授業後、今回の授業のポイントや考え方、普段の指導で大切にしていることなどについて、鈴木先生に話を聞いた。
■本時の流れとポイント
鈴木はる代指導教諭
今回の授業は、単元の第1時であったため、単元のゴールイメージをつかむことと、Starting Outの概要を理解することの2つを目標としました。
授業の冒頭には、教科書のSounds and Lettersを扱いました。この活動は、児童が英語の音や文字に無理なく親しんでいけるように、毎時間の帯活動として少しずつ学習を進めています。発音練習を取り入れながらテンポよく活動を進められるように、指導者用デジタルブックを活用して一斉指導で進めることが多いです。
次に、ゴール活動のモデル映像を視聴したり、表現や語句を確認したりしました。一斉指導と個別学習を往還させることにより、児童に目的意識をもたせ自律的に学ぶことを促しつつも、教えるべき内容はしっかりと教えるよう意識しています。個別学習では、学習者用デジタル教科書を活用し、自分自身で教材や学び方を選択しながら学んでいます。
そして、本時の中心となるListen and Thinkの活動です。ALTとのやり取りを通じてストーリーの場面や状況を推測したうえで、まずは音声のみを全体で聞きます。次に、学習者用デジタル教科書を活用して個別に視聴する時間を確保します。全体の概要を捉えた児童は、より具体的な内容に注意を向けながら映像や音声を視聴していました。音声と映像のどちらを先に視聴するか、どのくらいの速さで、どの部分を何度聞くかなど、自分で判断しながら熱心に内容を聞き取っています。
最後に振り返りを行いました。素早く取り出して書き込めるよう、紙のワークシートを選択しています。
■一斉指導と個別学習、紙とデジタルの使い分け
各自取り組む教材があり、方法を選択できるという場合には、できるだけ個別に学習する時間を取るようにしています。特に、音声を聞く活動では、聞きたい部分や回数、速さが人によって違うので、個別に学習するメリットが大きいと感じています。逆に、全員でしっかり確認したい、同じレベルで取り組んでほしいという部分は全体で指導するようにしています。
紙とデジタルも意図的に使い分けをしています。英語を書くときには紙(教科書やワークシート)を基本としています。紙の方が、素早く書き取ることができ、映像を視聴しながら書き取る作業がしやすいというメリットがあります。4線上に正しく書く練習にも、紙の方が適していると考えています。一方、デジタルの強みは「音声」ですから、聞く活動や真似して言う活動で積極的に取り入れています。また、各自の好きな内容を、好きなペースで学べるというのもデジタル教科書の強みです。難しいと感じるところは速度を落として聞いたり、自分がもっと知りたいことを重点的に学んだり、個に応じたさまざまな使い方ができるということが大きな魅力です。
学習者用デジタル教科書で音声を聞く
■ゴールや見通しを示すことが大切
個別に学習する時間を確保する際に大切なのは、ゴールを明確にし、自分に何が足りないかを自覚させ、学ぶ必然性を感じさせることだと思います。
今回の授業では、授業の初めに単元のゴール活動のモデル映像を視聴させて、単元でめざす姿のイメージを共有しました。Listen and Thinkの活動では、まず全体で音声を聴くことで「もっと詳しく聞き取りたい」という児童の意欲を引き出したうえで個別の学習に入りました。
今回の取材を通して、自律的に学ぶ機会を確保することの意義、デジタル教科書の活用法についてのヒントを得ることができた。そして、学びを豊かにするための教師の働きかけの重要性についても再認識することができた。
鈴木先生は、「授業は、『教科』を学ぶ場であるだけでなく、『学び方』や『生き方』を学ぶ場でもあります。子供たちが自律的に学び自分の人生を前に進めていくことができるように、教師は様々な視点や選択肢を示してあげることが重要だと思っています。授業に関して言えば、児童に何を経験させ、どのような力を身につけさせたいのか、明確な意図をもって学習環境を整えることが不可欠だと考えます。」と結んだ。
2025年10月15日
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです
