■ 「きほんの時間」:15分で「できた!」を積み重ねる
教室に足を踏み入れると、昼食後の15分間に設定された帯学習「きほんの時間」が始まりました。扱う内容は漢字や計算、外国語など多岐にわたるとのことですが、この日は標準学力調査で正答率が低かった小4算数の「折れ線グラフの読み取り」に焦点が当てられていました。
4年生の「きほんの時間」の様子(昼)
井村先生が用意したのは、標準学力調査小4算数の問題の類題である、2つの都市の気温変化を比較して記述する問題(下記参照)。先生お手製のプリントは、1問目を朝自習の時間に解き、昼の「きほんの時間」に先生が解説した後で、ほんの少し難易度を上げた2問目に取り組めるような構成になっていました。昼の「きほんの時間」が始まり、1問目の採点結果を手にした児童たち。「あってると思ったのにな」などの会話が交わされる中、先生が解説したのは、「グラフを正確に読み取ること」と「ポイントを押さえて記述すること」の2点の大切さでした。読み取りに関しては、事前に標準学力調査の誤答分析を行う中で浮き彫りになっていた「目盛りの読み誤り」や「A市とB市の取り違え」といった“つまずき”を重点的にフォロー。一方、記述に関しては「『何時か』と『気温差が何度か』は必須のキーワード」と、記述のポイントを具体的に提示するなど、表現力を高めるための実践的な指導が展開されました。
「きほんの時間」使用プリント:小4算数『A市とB市の気温差』
特筆すべきは、15分程度という限られた時間の中で完結する【解説・演習・即時採点】の極めて濃密なサイクル。まず1問目の解説では、「差が大きい=グラフの幅が広い」のような前提知識の確認をした後、児童からグラフの読み取りかたのコツを募り、「補助線を引く」「グラフの目盛り線が5度刻みで太くなっている点に注目する」などのアイディアが、児童主体でクラス全体に共有されました。その後、続く2問目の演習に移ると、1問目が白紙だった児童も、直前の学びを活かして迷わずグラフに補助線を書き込んだり、キーワードを書き出し始めたりと、即座にアウトプットへ繋げている様子が見受けられました。
最後に、2問目を解き終わった児童から、先生がその場で採点をしていきます。丸をもらう児童が増えてくると、その児童が先生代わりとなって他の児童にアドバイスをし、限られた時間内でかなり多くの児童が「できた!」という成功体験を得ている様子が印象的でした。こうした、調査結果の分析に基づいた的確な課題設定と、小さな成功体験を積み重ねる指導の継続こそが、同校の高い学力を支える大きな秘訣の一つなのかもしれません。
■誤答傾向を分析する:ミクロな視点で「間違いの理由」を探る
なぜこれほど的確な指導ができるのか、井村先生に直接お話を伺いました。
井村先生が学力調査において最も大切にされているのは、実施後の徹底した振り返りだといいます。正答率の低かった問題のフォローはもちろん、点数や順位の確認だけでは終わらせず、「児童がどこでつまずいているのか」を丁寧に見つめることを意識しているといいます。標準学力調査においては、結果閲覧・分析を一元化したサービスである「マイアセス」を活用し、一問一問の解答類型にまで踏み込んだ分析を行っているとのことで、その方法を具体的に伺いました。
まずはじめにチェックするのは、正答率の低い問題だと語る井村先生。特に選択問題のなかでも選択肢ごとに「なにを誤ったのか」が示されている問題については、その内容もチェックされているとのことでした。同様に記述問題でも、誤答パターンごとに分類された解答を確認することで、「知識が定着していなかったのか」、あるいは「思考の過程や記述のしかたに誤りがあったのか」といった、間違いの背景にある理由を探っているとのことでした。また、児童一人一人の手書きの解答を確認することができるマイアセスの機能(下記参照)も活用されており、これについて井村先生は、「実際の手書きの解答は、子どもたち個人の特徴や傾向を踏まえて、つまずきポイントを分析する際のヒントとなっている」と語ります。また、全ての解答を個別に確認せずとも、類型ごとに分類して表示されるため、傾向を一目で把握することができるのもマイアセスの魅力だと話していました。
そして、誤答傾向の分析をした後には、今回見学した「きほんの時間」のように正答率の低かった問題の類題を作成して演習を行ったり、タブドリLive!を活用したりして、学び直しやつまずきの解消を図っているといいます。
全国値に照らして正答率を把握するマクロな視点と、一問ごとの誤答類型を掘り下げるミクロな視点。この両面からの分析を徹底することが、日々のきめ細やかな指導の礎となっているようです。
東京書籍「マイアセス」の解答分析ページで表示される解答例
■日々の指導に活かす:年度をこえて「指導のバトン」を繋ぐ
取材を進めると、学力調査の分析結果は、受検した児童への指導に留まらず、次年度以降の指導改善にも重要な役割を果たしていることが分かりました。
羽咋小学校では3学期に標準学力調査を実施していますが、これは当該学年の学習内容がメインとなるため、その年度の3学期までに自らが指導してきた箇所の定着具合をダイレクトに確認できるメリットがあるといいます。
こうした振り返りは、次年度への「予防策」へとつながります。井村先生は、「児童がつまずく箇所や単元には年度をこえた明確な共通点がある」と語ります。ある年度の児童が苦手とした単元は、次年度以降も課題になりやすいため、その知見を指導に反映させることで、つまずきを事前に「予防」することが可能になるのです。
この「指導のバトン」を確実にするため、同校では今年度から、つまずきの原因をスプレッドシートに蓄積する取り組みを始めました。データを年度をこえて一元管理し、引き継ぐことで、学校全体としての指導レベルを引き上げていくことをねらいがあるようです。
現場での活用においても、課題になりやすい単元の教師用教科書にフォロー教材を貼り付けたり、週案に情報を記載したりする仕組みを見据えているとのこと。教師が「児童の陥りやすい落とし穴」を意識した状態で授業に臨めるようにするための、戦略的な仕組みづくりだと感じました。
井村先生が作成されているという「引き継ぎカード」
(今回の「きほんの時間」のもとになった問題について)
■コラム:校内ウォッチング
~校内の気になる工夫、取材しました!~
廊下に並ぶ「鶴見守り隊」の折り鶴
廊下に並ぶ折り鶴
校内に入り廊下を歩くと、足元に無数の折り鶴が飾られていることに気が付きます。折り鶴は廊下のセンターライン上に一直線に並べられ、廊下を行きかう児童たちはそれを踏まないように自然と廊下の右側を通行していました。校長先生曰く、校内には「鶴見守り隊」が存在し、折り鶴とともに廊下の安全を守っているとのこと。一度踏めばすぐにつぶれてしまう折り鶴が、一つもつぶれることなく凛々しい姿のまま廊下に立ち並んでいる様子から、この取り組みの有用性をすぐに理解できました。
投書が貼られた壁の前には、『どんどん読んでね』と書かれた貼り紙が。ただ飾って見せるだけの掲示ではなく、実際に手に取って読んでもらうための掲示であることがよく伝わります。
壁一面に貼られた地元新聞
3Fの廊下には、地元新聞の投書欄に掲載された同校児童の文章が数多く掲示されているスペースがありました。これは、同校が「書くこと」を学習の土台として極めて大切にしている証でもあります。
取材の中で、井村先生は「書くことを怖がらせないことが何より大事」と話されていました。毎時間の授業の最後に行う「振り返り」では、教師が安易に「まとめ」を板書して写させるのではなく、児童が自らの言葉でまとめを書く機会を意識的に設けているとのことです。
■取材を終えて
羽咋小学校では、まなびのプラットフォーム「マイアセス」をフル活用した標準学力調査の結果活用がなされていました。提供されるデータを細部まで分析し、それを「きほんの時間」での重点的なフォローや、次年度へ向けたスプレッドシートへの蓄積へと繋げていく。こうした先生方の丁寧な取り組みの積み重ねに、同校が高水準の学力を保持する秘訣を垣間見ることができました。データに基づき、子どもたちの「できた!」という自信を育む現場の熱意を強く感じる取材となりました。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです
東京書籍「マイアセス」
東京書籍が提供する、評価と学びのサポートシステムです。
学力調査の結果をデータで「見える化」し、苦手分野に応じたデジタルドリルなど、アセスメントに基づく最適な学びを提供。調査を実施する、結果を見る、復習する、という学習活動が、マイアセスで一つにつながります。
▼詳細 https://www.tokyo-shoseki.co.jp/spf/myassessment/function/
