COSMOS 美しき宇宙の図鑑

COSMOS 美しき宇宙の図鑑

スミソニアン協会/監修 渡部 潤一/日本語版監修

ISBN:978-4-487-81838-9
定価6,930円(本体6,300円+税10%)
発売年月日:2025年08月30日
ページ数:416
判型:B4変型

解説:
宇宙のすべてを圧倒的なビジュアルで解説!

2021年に打ち上げられた、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による最新の高解像度写真を数多く収録。
また、スミソニアン協会の監修のもと、最新の研究に基づく宇宙の姿を、観測機器、地球と太陽系、銀河、宇宙の果て、そして、宇宙の誕生から終わりまで、天体の関係を整理した章立てで、網羅的にして過不足なく解説する図鑑。
その美しさと整理された構成は他の追随をゆるさない、ページをめくるたび、眼前に宇宙が広がる、自分だけの宇宙船のような一冊。

序文──日本語版刊行にあたって

日本語版監修者
天文学者 渡部潤一

 宇宙は多くの人の知的好奇心を刺激する代表的な対象のひとつである。それは子供も大人も同じだろう。たとえば子供は、自分が歩いて行く時、あるいは車などで移動している時に、空に輝く月がずっとついてくることに気づいて興味を持つ。同じように、いろいろと経験を積んだ大人でさえ、ブラックホールやら銀河やら、あるいは地球と似た惑星の発見などのニュースに触れ、なんだかわくわくすることもあるに違いない。そんなわくわくを更に深めたいと思ったとき、実際に星空を眺めるだけでなく、宇宙について本で学ぶこともひとつの方法だ。インターネットのように一点集中で知識を得るのではなく、本のように縦覧性の高い情報に触れ、総合的かつ俯瞰的に見ることによって自分が知らない世界を理解できる喜びは、何物にも替えがたいはずだ。
 本書は、宇宙への知的好奇心であふれる読者にはまさにうってつけの一冊である。この400ページを超える大著は、まず宇宙を見る歴史から始まる。肉眼で見える世界から天体望遠鏡の発明でどのように人類の宇宙観が変遷していったかが描かれ、そして写真の時代を経て、現代が可視光以外の様々な手段で宇宙を探る時代になっていることが概観できる。その後、我々の住む太陽系について、本書のほぼ半分ほどのページ数を費やしての詳細な解説が続く。この部分は、太陽に近い岩石惑星の領域と、木星よりも遠方の巨大惑星が存在する領域とに分かれている力作だ。どちらも探査機による様々な成果はもちろんのこと、様々な現象の理論的な説明についての最新の学説まで紹介されており、内容は極めて濃い。監修者としても、なかなか難しい内容もあり、その筋の専門家に聞くことが何度かあるほどであった。それだけ最先端の研究成果が盛り込まれているということである。
 その後、後半の四分の一ほどは、太陽系を飛び出し、われわれが存在する銀河である、天の川銀河内の天体の解説となる。太陽以外の恒星とその一生、星雲や星団などの天体の仕組み、そして系外惑星の世界の紹介が続く。青銅器時代に星を描いた遺物ネブラ・ディスクや、我々になじみ深い七夕伝説の紹介などの文化的な話題もしばしば挿入されていて、最先端天文学一辺倒でないところも本書の特徴である。多くのコラムによって、文化的な知的好奇心さえもくすぐられる内容となっている。さらに天の川銀河を飛び出し、銀河の解説を経て、最遠方宇宙、すなわち宇宙の誕生と終焉とを議論する宇宙論へと続く。そして最後の80ページほどは全天88星座の詳細な解説となっている。
 本書はなかなかの大部なので一度に読了することはなかなか難しいかもしれない。日々気が向いたときに、少しずつ読み進めることで宇宙を深く知り、理解していく喜びを感じていただけるのではないだろうか。そして、時には夜空を見上げ(本書の画像にあるような天体が見えるわけではないのだが)、遙か遠くに存在する世界を想像していただく機会を作っていただければ幸いである。

はじめに

 息をのんで夜空をじっと見上げるときほど気持ちが落ち着くことはないだろう。天の川が天頂に横たわり、星座たちが姿を見せる。その美しさを見つめていると、何でもできそうな気がする。でも、私にとってもっと素晴らしいのは、この美しさから知識が導かれることだ。数千年にわたる夜空の研究を通じて、天文学者や宇宙物理学者たちは、かつては回答不可能と思われた多くの質問に対して答えを見つけてきた。「空をさまよい歩くように見える星があるのはなぜか?」とか、「宇宙の年齢は?」とか─今あなたが手にしているこの本には、そうした知識がぎゅっと詰め込まれている。ここで私たちは一緒に宇宙を旅するのだ。太陽系という小さな世界から、宇宙に存在する最も巨大な構造へ……。そして宇宙に灯った最初の光へ……。
 私が注目したいのは、みなさんがこの本を読んだ後、さらにその先まで旅を続けるかどうかだ。私自身は子どもの頃、この本と同じようなテーマの本を何冊も夢中で読んで、そこに書かれていることを手当たり次第に吸収した。本は好奇心に火を点け、それは何十年も燃え続けている。本は刺激的で、驚きに満ちている。本に背中を押された若い研究者の卵たちは、もっと別の疑問に答えるために研究の道を歩み始め、そこで得られた答えが未来の本に載る─私はまさにそういう道を歩んだのだ。以前の私は、お人形遊びが好きな普通の女の子だった。でもある日、宇宙の本を手に取り、その瞬間から、私の人形は最先端の探査ミッションに向かう宇宙飛行士になった。誕生日に買ってほしい物リストには、望遠鏡や星図、そして宇宙の本が何冊も並んだ。本の中でブラックホールについて少しでも書かれているページは、手垢で黒くなった。私は何よりもブラックホールにわくわくしたのだ。大人になっても、そのわくわくは全然変わらない。そして、ついに私は超大質量ブラックホールの進化を研究する宇宙物理学者になった。
 8歳の私は、「宇宙について分からないことはもう何もない」と思っていたので、宇宙物理学者になった自分がいまだに旅の途中にいるとは予想だにしなかっただろう。だから、みなさんに是非お伝えしておきたい。この本はどのページもきれいで、とてもたくさんのことが書かれているけれど、だまされてはいけない。宇宙にはまだまだ分からないことがたくさんある。

ベッキー・スメサースト博士
(宇宙物理学者、作家、ユーチューバー)

著者情報

スミソニアン協会(スミソニアンキョウカイ)
1846年設立のスミソニアン協会は、19の博物館とギャラリー、国立動物公園を有する世界最大級の博物館群および研究機関複合体である。所蔵されている文化工芸品、美術品、標本の総数は推定1億3700万点にのぼり、その大半の1億2600万点以上が国立自然史博物館に収められている。世界有数の研究拠点であるスミソニアン協会は、学校教育、公的活動に広く貢献し、芸術・科学・歴史の分野で奨学金制度も設けている。

著者情報

渡部潤一(わたなべじゅんいち)
国立天文台特任教授

コンテンツ

第1章 宇宙を見る
第2章 太陽と地球型惑星
第3章 巨大惑星から太陽系外縁へ
第4章 天の川銀河
第5章 天の川銀河の外側
第6章 最遠方の宇宙

星座
用語集、索引