■学習時間が増し,上位層に厚み
前年度の全国学力学習状況調査で全国平均を全科目で下回った鶴谷中学校では,昨年2学期から学力向上に取り組み,今年度の全国学力学習状況調査では国語B以外の全ての科目で全国平均を超えた。
おうぎ形の面積の求め方をジャスチャーで考える(数学)
具体的には,県内上位の豊後高田市を参考にして45分7時間授業を開始。授業時間を確保する体制を整え,朝読書,朝ドリル,国・英・数の3教科を週に2度復習する「基礎力アップ講座」(1学期は週3度実施)等で生徒達の学習時間が増え,定期試験の結果では上位層に厚みが出たという。
「基礎力アップ講座」や朝ドリルを始めとして「問題データベース」は家庭学習にも役立っている。家庭学習の課題は1日1教科30分程度の分量で,「問題データベース」から印刷されたプリントが中心。各授業の確認で出される宿題もあり,家庭学習をした上でさらに「朝ドリル」「基礎力アップ講座」で定着を図っている。問題データベースから印刷したプリントをファイリングしており,定期考査前にはファイルを見直して主体的に学習する。
■決め細かく繰り返し学ぶ1年・数学
数学の授業の始めに「たしかめプリント」が配られると,生徒は静かにプリントを受け取り,集中して問題を解き始めた。裏には解答が印刷してあり,間違ったところはノートにやり直して提出する。
本時の単元は「円とおうぎ形」。大林知寛教諭は円やおうぎ形を板書し,黄色い画用紙の円を折り曲げながら,1つひとつの用語と意味をじっくり伝える。「交流」の時間には,身振り手振り友人同士で相談しながら円やおうぎ形の性質に気づいていく。最後の5分間は,問題データベースの「フォローアッププリント」で本時の復習。生徒はノートとプリントを何度も見比べながら真剣に取り組んでいる。このプリントも裏に解答があるが,すぐに解答を見る生徒はなく,休み時間になっても考えている生徒や友人同士で確認し合う姿が見られた。
■習熟度別授業で学び合いを展開3年・英語
英語の習熟度別授業で基礎クラスを受け持つのは渡辺恵子教諭。本時の学習内容は間接疑問文だ。
渡辺教諭は黒板に疑問詞一覧表を貼り,間接疑問文の作り方を耳で理解させてから黒板で少しずつ確認。電子黒板でポイントをまとめては発音させ,学習プリントに記入させた。三人称や一般動詞を用いた例文では,理解しきれない表情の生徒もいる。残り20分ほどで配られたのは,「たしかめプリント」と「フォローアッププリント」を両面印刷したもの。生徒は学習プリントと照らし合わせて問題を解き,渡辺教諭が適宜丸をつけヒントを与えていく。
丸をもらい終わった生徒が「МINI TEACHER」のプレートをかけて他の生徒に教え始めると,浮かない表情だった友人も耳を傾ける。授業が終わった瞬間,集中しきっていた生徒達からため息がもれたが,その表情は充実していた。
応用クラスでは,「フォローアッププリント」の代わりに「チャレンジプリント」を使用している。
■新しい活用でさらに学力を向上
おうぎ形の面積の求め方をジャスチャーで考える(数学)
大林教諭,渡辺教諭は,「問題データベースは休み時間の10分でプリントを用意できるのでとても助かる」という。
大林教諭は授業の中で使ったプリントは回収して習熟度を確認する,個別指導で理解できていない生徒を指導する際はファイルに綴じてあるプリントで確認する等,日頃の指導に役立てている。
渡辺教諭は「問題データベースは3段階に分かれているので英語が苦手な生徒でも取り組みやすい」と語る。解答が右サイドにあるので,折りたたんでテスト勉強にも使いやすい。3学期には,入試問題の解きやすい問題を1年生も解く,高校入試に向けて各都道府県の入試問題にチャレンジさせる等,新たな活用も進んでいる。
■上位も下位も共に伸ばす
坂本寛喜 校長
9月に行われた保護者会では,前年から大きく向上した3年生の全国学力学習状況調査,2年生の大分県学力定着状況調査の結果に,保護者から驚きの声が上がった。
坂本校長は,時間があるときに問題データベースを全教科解き,自分の目で確認しているという。
「問題データベースは国が求めている学力に対応していて信頼できる。子供たちの学力を伸ばすには,上位層も下位層も共に伸ばしていくことが必要だ。部活動でやや力が上だと思われる相手と一緒に練習をしたり練習試合を組んだりするように,下位層には問題データベース等を用いて基礎力を付け,上位層には応用力が必要なやや高度な内容の問題に取り組ませることで,学力を伸ばしていくことができるのではないか。全国平均を5ポイント上回ることを目標に,今後も先生方に問題データベースの問題作成講座を提案するなどして生徒の力を伸ばしていきたい」
同校では,小・中・高・大との交流,地域の協力を得た文化活動にも力を入れており,学力向上をきっかけに,生徒を学校の内外で支える好循環が生まれているようだ。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです