図鑑 アフリカ全史

図鑑 アフリカ全史

DK社/編 松田 素二/監修

ISBN:978-4-487-81772-6
定価6,930円(本体6,300円+税10%)
発売年月日:2025年08月27日
ページ数:400
判型:A4変形

解説:
「アフリカ大陸」の歴史・文化・地理を総覧する初めてのビジュアル大図鑑。

人類発祥の地であり、地球上で2番目に大きな大陸アフリカ。そこには、20万年の歴史と、文化・民族・宗教の多様性がある。
本書では、これまで充分に紹介されてこなかった、「アフリカ大陸」の長大な歴史と文化の多様性、そして各国の現状までを網羅。

「これまで存在自体を疑われてきたアフリカの歴史のダイナミックな展開をたんなる言葉やイデオロギーではなく、一目でわかる視覚資料を活用して実に説得的に提示しているのが本書の最大の意義である。」(本書 日本語版監修者「序文」より)

《本書の特徴》

・アフリカ大陸の総合的な歴史図鑑
これまで多くの国々で「文字」を持たなかったことで「歴史がない」と言われてきたアフリカ大陸について、多くの遺跡や遺物、美術作品、写真などの文化を通して紹介する、初めての歴史図鑑。

・先史時代から現代までの歴史を網羅
アフリカ大陸は人類発祥の地であり、約3000の民族が約2000の言語を使用して暮らしている。その多様性の背景には数々の国や帝国が興亡した歴史がある。先史時代から始まり、文明の誕生、巨大帝国の時代、ヨーロッパによる植民地化と独立闘争、そして現代までを網羅!

・植民地時代のアフリカを検証
約1200万人が諸外国に売り渡された「奴隷貿易」、19世紀末にかけてほぼ全域にわたって展開された「植民地化」について解説。アフリカが外部からどのように誤解され、人種や文化の理論によって不当に扱われてきたかを検証する。

・アフリカを包括的に理解できる
アフリカの人口は約13億で70%以上が20代で、2050年には4人に1人はアフリカ人となると言われている。本書は、今後世界への大きな影響力を持つであろうアフリカ大陸と、その多様な人々の歴史を理解するための包括的な入門書となっている。

・巻末には、54ある主権国家の各国史と用語集、索引を収録

序文 日本語版刊行にあたって

 本書は2024年にDK社から刊行された「DK Definitive Visual History」シリーズの中の一冊、『Africa: The Edfinitive Visual History of a Continent』の全訳である。遺跡・遺物や美術作品、写真など視覚を通して人間の歴史を捉えなおすというこのシリーズの中で、アフリカ大陸全体を対象とする本書には、特に大きなインパクトと深い意味がある。
 「アフリカには歴史がない」という命題は、実は長い間、一般社会のみならず歴史学はじめ学術世界においても、「常識」とされてきた。その理由は、多くのアフリカ社会(とりわけサハラ以南のいわゆるブラックアフリカ)が文字を持たなかったからだ。文字のないところに、歴史(や学術・文化)は存在しないという「未開で原始的なアフリカ」という偏見は今も根強く存在している。これに対して、アフリカ社会とアフリカ人の主体性と創造性に着目して、アフリカ史という分野が確立するのは、1960年代から今日まで継続しているユネスコの「アフリカの歴史」プロジェクトの成果でもある。本書は、このアフリカの主体性と創造性という立場に明確に依拠したものだ。
 人が共同して生を営むところには、常に社会の制度やシステムが生まれ、物質的な基盤が作られ、そこに豊かな文化や学術が反映すること、そしてこうした諸社会が相互に交流し、外世界との間にダイナミックな関係を築いていくこと(それらの総体が歴史となる)は、アフリカ大陸においても他の大陸と異なるところは決してない。さらに本書は、ヨーロッパ史(地中海史)やアラブ(イスラーム)史の一部として取り扱われて来たアフリカ地域と、それ以外のサハラ以南アフリカを区分して議論されてきたアフリカの歴史を『ユネスコ アフリカの歴史』にならって総合的なアフリカとして捉え、そのアフリカ全体の歴史を対象としている点にも特徴がある。
 このように、これまで存在自体を疑われてきたアフリカの歴史のダイナミックな展開を、たんなる言葉やイデオロギーではなく、一目でわかる視覚資料を活用して実に説得的に提示しているのが、本書の最大の意義である。「百聞は一見に如かず」という言葉通り、広大なアフリカ大陸のどの地域も、豊かで濃密な人の営みがわかる遺跡、遺物、美術・工芸品を多数輩出しており、それだけを見てもアフリカ史のダイナミズムの一端を直接感じることができるはずだ。
 また日本語への翻訳にあたっては、従来の日本のアフリカ理解で、無条件に使用されて来た「部族」や「族」という表現をやめた。この表現こそが、アフリカ=未開のイメージを拡散し再生産してきた元凶だからだ。また原著のデータが執筆された時点以降の展開については、新たに補記している。
 最後に、この本を通して、アフリカに対する意識的・無意識的偏見が是正され、アフリカへの理解と認識がいっそう深まることを願ってやまない。

日本語版監修者
松田素二(まつだ・もとじ 総合地球環境学研究所特任教授、京都大学名誉教授)

はじめに

 アフリカは人類が最初に誕生した地である。つまり、私たちの歴史の始まりの地なのだ。ところが、アフリカの驚異的な過去(そして現在の姿)への理解はほとんど進んでいないままだ。この本はアフリカ大陸の歴史、そしてアフリカ大陸に住む多様な人々の歴史を理解するための包括的な入門書である。
 アフリカの多様性は、ほかの大陸のどこにも見られないほど大きい。今日、アフリカ大陸には約3000の民族が、約2000の言語を使用して暮らしている。この驚くべき多様性の背景には、人々が移動し、大陸の各地に移住し、その土地に適応していった長い歴史がある。それは、何世紀にもわたって、数多くの国や帝国が興隆し、滅びていった歴史でもある。
 そのため、この本が扱う範囲は広大にならざるを得ない。まずはアフリカ大陸の先史時代だ。「人類揺籃の地」だった時代の広大なアフリカに出現した、最初の人類を紹介する。次いで、この太古のアフリカ人がいかにして世界最初の文明と文化を生み出したかを見ていく。それから、アフリカの巨大帝国の時代について解説したあと、アフリカを植民地にしたヨーロッパの帝国と、それらを打倒した20世紀後半の独立のための闘争を紹介する。現代のアフリカでは若い世代が人口の大半を占め、音楽、映画、芸術シーンが活気づいている。それに、私の生まれたラゴスのような、巨大都市が発展しつつある。
 この本では、アフリカの歴史のなかで最も痛ましい時期も取り上げる。アフリカはどのように奴隷の供給源となったのだろうか。アフリカからの奴隷は初め、7世紀以後にアラブ世界に広まった。16世紀からは、大西洋をまたぐ奴隷貿易によって、アフリカは荒廃した。大西洋奴隷貿易はいくつもの戦争を引き起こし、少なくとも1200万人のアフリカ人が南北アメリカ大陸のヨーロッパの植民地に売り渡されたことで、アフリカの社会は根底から破壊された。その後の章では、いかにしてヨーロッパ列強が19世紀末にかけてアフリカ大陸のほぼ全域を植民地化し、搾取したかを検証する。アフリカの人々は絶えず抵抗したが、はね返すことはできなかった。
 この本が焦点を当てるもう1つのテーマは、ヨーロッパなどアフリカの外部から、アフリカがどのようにイメージされ、誤解されてきたかということだ。地図上の表現、語り継がれる物語、奴隷制や帝国主義を「正当化」するために使われた人種や文化の理論などを見ると、それがわかる。
 そのような根拠に乏しい社会通念によって見えなくさせられたアフリカの本当の姿とは、洗練された文化があり、現地の人々が独自の歴史観を持っている大陸の姿である。また、アフリカ大陸の景観はそこに住む人々と同じくらい多様性に富んでいる。この本には、アフリカの古くからある砂漠、広大な草原、青々と茂る熱帯雨林を撮影したすばらしい写真が掲載されている。私にとって、アフリカの歴史は常に重要だった。歴史研究者として活動するなかで、私は何度もアフリカの歴史に立ち戻ることとなった。アフリカ人が外部からどのように見られていたか、アフリカ人が過去何世紀にもわたって関わりを持った別の大陸のさまざまな人々とどのように交流してきたのかを理解しようとしてきたからだ。長い間一貫して、世界史におけるアフリカの地位は正当に評価されてこなかった。この本は、人類の歴史の始まりの地であるアフリカ大陸のすばらしい物語をお届けしようとする努力の結晶である。

デイヴィッド・オルソガ
ナイジェリア系英国人歴史研究者、キャスター

本書の特徴

・アフリカ大陸の総合的な歴史図鑑
アフリカ大陸は人類発祥の地であり、現在は約3000の民族集団が約2000の言語を使用して生活している。その多様性の背景には数々の社会や国々の興亡の歴史がある。本書では、先史時代から文明の誕生、巨大帝国の時代、西洋による植民地化と独立闘争、そして現代のアフリカまでの流れを、多くの遺跡や遺物のみならず、衣装、工芸、美術、音楽、映画、文学など文化・芸術を取り上げながら紹介する。

・「奴隷貿易」と植民地時代を検証
約1200万人が諸外国に売り渡された「奴隷貿易」も取り上げ、19世紀末にかけてほぼ全域にわたって展開された「植民地化」についても多くの写真により解説する。奴隷制や帝国主義を「正当化」するために用いられた人種や文化の理論によって、アフリカがどのように誤って理解され不当に扱われてきたかも検証する。

・過去、現在から未来のアフリカへ
2050年にはアフリカ大陸の人口は24億人に達し、世界人口の4人に1人はこの地に住んでいる計算になると言われている。今後、アフリカはますます政治、経済、産業だけでなく、文化でも世界的に影響力を増すだろう。巻末に各国史を収録し、この1冊でアフリカ大陸と多様な人々の過去、現在、そして未来の可能性が理解できる。

用語集、索引付き。

著者情報

DK社(でぃーけーしゃ)
1974年にロンドンにて創業されたイギリスの出版社。世界最大の出版グループPenguin Random Houseの一員。子供から大人まで幅広い世代に向けた本を数多く出版しており、そのビジュアルの美しさと内容の面白さで高い評価を得ている。

著者情報

松田素二(まつだもとじ)
総合地球環境学研究所特任教授、京都大学名誉教授。専攻は社会人間学、アフリカ地域研究。京都大学文学部卒業、ナイロビ大学大学院修士課程を経て、京都大学大学院文学研究科博士課程中退。博士(文学)。主な著書に、『抵抗する都市:ナイロビ移民の世界から』(岩波書店、1999年)、『都市を飼い慣らす:アフリカの都市人類学』(河出書房新社、1996年)、編著書に、『アフリカを学ぶ人のために』(世界思想社、2023年)、『アフリカ潜在力が世界を変える』(共編、京都大学学術出版会、2022年)、『改訂新版 新書アフリカ史』(共編、講談社、2018年)、『ケニアを知るための55章』(明石書店、2012年)などがある。

コンテンツ

序文ー日本語版監修にあたって
はじめに
イントロダクション

1.アフリカの先史時代 500万年前~前3500年
2.初期文明 前3000年~後600年
3.アフリカの帝国 600年~1900年
4.ヨーロッパとの遭遇 1440年~1914年
5.独立の時代 1914年~1991年
6.現代のアフリカ 1994年~

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