本事例の最大の特長は、全てをデジタルで行うのではなく、紙にかいたり身体を動かしたりする「実活動(リアル)」を主軸に置きつつ、コグトレオンラインを「教員の業務効率化」と「生徒の自己理解促進」のためのサブツールとして並行活用している点です。
メリハリのある運用で生徒の学習意欲を持続させながら、確かな成果を上げている同校の導入事例を紹介します。
朝の15分間の学習時間でコグトレオンラインに取り組む様子
■ 導入の背景と経緯:教育委員会での知見を現場へ
令和3年(2021年)冬、当時新居浜市教育委員会事務局発達支援課の指導主幹だった 越智先生(現校長)は、四国コグトレ研究会が主催する研修会に参加。学校現場でのコグトレの有効性を強く認識しました。そこで、令和4年(2022年)より市内小・中学校全教職員を対象に「コグトレ研修会」を継続的に開催。教育委員会として児童生徒の学習基盤や身体面・社会面を鍛えるサポートを推進してきました。
そして、令和7年度に着任した船木中学校においてもコグトレを教育活動として導入しました。導入にあたっては、まず校内においてコグトレの必要性の再確認とコグトレオンラインの有効性について説明を行い、「まずはやらせてみる!」ということで教員の理解と操作への不安を解消したそうです。約半年という十分な準備期間を経た上で、2学期から全生徒での本格導入という、スムーズな段階的アプローチを行いました。
■ 日々の運用ルール:あえて「毎日やらない」メリハリ
船木中学校では、朝の15分間の学習時間を活用してコグトレを実施していますが、「毎日取り組む」ことはしていません。
● 月・金曜: 読書
● 火・水曜: コグトレの実施
● 木曜: デジタルドリルの利用
このように、あえて曜日ごとに活動を分けることで、毎日の反復による疲弊を防ぎ、メリハリをつけて継続的に取り組むことに主眼を置いているそうです。
■ 最大の工夫:マンネリを防ぐ「実活動(リアル)」と「オンライン」の使い分け
長期間(1〜2年)にわたって学習支援ツールを継続して利用する上で、中学校という発達段階において避けて通れないのが「生徒の飽きや慣れ(マンネリ化)」。船木中学校では、「実活動(リアル)」と「オンライン」を意図的に掛け合わせるハイブリッド運用によって、この課題を解決しています。
①実活動(リアル):身体機能と「書く力」の育成
コグトレの学習の流れ
コグトレ棒を使ったトレーニング
船木中学校が主軸に据えているのは、五感を使った「実活動(リアル)」です。コグトレオンラインでの認知機能強化トレーニングだけでなく、「コグトレ棒」などを用いて実際に身体を動かす協調運動や、紙媒体に直接かき込む活動を非常に重視しています。
特に、鉛筆を持って手を動かし、空間を意識しながら紙にかく作業は、視覚と運動を連動させるため、生徒の「かく力」の向上に直結していると越智校長先生は話します。画面のタップだけでは得られない「物理的な手応え」が、子どもたちへの良い刺激となっているようです。
②コグトレオンライン:自分のペースで進める個別最適な環境
一方のコグトレオンラインは、実活動を補完する「導入的・スポット的なツール」として位置づけています。 デジタルの最大の強みは、即座にフィードバック(丸付け)が得られ、周りの目を気にすることなく「生徒自身が自分のペースで進められる」点にあります。コグトレオンラインを利用することで、一人ひとりに合った個別最適なトレーニング環境を整えているそうです。
コグトレオンライン
■ 導入がもたらしたメリット:教員の「負担軽減」と生徒の「深い気づき」
コグトレオンラインの導入は、学校現場にニつの大きなメリットをもたらしたと越智校長先生は話します。
・教員の負担軽減(持続可能性の確保)
紙媒体での記号さがし
コグトレオンラインでの記号さがし
一つ目のメリットは、教員の負担軽減です。紙媒体の学習には、事前の印刷や配付、実施後の回収・フィードバックといった業務が必ず発生します。しかし、コグトレオンラインは端末を開くだけで済むため、準備や採点の手間が一切かかりません。
実活動(リアル)と並行して進める上で、準備が不要なコグトレオンラインの存在は、教員の業務負担を軽減する大きな支えとなっているそうです。「負担が少ないからこそ日常的に継続できるという、学校全体の働き方改革の視点からも重要な役割を担っています」と越智校長先生は話してくださいました。
・生徒の「自己理解(メタ認知)」の促進
コグトレオンラインを活用するもう一つの大きなメリットは、データの可視化による、生徒の「自己理解(メタ認知)」の促進です。システム上に蓄積されたデータから、生徒は「自分は図形を把握するのは得意だが、記憶するのは少し苦手」といった、自分の特性(強みや課題)を客観的に把握できるようになったそうです。
漠然と「勉強が苦手」と思い込むのではなく、自分の得意・不得意の傾向に気付く(メタ認知能力が高まる)ことは、生徒自身の自己肯定感を育み、「ではどうすればいいか」という主体的な学習姿勢へと繋がっていきます。
紙や身体を使った「実活動(リアル)」で身体機能と認知の土台をじっくりと築き、「コグトレオンライン」で教員の業務負担を減らしながら生徒の自己理解を引き出す。船木中学校が目指す最適化されたこのコグトレの活用法は、デジタルとアナログのよさを最大限に引き出す有効な活用モデルの一つといえそうです。
※なお、同校区には校長を兼務している「ひびき分校」(児童自立支援施設内に併設)があり、そこにおいても週1回、実活動(リアル)によるコグトレを導入し、認知機能の強化に取り組んでいます。
【執筆:東京書籍四国支社】2026年7月
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです
