■成田市立公津小学校 先生インタビュー(2024年2月28日)
2024年2月28日に成田市立公津小学校を訪問し、1年1組でコグトレオンラインに取り組む授業を参観させていただいた後、髙橋和宏 教頭先生と1年1組担任・研究主任 伊藤優乃 先生にインタビューをさせていただきました。公津小学校では、2023年9月からコグトレオンラインを導入しています。
Q コグトレオンラインの導入の経緯・背景を教えて下さい
髙橋教頭先生:
子ども同士のトラブルが起きたときに、それぞれの言い分が合わないといった場面がよく見られるようになってきました。そうしたときに、児童の見たり聞いたりする力、認知の力の弱さを感じていました。
認知の力は学習の土台にもなるので高めていく必要があり、そのためにコグトレオンラインを導入したいと思いました。
2023年度は、成田市「特色ある学校づくり事業『ドリームスクール・ジャンプ21』」で予算がついて実施ができました。学習の基礎・土台となる認知能力を高めていくために、学校全体で取り組んでいるのが特色です。
Q 普段はどのようにコグトレオンラインを使っていますか?
髙橋教頭先生:
毎週金曜日、15分間の朝ドリルの時間から始めています。研究主任が「今週のコグトレ」を設定して、各学年で実施しています。子どもたちは楽しんで取り組んでいます。それぞれの学年で自習の時間などに活用したり、運動場に行けない雨の日にドリルのひとつとして活用したりしています。
Q 導入してどのような変化がありましたか?(児童や教員、学校の雰囲気など)
髙橋教頭先生:
校内で効果を検証するために「見る力」に焦点をあてて、図形を書き写すテストを実施しました。コグトレオンライン実施前後で、学力中位の子たちの「見る力」は向上している感じはあります。図形を書き写すときに形がとれなかったのが、とれるようになっている子もいました。このあたりは、コグトレオンラインによるものだけではなく、発達段階によるかもしれないので、経時変化を見ていきたいと思います。
校内では、学年間で取り組みの差はあります。コグトレオンラインの使い方についての研修は何度かしています。高学年はコグトレオンラインにさける時間と熱量が少し下がるかもしれません。もう少し成果が見えてこないと増やしにくいかもしれないです。
Q 導入して保護者の反応などはありましたか?
髙橋教頭先生:
導入時には、学校だよりでコグトレオンラインを紹介しました。また、学校評価のときに、導入の目的、成果、具体的な活用について知りたいと保護者様からコメントがありましたので、関心は高いと思います。
保護者様に、コグトレオンラインを実際に見てもらう時間をとれていないまま、子どもたちが持ち帰ったiPadでコグトレオンラインに取り組んでいる状態です。どんな目的で活用しているのかなどは、説明をしないと伝わらない部分もあるかもしれません。
Q 導入する際に配慮したことはありますか?(校内研修や保護者への説明など)
髙橋教頭先生:
子ども同士のトラブルを防ぐために認知能力を上げることを目指してコグトレオンラインを導入する、という目的を保護者様と先生方に伝えることだと思います。ただコグトレオンラインをやっていればいいのではありません。
コグトレオンラインについては、どの学年にどの課題を使えばいいのかがはっきりと出ているものではありません。学年や発達段階によって、たくさんある課題のなかから、年間でこれをやってもらいたいという課題を選ばなければいけません。担任がまずやってみることが必要だと思います。
Q 活用しているときの子どもの様子はどうですか?
髙橋教頭先生:
高学年の子たちを見ていると、できない課題をやらなくなってしまうことがあります。ちょっとがんばれば超えられる、という道筋をたててあげないとやらなくなってしまう子もいます。成果を見ると、低学年の子たちに、より変容が見られるように思います。
伊藤先生:
子どもたちは、はじめてのことに対して興味をもってやっていると思います。自分のタブレットでできるということがいいと思います。問題数が豊富なので、「今週のコグトレ」では同じものをみんなでやっていますが、その後は自分で選んで取り組むことができるのがいいと思っています。
Q ポジティブな変化はありましたか?
伊藤先生:
コグトレオンラインに取り組んだから伸びた部分なのか、発達の段階で伸びてきたのかはわからないですが、「自分はこう思った」「こうだったのに」とおたがいの意見が食い違っていたときに、自分の意見を曲げなかった子たちが、「こういう考え方もあったんじゃない?」「相手はこんなふうに思ってたみたいだよ」というふうに相手を受け入れられるようになってきたと思います。いろんな考え方を受け入れられるような土台が少し子どもたちにできてきたんじゃないかなと思います。コグトレオンラインの効果かどうかはわからないですけど。
Q 先生のおすすめのトレーニングは?
髙橋教頭先生:
テストの問題文に「○を2つつけなさい」とあるのに1つしか○をつけない子も多いので、「見る力」は教科の学習の中でも必要だと思います。
でも、子ども同士のトラブルを防ぐために認知能力を上げる、という目的からすると、「想像する力」が究極のものだと思っています。「見る」と「聞く」があって、「想像する」ことができるのかな、と思います。「見る」「聞く」「想像する」という力を育てるのは、授業の中でもやっていますが、それをトレーニングできるものは少なかったのです。「想像する力」を子どもたちにつけたいと思って、学校で1年生から6年生まで続けて取り組んでいきたいです。
伊藤先生:
1年生は、算数でたし算・ひき算をはじめて学習するので、コグトレオンラインの「さがし算」をゲームのような感覚でやることで、計算力が身につきます。1年生にはさがし算はおすすめだと思っています。紙の計算カードや算数カードだと、印刷をしたり準備をしたりするのが手間になってしまい、先生方が最初の一歩を踏み出せないことがあります。でも、コグトレオンラインだと問題は準備されているので、内容を確認して、子どもたちにあったものを選んで配信できます。一から準備しなくても、子どもたちが選んでどんどんできるところがデジタルの良さかなと思います。
Q 使い方のコツはありますか?
伊藤先生:
コグトレオンラインmanagerで、誰が何をやっているかを把握はできますが、一人ひとりがどんなことをやっているのか、詳細を見てはいません。こんな感じのことをやっているのだな、と見ています。
やっている課題を最後までクリアしたい子もいれば、いろいろな問題をちょこちょこやりたい子もいます。ふだんやっている課題は、全員が解けるように難易度を抑えているので、できないような難しい課題に取り組むのを楽しんでいる子もいます。特に規制はかけていません。「次はこれをやりましょう」というのも言っていません。
コグトレオンラインの良いところは、自分でいろいろなことを選択できるところだと思います。「これをやりましょうね」と先生が言うのは今までのやり方です。いま、自分で選ぶのが苦手な子も多いので、自分で何をやるか選択する、自分で決める力が大事だと思っています。コグトレオンラインではそれができるのがいいと思います。
Q 具体的な子どもへの声掛けは?(苦手なトレーニングに取り組むための声掛け等)
髙橋教頭先生:
1年生なんかは、「できたよー」と嬉しい顔をするので、先生も「できたねー」と一緒に喜んであげるのがいいんだと思います。高学年になると他の子と比べることも多くなります。
答えは教えてしまってはいけないところだと思います。子ども同士で話し合って、「こうしたらいいよ」と横に広がるのはいいと思っています。ただ、コグトレオンラインをやらせっぱなしになってしまってはいけないと思います。出題された課題のレベルとお子さんの力があっていないときに、前に戻ってみるのもいいと思っています。
はじめは楽しいからどんどんやります。でも、途中から認知の能力を超え始めて、学びからゲームに変わっていってしまう感じがします。ここが難しいですよね。そこを担任や授業者が入ってどうサポートするか、考えるところだと思いますね。こういう問題は算数の勉強でも漢字の勉強でも実は同じだと思います。
伊藤先生:
やり方で困って、手が止まっている子には、「いま困ってる?」と声掛けをしています。やりこんでいる子、先生に「見て見て!」と言う子には、「どこまでできたの?」「すごいじゃーん」と認める声掛けをするようにしています。
どう考えていいかわからない、認知の面で困っている子には、最初は「こっちから見るんだよ」というふうに具体的にやり方を教えて、次の段階は子どもたちが自分で考えを導き出せるようにしています。全部を教えてしまうと、やり方を教えたことになってしまうので、最後の段階は自分で答えを導き出せた、ということになると思います。最後は子どもの力でできるように気をつけています。
はじめて出る課題は、やり方がわからないと抵抗感をもつ子もいるので、やり方を説明して、「どうしたらいいかわかる?」と簡単に解き方も確認しています。
Q 今後はどのように使っていきたいですか?
髙橋教頭先生:
コグトレオンラインで身につけた力が、他の教科や日常生活の中で役立つ場面のうち、わかりやすいものとして学力があります。漢字が苦手な子が、見る力を伸ばして、書けるようになったり、計算問題でも、位取りができなかった子が、正しい位置に書けるようになって、計算が解けるようになったりすることもあると思います。ただ、そういった効果が出てくるにはもう少し時間がかかります。「耕しの時間」というか、コグトレオンラインで練習する時間を苦労なく取れるようにしていきたいです。そうして、子どもたちの困難を取り除ければいいと思います。
伊藤先生:
何かを自分で決めて、それに向かって取り組めるような姿になってほしいなと思います。コグトレオンラインで、多様な考え方とか、いろいろなものの見方ができるような子どもたちが育ってくれたらいいなと思います。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです