毎日の端末活用を積極的に行っており、全員の前で説明する機会が増えた
■日々、個別に取り組む時間を確保
隣り合った数を足して一定の数になる箇所を見つける「さがし算」
児童は毎朝登校すると、朝読書を行う。その後のRootTimeでは全学年で「コグトレオンライン」に取り組んでいる。
1年2組の児童は各自のiPadからMicrosoftアカウントのシングルサインオンで「コグトレオンライン」にログイン。様々なトレーニングに取り組んだ。
連続で掲示される16マスの中にある「●」の位置を記憶して再現する「●はどこ?」や、たくさんのマークがある中から指定されたマークを探してその数を数える「記号さがし」、隣り合う数字を足して一定の数になる箇所を見つける「さがし算」、読み上げられた文章の最初の単語を記憶しながら、指定されたキーワードが出てきたらボタンをクリックする「最初とポン」等だ。
「コグトレ」は、記憶や言語理解、注意、知覚、推論・判断といったいくつかの要素を含んだ知的機能である「認知機能」の強化をねらいとして開発されたトレーニングだ。
2022年4月から提供しているオンライン版には、現在小学校1年生から中学校レベルまで4分野・11トレーニングがあり、パズルやゲーム感覚で取り組むことができる。
1トレーニングは約5分間程度で、自動採点ですぐに結果がわかる。
教員向けに、学習管理機能「コグトレオンラインmanager」も提供。児童生徒の実施状況がひと目でわかる。トレーニングを自動で配信する機能も搭載している。
■一斉の取組では積極的に説明し合う
時間内に指定されたマークの数を数える「記号さがし」
この日は「コグトレオンライン」の「何があった?」に全員一斉に取り組んだ。
これは図形の形や場所を記憶し、再現するもの。「視覚性の単純短期記憶」を鍛えるトレーニングだ。
全体で答え合わせをし、異なる意見が出た際に「2つの形のどこが異なるのか」を隣同士で説明し合ったり、全員に説明したりした。
授業終了後、「コグトレオンライン」について児童に聞いたところ、全員が「好き」と回答。最も好きなトレーニングは「さがし算」、次いで「記号さがし」だった。「いろんなレベルがあるのでもっとたくさん挑戦したい」という児童もいる。
保護者からも「積極的に楽しんでいる」「喜んでやっている」という声が届いているという。
■教科で役立つ力が伸びている
授業者の冬野教諭は「当初は、端末にも教材にも不慣れなこともあり、コグトレオンラインに全員一斉に取り組んでいた。一斉で取り組むことの良さは、全体の取組のバラつきを整えることもできる点と、言葉で説明し合うことや全体に発表する経験を楽しく積める点。この経験は特に低学年では貴重」と話す。
通常は、児童それぞれのペースで自由に取り組んでいる。
「コグトレオンラインにより、いつの間にか、教科学習で役立つ力が伸びている。教員がコントロールせずに取り組ませることの良さを感じている。家庭でも取り組みたいという声も届き、家庭の端末でも取り組めるようにした。コグトレオンラインにより、聞く力はあるが読んで理解する力が弱い、短期記憶能力が高い等、それぞれの児童の様々な弱点や強みを理解することにもつながっている。教科外の時間に短時間で認知機能を鍛えることができる点がコグトレオンラインのメリット。ほんの5分間でも花丸を30個以上獲得している児童もいる」と話した。
■「コグトレオンライン」導入の理由
「コグトレオンライン」導入の目的を長谷川昭教頭に聞いた。
2019年度まで立命館小学校で校長を務めていた長谷川教頭は「2006年の開校当初より立命館小学校では朝10分間のモジュールタイムで読書や暗唱、100マス計算等に取り組んでいた。そこに紙ベースのコグトレを2019年より導入し、成果を感じていた。オンライン版ができると聞き、慶祥小学校の毎朝のRootTimeの充実を図ろうと考え、学校設立と同時に導入した」と話す。現在は「1~3年生の1・2学期は週1回必須、3学期は週2回必須」とし、必須事項と選択事項を決めてRootTimeで取り組んでいる。
■ICT環境
同校の教室に黒板はなく、全面ホワイトボードでレール可動式のプロジェクターを設置。情報端末は、1・2年生はiPad、3年生以上はSurfaceを導入。
Microsoftアカウントを全児童に配備し、コグトレオンラインやロイロノートをシングルサインオンで活用できるようにしている。教員用PCもWindowsOSだ。また、同校は、世界レベルのICTスキル獲得を目指して、マイクロソフト社からShowcase Schoolの認定を受けている。
■認知能力が高いほど学習成果を上げやすい
吉田恒校長
本校では「安心してたくさんの失敗と挑戦を重ねること」「学ぶことが楽しいと感じられること」を大切にしており、教員も子供も新しい挑戦に前向きだ。
校内には様々な仕掛けがある。プールをリノベーションした図書館や1学年分の座席と個室が複数あるワークスペースなど多くの空間に、温もりを感じる木材を利用。敷地内の森に設置したオリジナルのアスレチックは、6年間でクリアできる仕組みとした。教育は環境と考え、英語イマージョン教育や教科横断型学習、ICT教育の充実等を図っている。札幌は雪害が多いためオンライン教育にも積極的に取り組む。
「コグトレ」は認知能力を強化できる仕組みとして期待している。認知能力が高い子供ほど、学習の成果を上げやすいと感じている。
2~4年生は4月に認知能力検査を実施しており、経年変化を計測していく。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです