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フィンセント・ファン・ゴッホの思い出

フィンセント・ファン・ゴッホの思い出
Artist by Artist

ヨー ファン・ゴッホ=ボンゲル/著 林 卓行/監訳 吉川真理子/訳

ISBN:978-4-487-81324-7
定価1,430円(本体1,300円+税10%)
発売年月日:2020年01月25日
ページ数:216
判型:A6変型判

解説:
美術史上の巨匠を同時代の人物が描く、ハンディにして骨太の伝記シリーズ刊行開始。

第1作は、『ひまわり』など多くの傑作と数々の伝説を残した孤高の天才画家ファン・ゴッホ。
彼の画業と生活を支えた弟、画商テオの妻であるヨーが、義兄フィンセントのあまりにも人間的な生涯を描く。

『ひまわり』『自画像』『タンギー爺さん』など、代表作をオールカラーで多数掲載。

はじめに 「ありふれた画家」としてのファン・ゴッホ

無数にいる芸術家たちのなかで、フィンセント・ファン・ゴッホほどその生涯をよく知られた者はないだろう。
生前に売れた絵はわずか数点とか、激昂して自分の耳を切り取ったとか、ついにはピストルで自分自身を撃ったとか、驚くようなエピソードにはこと欠かない。
だがそうしたエピソードを、等身大のゴッホにじっさいに会った人間によるひとつの「語り」を通じて、あらためて読みなおしてみるとどうか。
画家の伝記としてはすでに古典であり、のちに多くの「ゴッホ物語」が依拠することになる「ヨー」・ボンゲルによる『フィンセント・ファン・ゴッホの思い出(以下、『思い出』)』をいま、読むとはそういうことだ。
画家の義理の妹だったヨーは、義兄の死後、彼の遺した膨大な書簡の山に埋もれながら、そしてその遺族との親密な対話を重ねながら、そのひととなりを時系列に沿って紡ぎ出した。
それはすでに多少の脚色は帯びているとしても(その事情は本書所収のゲイフォードによる解説に詳しい)、今日のセンセーショナリズムに侵された「事件」の連呼からはほど遠い、ひとりの芸術家の生涯を実直に追ったものになっている。
なるほど「耳切り」も「銃撃」も、たしかにそれだけをとれば衝撃的な(そして好奇心をそそる)「事件」だろう。
だがそれらをひとりの芸術家の生涯のうちにひとつひとつ位置づけてみれば、数々の事件は意外にも画家の生涯のうちにおさまってなじむのであり、その背景やそのときの画家や周囲の人々の心情は、遠く時代と場所をへだてた私たちにもじゅうぶんリアルに想像できるものになってくる。
ゴッホもまた、ただ自身の才能を信じたり疑ったりしながら描き続けた、その意味ではいまもむかしも「ありふれた」芸術家のひとりだった。
たしかに自身の極端な性向や、そこから生じるひとびととの軋轢には苦しんだけれど、家族、とくに弟には愛され、数こそ多くはなかったものの友人や協力者にも恵まれた。
つまり、いまこの『思い出』を読むことで、私たちはゴッホを特別な芸術家にしているのはその作品なのだという、ある種の原点にたちかえることができる。
そして幸いなことに本書には、『思い出』に登場する作品の精細な図版が、本文の進行に併せて配されている。
ぜひ、迷いながらも強い意志が支えたその画業と、画家のこころの変転のふたつを同期させるようにして、本書を読んでいただけたらと思う。
そのときゴッホの作品と生涯は、どちらもいっそう胸に迫るものとなるはずだ。

監訳者 林卓行 東京藝術大学准教授

目次

代表的な作品も多数収録

書き出し

ローヌ川の星月夜

ひまわり

カラスのいる麦畑

著者情報

ヨー ファン・ゴッホ=ボンゲル

著者情報

林 卓行(はやし たかゆき)
東京藝術大学芸術学科准教授。美術批評、美術理論研究。1969年生まれ。東京藝術大学卒業後、同大学院博士後期課程単位取得退学。専攻は20世紀後半のアメリカを中心とする現代美術研究。
主な著書に『ウォーホル 西洋絵画の巨匠9』(2006、小学館)、共訳書に『ART SINCE 1900 図鑑1900年以後の芸術』(2019)、監訳書に『ミケランジェロ・ブオナローティの生涯』(2020、以上、東京書籍)などがある。

著者情報

吉川真理子(よしかわまりこ)