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iPS細胞の歩みと挑戦

iPS細胞の歩みと挑戦

京都大学iPS細胞研究所 国際広報室/編 中内彩香、和田濵裕之/著

ISBN:978-4-487-81301-8
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
発売年月日:2020年05月18日
ページ数:176頁
判型:A5判

解説:
京都大学iPS細胞研究所 [所長・山中伸弥] 設立10周年記念出版

人類の運命を左右するiPS細胞
iPS細胞はいかに誕生し、
未来をどう変えていくのか

まだ見ぬ生命の謎を解き明かすため、
新たな治療法を世に送り出すため、
研究者の挑戦はつづく

はじめに

 「まだ1人の患者さんも救っていない。だから、生理学としての業績を評価していただいての受賞だと思っている。」
 iPS細胞の生みの親である山中伸弥は、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したときにこのように語りました。
 iPS細胞が開発されてから、その医療応用が大きく期待されてきました。世界中の多くの研究者らのたゆまぬ努力により、「開発当初の予想をはるかに上回るスピード」(山中)でiPS細胞研究が進んでおり、難病を含む複数の病気において新規治療法の安全性や有効性が臨床研究・治験で検討されています。患者さんへ広く用いられる治療法の確立にはまだ詳細な検討や乗り越えるべき課題があるものの、その実現が現実味を帯びてきました。
 iPS細胞は生命科学の可能性をも大きく切り拓こうとしています。私たちの体はどのようにできてきたのか、細胞の運命がどう制御されるのか、あるいは制御できるのか、地上から姿を消そうとしている絶滅危惧種を救えるのか、人類の歴史において何がネアンデルタール人と私たちの運命を分けたのか――。iPS細胞というツールを手に入れた研究者は、ベールに包まれた生命の謎をどのように解き明かしていくのでしょう。これまで予想だにしていなかったことが数十年後の「常識」になっているかもしれません。
 同時に、研究者だけではなく、社会のみんなで答えていくべき問いもあります。新たな生命科学技術は、往々にして倫理的な課題を私たちに突きつけます。iPS細胞技術についても例外ではなく、その能力がゆえに研究の進め方や使い方などに慎重な検討とルール作りが求められます。どのようにiPS細胞を活用して、バランスよくそのメリットを享受しながら望ましい社会を実現したいのか。それを考えるのは研究者に限らず、その社会に生きる私たちです。
 本書ではiPS細胞開発から現在の研究までを概観すると同時に、研究成果が患者さんに治療として届けられるまでや倫理的課題など、「社会の文脈におけるiPS細胞技術」という側面もご紹介できるよう努めました。本書が、iPS細胞技術の「今」を捉え、冷静な目と温かい心でその未来に思いを馳せる、一つのきっかけとなれば望外の喜びです。

2020年3月16日
京都大学iPS細胞研究所
中内 彩香

著者情報

京都大学iPS細胞研究所 国際広報室(きょうとだいがくあいぴーえすさいぼうけんきゅうじょこくさいこうほうしつ)

著者情報

中内彩香(なかうちあやか)

著者情報

和田濵裕之(わだはまひろゆき)

コンテンツ

〈本書の主な内容〉
プロローグ iPS細胞前史
第Ⅰ章  iPS細胞の誕生 
 1 誕生秘話
 2 iPS細胞とは?
第Ⅱ章 再生医療と iPS細胞ストック
 1 将来の医療を目指した研究
 2 再生医療用のiPS細胞のストック
第Ⅲ章 病気のしくみの解明と創薬
 1 人類の歴史、薬の歴史
 2 iPS細胞と創薬
第Ⅳ章 iPS細胞を使った基礎研究
第Ⅴ章 iPS細胞技術を患者さんに届けるために
 1 iPS細胞の知的財産
 2 iPS細胞技術が医療現場に届くまで
第Ⅵ章 iPS細胞技術が社会に根付くために
第Ⅶ章 CiRAの想い