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色彩のデザイン図鑑

色彩のデザイン図鑑

ティム・トラヴィス/監修 柏木博/日本版監修 井上雅人・橋本優子/訳

ISBN:978-4-487-81517-3
定価4,180円(本体3,800円+税10%)
発売年月日:2022年03月28日
ページ数:304
判型:B5判上製

解説:
文化とデザインの流れを、色彩から一望する比類なき図鑑が誕生。
英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V & A)コレクションから厳選した作品で解説。
日本版は、デザイン界の泰斗・柏木博による監修。
白、灰、黄、橙色、桃色、赤、紫、青、青緑、緑、茶、黒、12色による色別の章構成。
V&Aが、ヨーロッパ、南北アメリカのみならずアフリカ、中東、東アジアなど世界各地から収集した名作の数々を掲載。

序文 豊かな色の意味を語った魅力的な基本文献

 たとえば、春先の芽吹いたばかりの柔らかな緑の葉はやがて夏にむかって緑を濃くしていく。そして秋には黄や赤に変化していく。複雑で多様な色の変化を、わたしたちは楽しんでいる。川や湖、海にも無数の青を見ることができる。わたしたちを取り囲んでいる自然は夥しい色にあふれている。
 わたしたちは、ものを形や素材とともに色によって捉えている。形は明確だが、色はきわめて感覚的なもので、ときとして曖昧でもある。本書でもふれられているが、科学者のニュートンや文学者・科学者のゲーテなど、古くから多くの人たちが色の問題に好奇心を持ち色を捉えようとした。ニュートンは白色光の構成を発見し心をおどらせた。
 哲学者のルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの最後の仕事は『色彩について』である。彼は、一枚の純白の紙は雪と並べられると、紙が灰色に見えてくる。けれども普通の環境では、それは灰色ではなくやはり白だといった意味のことを述べている。わたしが、白やグレイと言ったとき、それを聞いた人は、はたしてわたしが考えている白やグレイを想起しているとは思えない。それらも豊富なバリエーションを持っているからだ。このことは、色の持つ現象の大きな謎である。
 本書では、白から始まり黒まで全体で12の色をテーマにしている。それぞれの色の持つ微妙な違いを、55色の色見本で示していることは、色の現象の謎を意識してのことだ。
 ところで、色は文化的・民族的・風俗的な意味に結びついてきた。キリスト教では、赤ちゃんが洗礼を受ける時に白い洗礼用のレースの衣服を着せる。そして、結婚の衣裳などことあるたびに白を身につける。日本でも結婚の時に花嫁が白い「打ち掛け」を着る。それは純粋さの意味を持っている。しかし、白はまた悲しみの色として広く使われてきた。中国、インド、韓国そしてアフリカやヨーロッパでは、愛する人の死を意味するものとして白が装われてきた。とはいえ、現在では、ヨーロッパでは黒が喪服として使われている。これは日本でも同様である。
 また、色はその感じから異なった色名を与えられることがある。これは、民族によって異なっている。たとえば青はもっとも一般的な色だが、古代ギリシャでは青は緑のバリエーションのひとつとして分類されていた。日本でも青と緑は明確に区別されない。青々とした山、青竹といった表現が使われるがそれらは青ではなく緑だ。
 冒頭でふれたように、色はわたしたちの自然環境の中にある。したがって、鉱物や土や植物など自然物から色はつくられていた。化学的に合成された色がつくられるようになるのは、19世紀から20世紀にかけてのことだ。したがって、かつては色によってはきわめて高価なものがあり、それが社会的身分を示すものとなっていた。たとえば、青は古くはアズライトやラピスラズリなど高価な鉱物からつくられていた。しかし、やがて安価な植物のインディゴが使われるようになると青はたちまち一般に広がった。軍服やブルージーンズなどである。
 なお、青はキリスト教では神聖な色である。また、ヒンドゥー教の神クリシュナの皮膚の色となっている。インドでは青と黒は置き換えることができる。
 本書は、色の成り立ちを歴史的に記述するのみならず、色に結びついている文化的・民族的、風俗的な興味深いエピソードを紹介している。また、豊富な図版によってそれぞれの色がどのように使われてきたのかを具体的に示している。その多くの図版は、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のコレクションによっていることも特徴的である。
 色を体系的に扱っていると同時に、その意味の広がりと変遷を歴史的に分かりやすく語っており、「色」とは何かを知るためのこれまでにない魅力的な基本文献だといえる。

日本版監修者 柏木博

p6-p7

p136-p137

p66-p67

p72-p73

p220-p221

p228-p229

著者情報

ティム・トラヴィス(ティム・トラヴィス)
Tim Travis ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)キュレーター。
V&Aは芸術とデザイン・工芸を専門分野とした英国・ロンドンの国立博物館。陶磁器、書物、家具、衣装類、ガラス細工、宝石、金属細工、写真、彫刻、織物、絵画、東洋美術・工芸品、舞台美術など、5000年以上に及ぶ世界文明の遺物が蒐集されている。
230万を超える所蔵品の質、内容の豊富さは世界に類例を見ない。本書編者のティム・トラヴィス(Tim Travis)は同館キュレーターで、各章の執筆には同館スタッフから20名が参加している。

著者情報

柏木博(かしわぎひろし)
デザイン評論家。武蔵野美術大学名誉教授、英国王立芸術大学(RCA)名誉フェロー。専攻は近代デザイン史。著書に『デザインの20世紀』(NHK出版、1992年)、『日用品の文化誌』(岩波書店、1999年)、『モダンデザイン批判』(岩波書店、2002年)、『デザインの教科書』講談社、2004年)、『視覚の生命力 イメージの復権』(岩波書店、2017年)など、監修書に『色彩 色材の文化史』( 創元社、2007 年)、『図鑑デザイン全史』(東京書籍、2017年)など、展覧会の監修に「田中一光回顧展」(東京都現代美術館、2003年)、「電脳の夢」(パリ日本文化会館、2003 ~ 2004年)などがある。

著者情報

井上雅人(いのうえまさひと)
武庫川女子大学生活環境学部准教授。服と本のセレクトショップ「コトバトフク」運営スタッフ。東京大学文学部および文化服装学院卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。専攻はデザイン史、ファッション史、物質生活史。著書に『洋服と日本人 国民服というモード』(廣済堂出版、2001年)、『洋裁文化と日本のファッション』(青弓社、2017年)、『ファッションの哲学』(ミネルヴァ書房、2019年)など、訳書に『図鑑デザイン全史』(共訳、東京書籍、2017年)などがある。

著者情報

橋本優子(はしもとゆうこ)
宇都宮美術館専門学芸員。京都工芸繊維大学大学院修士課程修了。専門領域は、近・現代のデザインと建築、デザイン教育。日本フィンランド協会会員、鉄道建築協会会員。著書に『フィンランド・デザインの原点 くらしによりそう芸術』(東京美術、2017年)、『デザイン史を学ぶクリティカル・ワーズ』(共著、フィルムアート社、2006 年)、『ヴェルナー・パントン作品集』( 共著、河出書房新社、2010年)、『DESIGN ふたつの時代 60s vs 00s』(共著、DNP アートコミュニケーションズ、2011年)など、訳書に『図鑑デザイン全史』(共訳、東京書籍、2017年)などがある。

コンテンツ

序文 豊かな色の意味を語った 魅力的な基本文献 柏木博 3
はじめに ティム・トラヴィス 6
白 WHITE 16
灰 GREY 40
黄 YELLOW 66
橙色 ORANGE 88
桃色 PINK 110
赤 RED 132
紫 PURPLE 158
青 BLUE 180
青緑 TURQUOISE 204
緑 GREEN 222
茶 BROWN 246
黒 BLACK 268
Bibliography(参考文献) 292
Picture Credits(図版クレジット)294
執筆者一覧/Acknowledgments(謝辞) 297
索引 298