語を読んだり書いたりするとき、どうしても日本語特有の「母音」をつけてしまいます。例えば、「test」という単語は日本人の耳には「テスト」(tesuto)と聞こえます。終わりの2つの子音(s,t)に母音(u,o)がくっつき、もとの発音とは大きく異なります。このように無意識に母音をつけてしまうことが原因で、英語が通じないということがよくあります。  耳で聞いてリピートしましょう、と言われますが、私たちの言語に存在しない音を再現することはなかなか難しく、自分ではまねしているつもりが、カタカナ英語になってしまうということも多々あります。唇を噛んだり、口を広げたり舌を使ったりして出す英語特有の音は「聞いていればできるようになる」ものではなく、きちんと学習する必要があるのです。 英語の音と文字の関係  42 種類の英語の音を身につけることは、英語の読み書きを学ぶうえでも重要です。アルファベット(ラテン文字)は音を表す文字です。これはひらがなやカタカナと同じです。「あ」という文字や「い」という文字自体が特定の意味を持たないのと同様、「a」や「b」も単体では意味を持ちません。「か」と「き」の音がつながってはじめて「かき(=柿)」という単語になるように、英語もいくつかの文字の音がつながってはじめて、意味のある単語になるのです。英語の読み書きができるようになるには、42種類の音がそれぞれどのような文字で表されるのかを学ぶ必要があります。  42 音の一覧が右ページの表にまとめられています。まず、原則としてa からz までのすべてのアルファベットが1つずつ音を持っています。これだけで26 種類の音を表すことができますね。そのほか、a,e,i,o,u の母音は長母音や二重母音と呼ばれるもう1 つの音を持ちます。  しかし、これではまだ42 音を表すには足りません。英語の読み書きを複雑にしている要因のひとつに、英語には42 の音があるにもかかわらず、文字は26 しかない点があります。このことは、英語では2つの文字を組み合わせて読む音があることを意味しています。表にあるsh,th,ng,ch などは、2文字で1つの音を表します。このように2文字で1つの音を作る綴りはダイグラフと呼ばれます。例えば、fish(魚)の音は「f」,「i」,「s」,「h」の4つの音がつながってできる音ではなく、「f」,「i」,「sh」の3つの音がつながってできる音です。  なお、oo,th のダイグラフは,book とmoon,this とthin のように、それぞれ2 種類の音があります。ジョリーフォニックスでは独自の書体を使う1 ジョリーフォニックスとは何か英語の「音」英語の音と文字の関係ことで、これらの2 つの音を区別しています。 oo (短く発音するoo。例:book) oo(長く発音するoo。例:moon) th(有声音のth。例:this) th(無声音のth。例:thin)   小学校でひらがなを学ぶとき、「あ」という文字が「ア」という音に対応していることから学びますが、これと同じように、英語を学ぶ際にも「a」という文字がどのような音に対応しているのかを学ぶ必要があります。  これらのルールは、イギリスやアメリカなど英語を母語とする国の人々も学んでいます。正しく読んだり書いたりするために、まずは42 の音と26 の文字を正しく学ぶことが不可欠です。 「文字の名前」と「文字の音」  「音」を表す文字という点では、アルファベットはひらがなやカタカナと同じです。ただ、アルファベットがひらがなやカタカナと違うのは「a,b,c,…」のそれぞれの文字に「エィ,ビー,シー,…」という「名前」と「ア,ブ,ク,…」と読む「音」があることです。英単語を読むときは文字の名前ではなく、文字の音を使います。例えば「ten」は「ティー・イー・エヌ」 とは読まず、「トゥ・エ・ン」=「テン」と発音します。 この先、本書では「文字の名前」を表すときにはs,文字の音を表すときには/s/ のように表します。ためしに、次の文にふりがなを振ってみましょう。 s(エス)という文字には /s/(ス) という音があります。  日本で行われている一般的な英語教育では、文字の名前を最初に指導する、または名前と音を同時に指導する場合がほとんどです。子供たちは文字の名前を最初に習うと、単語を読むときも文字の名前を用いようとします。しかし、実際に英単語を読む際に文字の名前を使うことは少なく、基本的に文字の音を使います。 つまり、単語の読み書きができるようになるには、この文字の音を学習する必要があるのです。 フォニックスの役割  英語の音とそれに対応する文字の知識があれば、子供は綴りを見て音をくっつけて単語を読んだり、単語に含まれる音を聞き分けて文字をつづったりすることがある程度できるようになります。これだけでもかなりの単語を読み書きできるようになりますが、実際には英語の読み書きはもう少し複雑です。例えば、「エィ」と発音する綴りはai,ay,ey など10 種類以上もあったり、knife(ナイフ)の最初のk のように、読まないこともあります。英語という言語はそもそも読み書きが難しい言語なのです。このような複雑な綴りの単語を読むには、さらにいくつかのルールを学ぶ必要があります。  フォニックスはこのような複雑なルールも含めた「音と文字の関係」を教え、子供が英語を読み書きできるようにするための指導法です。  英語の正しい音や音と文字の関係を習得していない場合、子供は新しい単語の綴りを丸暗記で覚えなければなりません。中には暗記が苦手で取り残されてしまう子供もいることでしょう。英単語を暗記に頼るということは、ひらがなを習得しないで国語の教科書を読ませるようなものではないでしょうか。フォニックスの指導によって「音と文字の関係」を学ぶことで、より簡単に英単語を読み書きすることができるようになるのです。

ジョリーフォニックスの5つの基本技能

 ジョリーフォニックスでは、子供たちが英語を読み書きするための大切な技能として、次の5つを挙げています。5つの基本技能を習得することによって、子供にとって英語の読み書きはぐっと楽になります。 基本技能1. 文字の音を覚える 基本技能2. 文字の形を覚える 基本技能3. ブレンディング 基本技能4. セグメンティング 基本技能5. ひっかけ単語 基本技能 1.文字の音を覚える  これまで見てきたように、英語の読み書きができるようになるためには42 種類の音をきちんと覚えることが必要です。  日本人の子供はすでに日本語の音に慣れ親しんでいるので、英単語を聞いたとき,無意識に自分の知っている日本語の音に置き換えて聞いてしまいます。/dog/ という単語が、日本人の子供には「ドッグ(= /doggu/)」 という音に聞こえてしまうのです。しかし、/dog/ は「ドッグ」とはまったく別の音です。これでは音を聞いて正しい綴りを推測することができません。英語の読み書きの力をつけるには、まずは/dog/ という音をそのまま /dog/ と聞けるようになる必要があります。そのためには、1つひとつの英語の音を正しく理解できるように訓練をしなければいけません。  ジョリーフォニックスでは、1レッスンごとに1つの音を教えていきます。本書には42 レッスン分の指導案が掲載されていますが、これらのレッスンを終えることで、42 音すべてを学ぶことができるようになっています。各レッスンでは、「文字の音」をただ機械的に教えるのではなく、文字の音をしっかりと定着させるための様々な活動が用意されています。例えば、/s/ は「ヘビが警戒して出す音」あるいは「ヘビが逃げていくときに発する音」と教え、そのヘビが描かれた絵本を見ながら物語を聞き、その物語に関連したアクション(動作)を行います。これらの活動を通じて、子供は楽しく「音」をマスターすることができるのです。 英語の文字の音を完全に覚えることは、その後の英語学習を大きく左右します。文字を見たら、対応する音をすぐに言えるようにしましょう。  なお、1つの音に対して複数の綴りが対応している場合もあります。しかし、これらを同時に指導してしまうと子供たちが混乱してしまうため、まずは42 音に対して綴りを1種類ずつ教えたあと、徐々に指導していきます。 基本技能 2.文字の形を覚える  ジョリーフォニックスの各レッスンでは、文字の音を指導すると同時に、その音を表す代表的な文字の書き方を指導します。  幼い子供がきれいでなめらかな字を書くには、まずは鉛筆の正しい持ち方と、字の正しい書き順を教える必要があります。これには少し手間がかかりますが、その手間はあとになって非常に生きてきます。きれいでなめらかな文字が書けるようになりますし、自分の字を好きになれることでしょう。  日本でアルファベットの文字指導を行う際、中学校の教科書や市販されている教材の多くは大文字から指導していくことが提案されています。しかし、実際、英文を読んでいくなかで、大文字と小文字の数はどちらが多いか考えてみると、大文字を使用するのは、文の書き始め,固有名詞の最初の文字、強調するとき、と限定されています。つまり、使用頻度でいえば小文字の方が断然多いのです。そこで、ジョリーフォニックスでは小文字から指導し、大文字は小文字が書けるようになってから、きちんと指導していきます。文字の音と併せて導入するため、子供たちは文字を習うとすぐに単語が読み書きできるようになります。 基本技能 3.ブレンディング   ブレンディング(Blending)は英単語を読む際に最も重要とされる技能です。ブレンディングとは「結合させる」という意味ですが、何を結合させるかというと、文字の音です。例えば、sit という単語を読むときには、s は /s/,i は /i/,t は /t/ とひとつひとつの文字を音で読むことは学習していますが、この3つの文字の音をくっつけながら読んでい くと、sit という単語が読めるようになります。このように、単語の各文字を見て、それぞれの音を口に出して言い、その音を単語として自分で聞いてくっつけるというスキルは、子供が自分でできるようになるものではありません。このブレンディングはきちんと教えていかなければいけません。  ブレンディングの能力があれば、初めて出会う規則的な綴りの単語を、自力で読むことができます。不規則な綴りの単語も、ブレンディングができれば、はるかに読みやすくなります。どんな単語も、どこかしらはフォニックスルールに則っているからです。  ブレンディングができる子供は、アルファベットという暗号を解読する仕組みを理解できています。そうなると、アルファベットの連なりを自力で解読できます。自分が読めるのだと気づいた子供はとても感動し、自信を深めていきます。なめらかにブレンディングができるようになれば、子供は英語を読むことにほとんど問題を感じないでしょう。 基本技能 4.セグメンティング  セグメンティング(Segmenting)は英単語を書く際に最も重要とされる技能です。英単語を書くには、 単語に含まれるひとつひとつの音を聞き分けて、各音に対応する文字を書く必要があります。例えば、/sun/ という音を聞いて、その単語に含まれている音を/s/ と /u/ と/n/ にそれぞれ分割し、それをs-u-n という文字に書き起こす必要があるのです。これができれば、mat, pen,hop,lid,fun,run,sunset など、何百という単語を自力で書くことができるようになります。  セグメンティングの目的は,「単語に含まれる音を識別して、音に対応する文字を書くこと」です。セグメンティングができるようになると、初めて聞いた単語でも文字で表すことができるようになり、辞書を使ってその意味を調べることができるようにもなります。  ブレンディングとセグメンティングの練習を積むことで、子供は「単語を読むには文字を音に変換すること(デコーディング)が大事で、単語を書くには、音を文字に変換すること(エンコーディング)が大事なのだ」と実感できます。この実感は子供に自信を与えます。そしてこの実感こそが、ジョリーフォニックスの大きなポイントなのです。  もう少し学習が進むと子供は、英語の綴りはそこまで単純ではないと知ることになります。英語ではひとつの音の綴り方はひとつではないこと、ときにはかなり奇妙な綴りがあるという事実に直面していきます。それでも、まずシンプルな法則を学び、それから複雑な法則へと段階的に進んでいくことで、ほとんどすべての子供が英語を読み書きできるようになります。 基本技能 5.ひっかけ単語  ひっかけ単語(Tricky Words)はフォニックスのルールにあてはめることができない単語のことです。その代表が I,the,are,was,to,do などです。he を例に挙げてみると、h は /h/(息をはぁっと吐く音)、 e は /e/(日本語の「え」と似た音)という音であり、組み合わせると「へ」という読み方になるはずです。しかし、実際にはe の部分は「イー」と読み、he は「ヒー」という読み方になるのです。  このような単語は、ひとつひとつ個別に覚えなければなりません。英語の綴りは複雑であり、42 の音と綴りだけでは、残念ながらすべての英単語を読み書きできるようになるわけではないのです。それでも子供にとって、すべての単語を暗記するのではなく、文字の音を当てはめたり、ルールに沿って読んだりする単語と、そうではなく覚えなければいけ ない単語があるということを理解するだけで、暗記する抵抗感が激減します。  フォニックスを習い始めた子供たちには、これらの単語がなぜひっかけになっているのかを説明し、そのうえで「見て書いて覚える」ようにします。 5つの基本技能の習得のための系統立ったプログラム  5つの基本技能を身につけると、英語の読み書きがある程度自由に行えるようになります。ジョリーフォニックスでは、これらの技能の定着を目指してレッスンを行います。子供の発達段階に応じて無理なくレッスンを進められるよう、ジョリーフォニックスは系統立ったプログラムになっており、その手順に従って指導を行うことができます。  はじめに、基本となる42 音と26 の文字(アルファベットの小文字)を覚えるところからスタートします。 この部分はすべての土台となる重要な部分ですので、1つの音ごとに1レッスンをかけて丁寧に指導します。 音を導入する順番は abc 順ではなく、/s/,/a/,/t/,/i/, …,/ar/ のように、ジョリーフォニックス独自の順番で進んで行きます。これは、英単語のなかでの出現頻度やブレンディングのしやすさなどを考慮して配列されています。  なお、42 音とアルファベットは 1対1で対応しているわけではなく、中には何種類もの綴りで表せる音もあります。例えば、「エィ」という音は、a,ai,ay, ey など10 通り以上の表し方があります。しかしこれらを一気に教えると子供が混乱してしまうので、この段階では1つの音につき1通りの書き方を教えます。  42 音のレッスンがすべて終わるころには、ブレンディングの力やセグメンティングの力も育ってきています。この段階で13 のひっかけ単語を教えると、簡単な文を自分の力で読み書きできるようになります。ここまでがジョリーフォニックスの第1段階で、土台となる部分です。『はじめてのジョリーフォニックス』(既刊)ではこの部分までのレッスンを扱っています。  ここまでの内容を習得した後、本書では第2段階として、より複雑なルールについて指導していきます。英語の綴りは非常に複雑で、42 の音と綴りだけでは、残念ながらすべての英単語を読み書きできるようになるわけではありません。例えば、先に述べたように、「エィ」 という音の綴りは10 を超えます。第1段階では1つの綴り/ai/ しか教えませんが、第2段階ではほかの綴り(ay,a-e など)も頻度順に指導していきます。こういった「音は同じであるが違う綴り」を「同音異綴り(Alternative Spellings)」と呼びます。また、ひっかけ単語も英語の基礎的な単語が多く( I , the , he , here , live ,does など )、英語の読み書きを習得していくためには避けられない大切な学習です。  また、ch というダイグラフは、cheese に見られる/ch/ という音以外に、school など/k/ の発音になるものもあります。このように1つの綴りで違う読み方をするものも、順番に指導していきます。これも、一度に指導してしまうと、子供たちは /ch/と読むのか /k/ と読むのかわからずに定着しないため、極力混乱を防ぐように順番に指導していくことが重要なのです。  このように、ジョリーフォニックスの第2段階では一歩進んだルールやより多くのひっかけ単語についても指導していきます。日本の子供たちもこの部分を学習することによって綴りの規則性を知ることで、単語を丸暗記する負担を減らすことができるようになります。このようにして、子供の発達段階に応じている点、順序立てて混乱を防ぐように指導している点が、システマティック= 系統立ったプログラムであることを意味するのです。

多感覚法を用いた教え方

 ジョリーフォニックスのレッスンでは、単なる読み書きだけではなく、アクションやお話、歌などさまざまな活動を行います。これはジョリーフォニックスの大きな特長の1つで、多感覚法(Multisensory Approach)と呼ばれます。  多感覚法は文字と音の対応指導を行う際、同時にさまざまな感覚伝達経路(視覚、聴覚、運動感覚、触覚) を活発化するものです。これを用いる利点として、次の2点が挙げられます。第1に、多感覚を用いることで楽しく学習でき、それが記憶に残りやすいという点です。これは通常の子供たちだけではなく、特別な支援を必要とする子供にも効果があります。第2に、LD(学習障害)を持つ子供は音韻処理能力が低いとされていますが、それ以外の感覚を用いることで音韻処理能力の弱さをカバーできるという点です。  42 音の指導時には絵や話、歌、アクション、フィンガーフォニックスなどさまざまな多感覚を刺激して、子供たちはそれぞれ印象に残る感覚で音と文字の関係を習得してきました。同音異綴りやひっかけ単語には、42 音のような各授業で決まった感覚を用いることはありませんが、以下を参考に、ぜひ多感覚を使ってください。 視覚(Visual)  同音異綴りは、「同じ音だけれど異なる綴り」を意味しています。そこで、同じ音どうしを1 本の木にまとめておき、教室に掲示します。写真はイギリスの小学校の掲示板です。次の写真を見てください。(本書をご確認ください)/ai/ の音が42 音で習ったイラストと一緒に飾られています。そして、すぐ下に、黄色の木の中にai, ay, a-e と同音異綴りが書かれています。これを見ることで、子供たちは、これらの綴りが /ai/ という音であると想起できるわけです。  この後に、ay という単語を習ったら、その隣にay の単語ばかり書かれたカードを掲示していきます。  ひっかけ単語は英語を母語とする子どもたちにもなかなか覚えられない単語です。そこで、指導した単語を教室に掲示し、これもいつでも見えるようにしておきます。  大切なのは「暗記」を強いることではなく、「定着」できるような環境を作ることです。たとえばTricky Word Wall Flowers(ジョリーラーニング社から発行されている教材)は色もきれいで、この色で覚えられる子供もいます。右側の写真は家庭で指導している家の壁です。子供が習ったひっかけ単語を1 つずつ自分で貼っていったそうです。自分で貼る、ということで、どこに貼ったか覚えているようで、ひっかけ単語もスムーズに覚えられました。 聴覚(Auditory)  新しい綴りを指導する際には、42 音で使用したジョリーソングを使いながら、音を何度も復習してもいいかと思います。ただし、その際には、必ず新しい綴りを子供たちに見せながら聞かせてください。 運動感覚(Kinaesthetic)  ジョリーフォニックスの多感覚の大きな特徴の1つとして「アクション」があります。同音異綴りでは、このアクションを使用しながら、新しい綴りを指導していってください。もちろん、先生が新しいアクションを考えることも可能です。たとえば筆者の勤務している学校では、担任の先生がigh の綴りを指導する際に、"high, igh!" と言いながら、上を指すアクションを取り入れていました。また、文字を空書きするというのも、とても重要な運動感覚を使った指導の1つです。 触覚(Tactile)  42 音の指導中にはフィンガーフォニックスに溝があり、その文字をなぞることで、触覚を刺激する指導が可能でした。同音異綴りやひっかけ単語には、こうしたツールはありませんが、砂文字を利用したり、友達や指導者と背中に書きあったりして、触覚も使っていきましょう。書けるけど暗記できない、そもそも集中できない……。それぞれの特性を持つ子供に対して「多感覚的」にアプローチすることは、その集中力を持続させ、文字と音についての理解度を深めることにつながるのです。そういった意味で、ジョリーフォニックスは「特別支援」の観点からも、極めて有効な手法であると言えます。

著者情報

山下桂世子(やました かよこ)
日本で数少ないジョリーラーニング社公認トレーナー。愛知県岡崎市出身。同市の小学校に教師として勤務し、特別支援学級も担当するが、夫の海外転勤にともない渡英。現地の小学校で働くかたわら、日本語教師として成人学級で日本語を指導し、ノッティンガム大学で特別支援教育を学び、修士号を取得する。また,現地校で使用されているジョリーフォニックスに興味を持ち、その指導法を学んだ。現在、ジョリーフォニックス、ジョリーグラマーの公式トレーナーとして、イギリスと日本を往復し、各所で指導者向けのトレーニングセミナーを開催するなど、積極的に活動している。

著者情報

ジョリーラーニング社(ジョリーラーニングシャ)
(Jolly Learning)
イギリス・エセックス州に本社を置く教材出版社。1987年設立。英語の読み書き指導の教材を中心に、年間200万部を超える教材を発行。主要教材であるジョリーフォニックスは世界100か国以上で使用されており、インドやナイジェリア、パキスタンなど、一部の国では政府の教育政策にも取り入れられている。指導者の育成にも力を入れており、世界各国に公式トレーナーを配置。英語の読み書き指導を世界的に大きく変え、新たな主流となるメソッドを作り上げた功績が高く評価されている。