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超約 ドイツの歴史

超約 ドイツの歴史

ジェームズ・ホーズ/著 柳原 伸洋/日本語版監修・監訳 小林百音・櫻田美月/翻訳

ISBN:978-4-487-81697-2
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
発売年月日:2024年08月28日
ページ数:308
判型:四六

解説:
GDP世界3位、今、世界が注目する国家、ドイツ。
ゲルマン人の台頭からメルケル以後まで、その2000年超の歴史を4つの時代区分で大胆に要約。
ドイツの歴史を知れば、ヨーロッパの現在がわかる!
図解&カラー図版多数

日本語版序文

 ここ数年、ドイツは日本人にとって理解しにくい「遠い国」になりつつある。大量の難民受け入れ、極右の台頭、罰則は厳しかったが手厚い芸術支援も行ったコロナウイルス対策、そしてロシア・ウクライナ戦争やガザ・イスラエル紛争に対する政治的態度など、容易には説明できないことばかりだ。だが同時に、ドイツは2024年に日本を抜いてGDP世界3位となり、日本にとっては「無視できない国」にもなりつつある。
 ジェームズ・ホーズ『超約 ドイツの歴史(原題 The Shortest History of Germany )』は、約2,000年間のドイツ史を紐解くことで、ドイツを考えるヒントを与えてくれる。本書が特に重視するのは、時間だけではなく地理空間である。ライン川(西)とドナウ川(南)の周辺からエルベ川(東)付近までを「西のドイツ」、そしてエルベ周辺地域と東側を「東のドイツ」として、この「二つのドイツ」の歴史を叙述する。 原著の表紙には、左右の逆方向を向く「双頭の鷲」が象徴的に描かれている。
 さて、この序文は、実はドイツ鉄道の車窓から「川」を眺めながら書いている。日本と比べてドイツの川の流れは緩やかだ。よって、川付近に平野が広がり、そこに都市が形成されている。現在では自動車・鉄道のための大きな橋が架かっているが、その数もそれほど多くないことに気づく。川沿いの都市は、現在も交通、防衛、そして商業の要衝として存在感を放ち続けており、今なお河川は重要な境界地域を形成している。
 日本語版の監修を担当した私は、過去に「エルベの東」のベルリンに5年ほど住み、その後、2019年から「ドナウの南」のミュンヒェンに居を構えている。正直、ミュンヒェンに住み始めたとき、別の国に来たと思った。地域言語( 方言)の違いだけではない。何もかもが違っていたのである。本書に照らし、相違点を一つだけ取り上げておこう。ベルリンではスラヴ系の友人が多く、私は市民講座でポーランド語を習ってみたほどである。バイエルン州はスラヴ国家のチェコに接しているにもかかわらず、州都ミュンヒェンでは「スラヴ」を感じる機会は少なく、「イタリア」に触れる機会が増え、私はイタリア語を習い始めた……。
 話を『超約 ドイツの歴史』の紹介に戻そう。本書は2017年にイギリスで出版され、またたくまにベストセラーとなった。2019年にはドイツ語やイタリア語にも翻訳された。現在、某書籍通販サイトでは英語版で1850ほどの評価(旧版と改訂版を合わせた数、5点満点で平均4.5)、ドイツ語版で650ほどの評価(平均4.4)が付いている。
 本書は、史料・資料を多数採用し、それらの分析から導かれる大胆なテーゼが多くの読者を引きつけた。その魅力を損なわないように訳文は工夫した。主に英語の原著から訳出したが、ドイツ語版での追加点や修正点も参考にした。原文で斜体になっている重要タームは、訳文では太文字にした。また、各章末には原著の説明註(原註※)に加えて訳註(*)を置き、日本の読者の理解に資する情報を記した。さらに、本文中の( )は原著の補足説明で、〔 〕には訳者からの説明註を付けている。高校世界史レベルの知識を補うことで、本書をより深く理解できるだろう。また、「スタンリー」や「カロデンの戦い」などの原著者の出身地であるイギリス的な教養知識も唐突に登場するが、これらも本書がベストセラーになった理由の一つなので省略せずに翻訳し、これらの単語も〔 〕を用いて説明している。さらに、2022年9月に書かれたロシア・ウクライナ戦争開始後の「追記」も収録している。これは、著者ホーズの語るドイツ史理解が現代にも応用可能である証左となっている。
 では、ページを繰って、2,000年の変遷を追う通史と東西の空間史を組み合わせた「新感覚」のドイツ史を体験していただきたいと思う。


日本語版監修者 柳原伸洋


著者情報

ジェームズ・ホーズ
1960年生。歴史家・作家。オックスフォード大学を卒業後、役者を志すが断念し、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で博士号を取得(ドイツ文学におけるニーチェの影響を研究)。大学講師を務めたのち、作家へ転身。小説・ノンフィクション・歴史書まで幅広く手がける。
本書 The Shortest History of Germany (2017, 2022)のほか、The Shortest History of England (2021)を執筆し、いずれも本国イギリスでベストセラーとなる。

著者情報

柳原伸洋(やなぎはらのぶひろ)
1977年生。東京女子大学現代教養学部歴史文化専攻教授。研究分野はドイツ・ヨーロッパ近現代史。北海道大学文学部、東京大学大学院、在ドイツ日本大使館専門調査員などを経て、現職。
共編著書に『教養のドイツ現代史』(共編著、ミネルヴァ書房、2016年)、『ドイツ文化事典』(編集幹事、丸善出版、2020年)、『ドイツ国民の境界 近現代史の時空から』(分担執筆、山川出版社、2023年)などがある。また、ペンネーム「伸井太一」として、ドイツ製品・文化関連の書籍多数。

著者情報

小林百音(こばやし もね)
東京女子大学大学院博士前期課程修了。研究分野はドイツ現代史。論文に「第二次世界大戦末期のドイツにおける民族共同体とその変容――ザクセン地域の事例をとおして」(修士論文)。

著者情報

櫻田 美月(さくらだ みつき)
東京女子大学大学院博士前期課程修了。 研究分野はドイツ現代史。論文に「ナチズムとジードルング――レーゲンスブルクの事例における空間と生活の理想」(修士論文)。

コンテンツ

第1部
 千年紀の前半――紀元前58~後526年
 ローマがゲルマンを発見し、その後、ゲルマンがローマを圧倒する
第2部
 ゲルマン人によるローマの再生――526~982年
第3部
 ドイツをめぐる闘争の嵐――983~1525年
第4部
 1525年~現在――ドイツは二つの道をたどる