ICT サポート情報 【実践事例】マイアセスの結果データが導く「指導の変容」と「学力向上」 ~誠之中学校の組織的・横断的なデータ活用の取り組み~
サポート情報

 広島県福山市立誠之中学校では、実施した学力調査のデータを単なる「結果の確認」で終わらせず、日々の授業改善や学力向上へ確実に繋げるため、先進的なデータ活用を組織的に実践しています。
 マイアセスを通したデータ分析から見出された結果を、確かな「指導の変容」へと繋げている同校の具体的な取り組みについて紹介します。

■ マイアセスへのアクセスを日常の動線に組み込む、職員朝礼シートの工夫

デジタルデータは「いつでも見られる」からこそ、意識しないと形骸化してしまいがちと、教務主任の伊藤教諭は語ります。

そこで誠之中学校では、全教員が毎朝必ず開く「職員朝礼シート(Google スプレッドシート)」に、マイアセスやタブドリLive!など採用しているシステムのURLを常設しています。わざわざ共有ドライブの奥深くにあるフォルダやリンクを探しに行かなくても、毎朝の業務の動線上でワンクリックすればシステムにアクセスできる環境です。これにより、各教科の研修時や日々の授業への反映を考える際にも、先生方が自然とデータに触れるサイクルが生まれています。

■ マイアセスで特に注目すべき画面、「人数比」と「問題詳細」

同校で特によく注目して見られているのは、生徒たちの学力ステップ※ごとの割合を示した「ステップ別人数比」の画面です。全国値や福山市全体の平均値が示され、「自校はどのステップに生徒が偏っているか、どこが全国や市と比べて少ないのか」が一目で浮き彫りになります。
※調査の種別によっては、「評定」や「レベル」といった言葉になります。

マイアセス「ステップ別人数比」画面。※サンプル

マイアセス「ステップ別人数比」画面。※サンプル

さらに、一歩踏み込んだ分析として、同校では「問題詳細」の画面もよく見られています。単に正答率等の数字を追うだけでなく、子どもたちが実際に記述問題でどのような回答をしたのか、誤答のリアルな中身までを画面上で確認することができます。

マイアセス「問題詳細」画面。※サンプル

マイアセス「問題詳細」画面。※サンプル

マイアセス上だけでなく、標準学力調査の結果資料として郵送されるもののうち、SP表データも参考にされています。これらの結果データは、自分たちが見たい視点に合わせて自在にカスタムできることが最大のメリットだと教務主任の伊藤教諭は語ります。

カスタムされた資料。※個人情報は抜いております

カスタムされた資料。※個人情報は抜いております

■ 東京書籍のサポート体制

東京書籍では、学力調査や質問調査の実施後、必要に応じて担当社員が事後研修会を実施します。同校においても担当社員の事後研修会を校内研修として設定することで、教科の枠を超えて「いま学校全体として、子どもたちにどんな力が不足しているのか」を全教員が共通認識として把握するなど、組織力の強化に繋がっています。

また、その性質上調査結果は時に膨大になります。担当社員からお渡しする分析資料はその膨大な結果資料の要点になるため、忙しい学校現場において結果分析の一助となっています。

担当社員の事後研修会資料。学習指導要領や問題の内容、領域がセットで記載されているため、授業改善に繋げやすい。

担当社員の事後研修会資料。学習指導要領や問題の内容、領域がセットで記載されているため、授業改善に繋げやすい。

■ マイアセスの結果を活かす、学力向上への組織的な取り組み ~福山市の「授業づくりポートフォリオ」~

同校では、調査結果が出るとまずは教務主任がデータを精査し、それぞれの課題を明確にした上で各教科の担当へ下していく体制をとっています。そのうえで、教務主任が授業改善など全体の進捗管理や活用状況の確認を行うという組織的な体制作りがされています。

加えて、福山市全体で学力向上に向けた共通の取り組みとして「授業づくりポートフォリオ」の作成が行われています。これは、目指すべきターゲット層や、その層に向けた具体的な指導方針を1枚のシートにまとめるものです。昨年度までは国語と数学に特化して先行スタートしていましたが、確かな手応えがあったため、今年度から全教科へと取り組みを拡大しました。

「授業づくりポートフォリオ」の一例。

「授業づくりポートフォリオ」の一例。

この「授業づくりポートフォリオ」を作る際のベースが、マイアセスの結果データです。マイアセスの度数分布などの分析から、同校には、「中位層が薄く、高学力層と低学力層に学力が二極化している」という明確な課題があることがわかりました。そのため、単に全体の平均点を見るのではなく、「どの層を引き上げれば、二極化が解消されて綺麗な分布になるか」を教員間で話し合い、「今年度はこの層をターゲットにしよう」という校内での共通目標を明確にしています。この目標は校内共通でもあり、個々のクラスごとにどの児童生徒をターゲットにするか、どの問題をターゲットにするかも決めます。一人ひとりの教員自身の指導方針が校内の他の教員からも見える化され、学校全体でブレのない組織的な指導が可能になっています。

■ 学力調査の結果を指導の変容につなげる ~国語科・数学科の実践事例~

国語科の事例-国語:坂本繁幸 教論

分析の結果、「読む力」の中でも特に「登場人物の心情を読み取る」という設問に、大きな課題があることが分かりました。心情を読み解くアプローチには、文章中の直接的な言葉だけでなく、心理描写や場面の描写、登場人物同士の関係性から捉えるものなど多様な視点が必要です。

そこで、読み解くアプローチを教材ごとにどれか一つに絞り込み、読み取る方法を明確にするという授業の変容を行いました。また、生徒たち自身に登場人物の心情の推移を視覚化させる「心情グラフ」を作らせるなどの工夫を徹底しました。1年間ブレずに指導を続けた結果、生徒たちの読み取りに迷いがなくなり、読解力に目に見える改善が見られました。

「心情グラフ」の一例。

「心情グラフ」の一例。

数学科の事例-数学:杉野公祐 教論

昨年度の数学科は、校区全体で分数の計算に課題があることがわかったので、帯学習の時間を使って計算問題に慣れることに徹底して取り組みました。

今年度は、i-checkや標準学力調査、生徒アンケートなど複数調査のクロス集計から明らかになった、「家庭学習の時間の少なさ」という課題に取り組んでいます。日々の授業の復習にあたるプリントを、毎週1枚、家庭学習の宿題として配ることを徹底しています。そして、毎週の週の終わりか週の初めに、そのプリントと全く同じ内容から出題する「小テスト」を必ず実施するようにしています。また、この取り組みは教科で偏りが出ないように、数学科以外の教科でも広く行われています。

プリントと小テストの組み合わせの一例。

プリントと小テストの組み合わせの一例。

まだ始めて間もないですが、家で配られた復習プリントをやって小テストに備えようという意識が芽生え、家庭学習に向かう生徒の姿が明らかに増えました。これまで数学に苦手意識を持っていた生徒も、家でプリントをやっておけば小テストで満点や高得点が取れます。この小さな成功体験の積み重ねの結果、日々の学習に対する生徒たちの態度や意欲は、昨年と比べても確実に向上してきているという手応えがあります。

現在は、自作プリントでこのサイクルを回していますが、学習内容が本格化してくるこれからは、タブドリLive!等も活用して自動で小テストを作成するなど、教員の負担を軽減するためのシステム活用を積極的にやっていく予定です。

「何となく手探り」ではなく、データから明らかになったことを元に指導改善に繋げている点、個々の教員独自の取り組みではなく、教科横断や全学年縦断など組織的な取り組みに昇華している点が、同校の確かな結果に繋がっています。

■ 9年間を見据えた小中連携の取り組み

さらに同校では、昨年度から国語と数学を中心に「校区内の小中連携」を本格化させています。

中学校1年生・2年生の授業であっても、生徒がつまずいている根本的な原因を誤答分析などから探っていくと、小学校5年生の分数など、数年前の学習段階に原因があることが見えてきます。標準学力調査の結果データを参照しながら、必要に応じて小学校の先生に丁寧な指導を依頼し、校区内で共通認識を持つことを意識しています。

また、校区内の小学校と中学校の先生同士でお互いの授業を見合ったり、夏休みには一堂に会して合同で教材研究を行う研修会を重ねています。子どもたちの学力向上という目標に校区内の教員が一丸となり、9年間を通じて子どもたちを同じ教育方針・同じアプローチで見守り、育てていくことに取り組んでいます。

特に同校の生徒たちは休憩時間に自発的に競い合ってタブドリLive!に取り組んでいます。小学校時代から使い慣れているデジタルツールだからこそ、中学校進学後の学習にもギャップを感じることなく、スムーズな活用につながっています。校区内の小中学校で同じシステムを使い続けることのメリットが感じられています。

 マイアセスから得られるデータを単なる「数字の記録」にとどめず、教科の枠を超えた課題の共有、さらには校区内の小学校までをも巻き込んだ「9年間の教育アプローチ」へと昇華させている誠之中学校。
 データが浮き彫りにする課題に組織的に向き合い、確実にPDCAを回していく同校の実践で、子どもたちの確かな学びの充実と学力向上が期待されます。

2026年5月
※所属や役職は執筆時のものです

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