北欧神話入門
ISBN:978-4-487-81680-4
定価2,970円(本体2,700円+税10%)
発売年月日:2024年07月29日
ページ数:384
判型:四六
北欧神話の魅力を知りたいすべての人へ贈る入門書。北欧研究の泰斗が「はじめての人にもわかりやすく」をテーマに遺した遺稿を、日本アイスランド学会(伊藤尽、堀井祐介、松本涼)監修のもと書籍化。
『北欧神話入門』紹介動画(ロングバージョン)
本書出版にあたって
本書は1984年に出版された『北欧神話』(東京書籍刊)をより読みやすく改訂したものです。著者である菅原邦城先生が大阪外国語大学を定年退職後、精力的に改訂版の執筆に取りかかられ、2019年2月に帰らぬ人となられるまでに終章(未完)を残すばかりの段階まで完成していました。同年5月、お世話になった卒業生による偲ぶ会が盛大に開催された後、大阪大学外国語学部の田辺欧教授より本書原稿(遺稿)があることをお聞きしていたもののなかなか動き出せずにいましたが、ようやく2022年になり、年賀状のやりとりをさせていただいていた菅原先生の奥様から連絡をいただき遺稿のデータを受け取りました。個人としては何も出来なかったのですが、菅原先生が設立メンバーのお一人でもあった日本アイスランド学会に協力を依頼したところ、運良く1984年版の『北欧神話』を出版した東京書籍につながることが出来ました。また非常に奇遇なことに1984年版出版当時の東京書籍の編集担当であった倉嶋雅人氏にも協力をお願いできることとなり、今回本書の出版を実現することが出来ました。1984年版は今現在でも日本における北欧神話研究の第一線で十分通用するものですが、それをもとに改訂された本書は、より読みやすい文体と日本アイスランド学会会員監修による図版等の挿入や補筆により日本における北欧神話研究の裾野を広げるものとなっています。
最後に、本書出版に多大なご尽力をいただいた東京書籍の編集スタッフ諸氏、菅原先生の遺志を汲んで本書の原稿整理と補筆をしていただいた倉嶋雅人氏、また、遺稿をご提供いただいた菅原先生のご家族にお礼を申し上げます。
2023年 秋
日本アイスランド学会 堀井祐介
本書編集にあたって
本書のオリジナル原稿は、序章から終章までの7章構成となっています。終章はメモ書きしかなく、菅原先生はここで本格的な比較神話論の展開を構想されていたようです。ただし本文は前作『北欧神話』(東京書籍刊)の改訂版となるべく完全にまとまっていたため、こうして上梓の運びとなりました。
菅原先生が執筆にあたり、ご自身に課した注意点のメモの中に「読者に予備知識を求めない記述を心がける」と書かれていました。その趣旨はよく理解・賛同できるのですが、これが結構難しいのです。なぜなら、北欧神話のテキストにはさまざまなヴァリエーションがあり、同じ物語なのに他のテキストでは出来事のディテールが異なる、同一人物の名前が変わる、個々の物語が入れ子状態になったり別の物語に派生したりするなど全体像がとらえにくい、物語の時間が過去・現在・未来と直線的に進まないなど、初めての読者には内容を理解することが非常に困難だからです。そこで、他の著者・訳者のお仕事や、欧文記事などを参考にして、言葉や説明を足し、表現を一部書き改めています。また、原典の詩(韻文)からの引用・翻訳が多いことが本書の特徴です。長めの引用もあり、各テーマに応じて同じ内容のストーリーが繰り返して引用されている個所もあります。ときに煩雑に思われるかもしれませんが、この繰り返しこそが先生の望まれた「神話の語り」の再現であろうと推察して割愛せずに掲載しました。
北欧神話の世界観は独特であり、その構造を把握することが困難なため、北欧研究の権威である日本アイスランド学会様に監修を仰ぎ、編集部には新たな説明図を作成していただき、視覚資料も多めに掲載するように心がけました。菅原先生のご遺族と東京書籍の橋渡しをしていただいた堀井祐介先生、堀井先生の働きかけでご協力いただけることになりました伊藤尽先生、松本涼先生、また東京書籍のスタッフの方々に深く感謝申
し上げます。どうか天国の菅原先生に喜んでいただけますように。
2024年 早春
倉嶋雅人
コンテンツ
◎北欧と北欧人
◎岩絵(ペトログリフ)
◎地名
◎ルーン資料、刻画石碑
◎二つの『エッダ』
◎『詩のエッダ』
◎『スノッリのエッダ』
第1章 天地創造
◎時のはじまり
◎諸世界の出現と人類の祖先
◎太陽と星、昼と夜
◎中つ国ミズガルズ
◎神つ国アースガルズ
◎巨人族の国、ヨトゥンヘイムとウートガルズ
◎世界樹ユッグドラシル
第2章 諸族の登場
◎巨人族
◎アース神族とヴァン神族
◎ヴァン戦争
◎巨人の匠がアースガルズの城壁を築く
◎運命を定めるノルン
◎豊穣または戦闘の女性神格ディース
◎戦死者たちを選ぶ女性たち、ヴァルキュリャ
◎妖精アールヴ
◎侏儒ドヴェルグ
◎人間
第3章 オージン、ソールとその他の神々
☆オージン
◎オージンの居館
◎オージンの動物
◎オージンの宝物
◎戦いの神、そして死の神オージン
◎知の神オージン
◎オージンの妻子
◎オージンの名に関連して
☆ソール
◎ソールの出自
◎ソールの国と居館
◎ソールの動物と従者
◎ソールの宝物
◎巨人退治に奔走するソール
◎ソールの妻子
◎ソールの名に関連して
☆その他のアースの男神
◎テュール
◎テュールの名について
◎バルドル
◎ヘイムダッル
◎ウッル
◎ブラギ
☆アース女神たち
◎フリッグ
◎サーガ
◎フリーン
◎フッラ
◎シュン
◎グナー
◎シヴ
◎ナンナ
◎イズン
☆ヴァン神族
◎ニョルズ
◎ニョルズとスカジの結婚
◎祭祀王ニョルズ
◎ネルトゥス対ニョルズ
◎フレイ
◎フレイの住まいと付属物
◎フレイが巨人娘の愛を求める
◎フレイヤ
◎フレイヤを欲する巨人や侏儒たち
◎呪術師フレイヤ
◎フレイヤの一位格の女神たち
第4章 神々と巨人の関係
◎巨人と人間の出現
◎ユミル殺害と天地創造、新たな巨人たち
◎シャツィ対神々
◎フルングニル対オージン、フレイヤそしてソール
◎ゲイルレズ父娘対ソール
◎ウートガルザ=ロキ対ソール
☆ロキ
◎神々の中のロキ
◎ロキから神々に渡された宝物
◎ロキは男、女そして第三の性?
◎ロキの子ども︱︱フェンリル狼、ヨルムンガンド(ミズガルズ蛇)、ヘル
◎ミズガルズ蛇とソールの戦い
◎フェンリル狼が体を縛められてテュールの手首を食いちぎること
◎若き神バルドルの夢、死そして葬送
◎オージンのささやき
◎ロキの逃亡と捕縛
第5章 神々の運命《ラグナロク》
◎世界滅亡のはじまり
◎新生世界
◎生き延びた古き神々
◎若き神々と人間
終章 (未完)