■“聞きながらメモをとる” “質問を考える”事前学習
「イラストを使ってまとめているね,すごい!」「写真を使ったの?」
児童は,前方電子黒板に提示された友達のノート見て自分のまとめと比べている。ノートには宿題として,今日の学習内容「ニュース番組ができるまで」の概要がまとめられていた。
情報端末(iPad)のカメラ機能で児童のノートを映していた山下教諭は,次にリモコンを手にすると,提示画面をデジタル教科書「新しい社会」(東京書籍)の画面に切り替えた。

校外学習に備えて教室で“取材”練習
この日の学習内容は「ニュースを作る人の工夫や思いについて調べてまとめよう」だ。
宿題の答え合わせを兼ねて,「ニュース番組ができるまで」について,児童とやりとりしながら板書にまとめた後,デジタル教科書から2人のインタビュー映像を提示。1人は編集長の丸山さん。もう1人がアナウンサーの高畑さんである。
「準備は良いですか?」と,メモをとる用意を促す。児童は真剣に映像に注目しながらノートにメモを取っている。山下教諭は途中,映像を止めながら,児童がメモをとる時間を確保。メモの内容を発表する際には,「丸山さん」「高畑さん」の写真をホワイトボードに掲示して児童の発言を整理していった。

ニュース番組の編集長のインタビュー動画を聞いて
来週の校外活動に備える
「30分のニュースには何百人もの人がかかわっている」,「原稿に命を吹き込む」など,丁寧に読み取っている様子が分かる。
振り返りでは,この日の学習で分かったことや,来週放送局に行ったときに聞きたいことなどをまとめていった。ある児童は「アナウンサーは原稿を読んでいるだけだと思っていたが,どうすれば伝わるのかを考えていることがわかった。アナウンサーになるためにどれくらい時間がかかるのかをききたい」とまとめた。
■指導支援モードで教材研究豊富なインタビューが魅力
7年前の開校当初よりデジタル教科書を活用している山下教諭は,授業前の準備としてまず「指導支援モードを視聴する。
これは,授業の流れに沿って資料を順番に提示できるもの。どんなコンテンツがその単元にあるのかを確認して,何をどこで使い,何を使わないかなど,授業の組み立てを考える。動画は全て視聴する。どこで一時停止してどんな質問を投げかけるかを考えるためだ。
「社会科のデジタル教科書には,特にインタビュー動画が豊富で魅力的。授業では,様々な立場の方のインタビューを,メモを取りながら聞く活動を大切にしている。工場見学などの校外学習を,より効果的に展開するための事前学習としても活用している」と話す。
さらに「拡大して書き込んだり,算数では,図形を切ったり動かしたりすることができる点が便利。視線が前に集まりやすくなるので児童とコミュニケーションが取りやすく,ほぼ毎日使っている。その教科や単元の目当てを達成するためのツールとして,メリハリを考えて活用するように配慮している」と語った。
デジタル教科書にはこのほか,資料だけにアクセスできる「掛図モード」,教科書掲載のテキストや図版を編集できる「MY教科書エディタ」,「指導案事例」,統計など各種「社会科ツール」,「ワークシート」ほかの機能が付いている。
■児童の可能性を拡げる

宮崎隆一 校長
同校の教育環境は,全学年が集える1階中央のアトリウムや広々としたランチルーム,低学年教室にある隠れ場,司書教諭が常駐する図書館,ドアを開け放てば舞台にもなる音楽室,外国語教室,茶室と充実している。
小学校1年生から外国語活動も行っており,6年生でのオーストラリアの学校交流を目標に設定して,モチベーションを高めている。
「情報教育の時間」は,年20時間設定しており,2階オープンスペースにある図書室に隣接したPC室は,いつでも調べ学習やまとめなどで活用できる。
宮崎校長は「最先端の機器や環境は,教員の力量があってこそ児童の可能性を広げるもの。本校では学び合いを大事にしており,自分と異なる考え方の発見を促すためにもICTを活用している」と語る。
昨年度からは,学習者用端末(iPad)の活用も検証中だ。現在,2人に1台で活用できるように20台を配備。無線LANのAPは移動式で活用している。国語の音読練習やインタビュー活動,体育の演技などを撮影し合いながら改善点を話し合うなどの学習に役立てている。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです