毎朝のすき間時間を活用した学習の土台づくりと、教員の負担を最小限に抑えた「1行の授業改善プラン」を軸に、学校全体で「自ら学ぶ」自由進度学習にも取り組んでいます。
校長の伴走のもと、子どもたちと先生方がともに学ぶことを楽しむ風土が醸成され、全国学力・学習状況調査のスコアが上昇するといった効果もみられています。
■ 学力の土台と規範意識を整える「コグトレオンライン」
須崎小学校では、児童が学習に向かうための前段階、すなわち「認知機能(学習の土台)」を整えることを重視し、朝の10分間学習の時間に「コグトレオンライン」を実施しています。
限られた時間を無駄にしないため、「登校したら荷物整理よりも先に端末を開き、即座にトレーニングを始める」というルールを徹底しました。遅刻した児童であっても瞬時に学習へ向かうこの「切り替え」により、クラス全体が朝から集中モードに入る風土が生まれました。また、紙からデジタルへ移行したことで児童の意欲は格段に向上しました。「『コグトレオンライン』の時間を減らしたくない」という思いから遅刻防止にもつながっているほか、テスト後のすき間時間にも取り組むなど、「やらされる学習」ではなく「自ら進んで楽しむ学習」としてすっかり定着しています。
山﨑校長は、「標準学力調査の点数には直接見えにくい部分だが、問題の意味を理解し、学習に入るための『認知の基盤』を支えるツールとして、『コグトレオンライン』は非常に有効である」と語ります。
コグトレオンライン取り組みの様子
■ データは「授業改善」のためにある。標準学力調査分析と「1行プラン」
須崎小学校では、標準学力調査のデータを「教師の授業改善」に直結させています。調査結果が返却されたその日のうちに全学年・全教科の分析会を実施し、先生の授業の「何が足りなかったのか」を明確にします。しかし、ここで教員に複雑なレポートを課すことはしません。国語・算数において、それぞれ「5つの具体的な改善アクション」を1行ずつ(計10行)にまとめ、「授業改善プラン」としてラミネート加工し、各教室の教卓に貼り出しています。
● 改善例(国語): 「授業中、常に段落を意識させる」
● 改善例(算数): 「⽂章題では、必ず数直線を図⽰させる」
このシンプルな「1行プラン」をもとに、校長と研究主任が定期的に授業を巡回(定点チェック)し、実践できているかを確認します。大量の文章を書く負担を減らし、「5点だけを確実に行う」ことで、教員の働き方改革と授業改善を見事に両立させています。
各教室に掲示されている「授業改善プラン」
■ 「規律」から 「Make “IT” Fun」へ。自由進度学習への挑戦
学校改革は、段階を踏んで進められました。着任当時は規範意識に課題があり、放課後のトラブルもありました。そのため着任1年目の1学期は「チャイムと同時に席に着く」「廊下を走らない」「鉛筆を削ってくる」といった当たり前の「規律」を徹底しました。
規律が整った2学期からは、山﨑校長は須崎市の教育変革ビジョン「Make “IT” Fun(教えるから、自ら学ぶへ)」への転換を目指し、授業を劇的に変える必要があると考えました。自ら授業を行い、授業レポートを作成し、職員の机に置いて教員間での授業の工夫や改善策について対話を生み出すことで、複線型・自由進度学習への挑戦をスタートさせました。
山﨑校長は、「先行きが見通せることで教員の納得感が高まり、6年生の担任を皮切りに、次々と他の学年でも『うちもやってみたい!』と自発的に自由進度学習に取り組む教員が増えていった」と話します。
須崎市教育変革ビジョン
教員自身が授業を楽しみ、「この授業すごい!」と互いに称賛し合い、見学し合う文化(自発的な校内公開授業)が根付いたことが、学校全体の推進力となりました。
また、あらかじめ「3年間のロードマップ(1年目は準備、2年目は単元内自由進度学習、3年目はAI活用)」を全教員に提示することで、教員が先を見通して準備する風土が醸成されました。その結果、2年目には全国学力・学習状況調査のスコアが向上し、教員は「自分たちの取り組みが正しい」というエビデンスと自信を得ることができました。
■ 改革を支えた校長の伴走と、これからの学校づくり
山﨑校長は着任時に現状を踏まえた「3年間のロードマップ」を示し、一方的な指示ではなく「教員が力を発揮できる環境づくり」に注力しました。校長自らが猛勉強して相談に乗り、時には授業も実践して見せる「ともに学ぶ姿勢」が、教員の不安を払拭し、前向きな協力を引き出しました。
また、学校の新しい方針は担任越しではなく、毎月の児童集会で校長自らが全校児童へ直接伝えました。校長の言葉で直接語りかけることで、学校全体で迅速かつ正確な共通理解を実現しました。
一連の取り組みを経て、山﨑校長は「子どもたちと先生方が、ともに学習を心から楽しんでいることが本校最高の自慢である」と語ります。「管理職が知恵を絞り、教員と協力して『学習を楽しめる状態』を作ることが、劇的な学力向上などの成果につながると確信している」とも話します。「コグトレオンライン」で学習の土台を築き、データで的確に授業を改善し、何より「学ぶ楽しさ」を追求する同校の実践は、これからの新しい学校づくりの大きなヒントとなるはずです。
授業レポート
【執筆:東京書籍四国支社】2026年8月
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです
