制作担当の宮下さん(左)と開発担当の堤さん(右)
2026.10.20
令和9年度より全国学力・学習状況調査がCBT(Computer Based Testing)形式で全面実施される方針を受け、学校現場のデジタル化とネットワーク環境の移行はいま、急速に進んでいます。しかし、インフラの整備状況や児童生徒の発達段階は自治体や学校によって千差万別。こうした過渡期において、学校現場はどのように学力調査を捉え、活用していくべきなのでしょうか。
「標準学力調査」の問題制作に携わる宮下桃子さんと、システム開発・運用を担当する堤直樹さんに、教科書発行会社ならではの学校に寄り添った工夫と想いについてお話を伺いました。
宮下さん(以下:宮下):「標準学力調査」は、全国の多くの自治体や学校で長年にわたり採用されている信頼性の高い学力調査です。小学校・中学校の国語、社会、算数・数学、理科、英語の5教科について『1学期版』、『3学期版』をそれぞれ用意しています。
堤さん(以下:堤):実施の形態も、問題用紙で実施する『PBT(Paper Based Testing)』と、1人1台端末を活用する『CBT(Computer Based Testing)』の2種類に対応しています。このように、必要な教科や学年、実施の時期や形態まで状況に応じて選択することができる点は「標準学力調査」の大きな特長です。
宮下:先生目線では、1学期版は「前年度までの学習の定着度」を測り、その年度の授業改善に活かすためのもので、3学期版は「その1年間の教育指導の効果」を測定するというためのものという違いがあるといえます。特に、3学期版は「年度内に結果が返却される」ため、担任の先生が子どもたちの苦手な部分の補習や復習をしっかりと見届けて次の学年に送り出せるという点において、先生方からご好評いただいています。
宮下:実は、東京書籍における教科書づくりは、編集部だけではなく、全国の支社にいる営業部員やデジタル教科書の制作部員、そして学力調査を制作する私たちと連携して進められています。学力調査から得られた何万人、何十万人という子どもたちのつまずきの統計データなどを分析し、教科書やデジタル教材でそのつまずきポイントを手厚くフォローする記述を増やす、といったように、教科書改訂やデジタル教材の開発にもつながっています。
宮下:各教科の学習内容や学習指導要領を深く理解しているからこそ、本質的な問題を出題できます。さらに、調査結果から見えてきたデータは「つまずきやすいポイント」として日々の授業改善に役立てられるよう、情報誌にまとめ、定期的に全国の学校と先生にお届けしています。
堤:東京書籍には全国各地に支社があり、日頃から学校の先生や教育委員会の方々とやり取りしているため、学校の状況をよく知っている営業部員が数多くいます。学力調査の事前相談から受検中のトラブル対応・アフターフォローにいたるまで、おなじみの担当者がしっかりと伴走する安心感が、多くの自治体様から高い評価と採用をいただく決め手になっています。
教科書発行会社ならではの質の高い問題が出題されます。
堤:それぞれに教育的メリットがあるため、学校や子どもたちの実態に合わせて最適なものを選択していただきたいと考えているからです。学校や自治体のインフラ設備、予算、そして子どもたちの発達段階に合わせて選択いただけるよう、PBTとCBTの両方を提供できる体制をとっています。両方をオリジナル商品として全国展開しているのは他社を見渡しても極めて少ないんですよ。
宮下:PBTの特長は、「書くこと」を通じた学力の測定が可能なことです。算数の「作図」や、国語の「作文」のように、自分の手で書いたり、思考のプロセスを表現させたりする問題は、PBTだからこその領域だと思います。また、問題用紙と鉛筆で実施できるというのもポイントです。CBTの場合には問題を解く以前に、端末操作に不慣れなことを理由に、本来の学力を正確に測定できないという課題が生じます。もちろん『標準学力調査CBT』では端末操作に習熟するための仕組みも用意していますので安心してご実施いただけます。実際に先生方にお話を伺っても、「低学年は問題用紙でじっくり取り組ませたい」というニーズがあるのが現状です。
宮下:「動画や音声を用いた問題が出題できる」ことが挙げられます。どのような力を問いたいのかにもよりますが、たとえば算数の問題で、問題文が長くて場面が理解できず、本来は計算ができるのに諦めてしまうような子どもがいたとして、動画を見ることで問題に取り組む手助けができるんです。
堤:実は、PBTよりもCBTのほうが無解答率が低いという結果が出ているというお話を伺うことがあります。実際にCBTをご採用いただいている自治体様からは「紙だと問題を見た瞬間諦めていたような子どもたちが、CBTの画面だと最後まで関心を持って解き進めてくれた」というお声をいただいています。
堤:1つは「結果返却のはやさ」ですね。CBTでは解答したデータを自動採点するため、終了直後には速報値を確認できます。記述式の問題がある場合でも、約10日前後という短期間で集計データを返却可能です。続いて「アクセシビリティへの配慮」も非常に容易です。画面上で「総ルビ」や「分かち書き」の表示に切り替える機能が備わっています。PBTでは個別に問題用紙を印刷するなどの負荷がかかっていた合理的配慮を、ボタン一つで実現できるため、先生方の負担軽減にもつながっています。
堤:おっしゃる通り、先生方からのお問い合わせの多くは「準備の手間」と「接続トラブル」についてです。これらの不安を払拭するため、準備と運用をとにかくシンプルにしました。実は、事前準備として学校側で先生が行う作業は、東京書籍の各種サービスの共通IDである「total ID」を登録するだけなんです。
堤:他のCBTサービスの場合、先生方が子どもたち一人ひとりにテストを割り当てて配信する設定作業が発生しますが、「標準学力調査 CBT」では、問題の配信はすべて東京書籍側で一括して行います。そのため、先生は子どもたちに「total ID」を配付してログインさせるだけですぐに開始できます。
宮下:さらに「先生方の準備の手間を少しでも減らしたい」という想いから生まれたサービスとして、CBTで使用するイヤホンもオプションとしてご注文いただける仕組みを設けています。
堤:事前に実施していただく『ウォーミングアップ問題』です。本番と同じシステムを使って、ログインからキーボードでの文字や数式の入力、動画の再生、ドラッグ&ドロップといったCBT特有の操作を、子どもたちが練習できます。同時に、端末やネットワーク環境に起因するトラブルを事前に把握することができ、本番当日の実施トラブルを防ぐことができるんです。このように事前の準備・確認がしっかりできるサポート体制によってCBT導入の検討がしやすくなっているのではないかと思います。
ウォーミングアップ問題で、動作確認と解答練習を同時に行えます。
堤:学力調査の結果は、PBT・CBTのいずれも「マイアセス」というオンラインで提供するサポートシステムでご確認いただけます。先生向けの「学校カルテ」「子どもカルテ」では、学校やクラス、子ども一人ひとりの結果を閲覧できます。また、子ども自身が利用できる「マイカルテ」では、「自分の苦手な点がどこか」を直感的に把握できるように工夫しています。
堤:PBTの場合は手元の問題用紙で解き直すことができます。CBTの場合は、問題は非公開としていますが、先生のアカウントに限り、受検後の一定期間のみ「マイアセス」で閲覧できます。電子黒板やプロジェクターに問題を映し出すことで、クラス全体での学習や一斉の解き直し授業などにご活用いただけます。
堤:PBT・CBTいずれの受検でも、紙とデジタルの「フォローアップドリル」を無償でご利用いただけます。「マイアセス」の中には、マンガ形式の「使い方ガイド」をご用意していますので、ログインの仕方から、まずはどの問題から解き直せばいいのかまで、子どもたち自身が自然に自走して復習に取り組めるような支援にもこだわっています。また、有償になりますが、同じく東京書籍で発行しているデジタルドリル教材の『タブドリLive!』と「マイアセス」を連携させることで、つまずいた問題に応じた最適な復習ドリルが自動で出題されるので、さらに手厚いフォローもご提供できます。
マイアセス上で結果や現状、苦手な部分を直感的に確認できます。
マンガ形式のガイドで子どもの自学自習をサポートします。
宮下:「標準学力調査」は、学習内容を網羅的に出題するため、子どもたちが「どこでつまずいているのか」を正確に把握できます。そして、これまでお話ししてきた通り、結果の分析から復習まで、すべての学習サポートツールがパッケージ化されています。先生方の負担を減らしながら、子どもたち一人ひとりに最適化された学習教材を提供できますので、ぜひ「次の学びを豊かにするための羅針盤」として、ご活用いただければうれしいです。
堤:長年の歴史に裏打ちされた「質の高い問題」と、先生方に最後まで寄り添う「サポート力」こそが、私たちの「強み」であり、教科書発行会社としての「責任」でもあると考えています。私たちのシステムやサービスは、常に学校の先生の負担軽減と子どもたちの学力向上を最優先にアップデートし続けています。これからも先生方、そして子どもたちに寄り添い、確かな学力向上をサポートする存在であり続けたいと思っています。
質の高い「問題」と、最先端の「システム」、そして学校を支える「人の力」。この3つがそろっていることこそが、教科書発行会社ならではの総合力であり、安心の理由なのだと納得しました。