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ICT サポート情報 iPadで学習者用デジタル教材
サポート情報

 山口県宇部市教育委員会では今年度,全中学校に英語のデジタル教科書をセンターサーバー方式で導入しており,既に活用が始まっている。宇部市では平成26年度から2年かけて,教員用と児童生徒用端末(iPad)を全小中学校に1クラス分導入しており,デジタル教科書やオンライン英会話,各教科ドリルの活用も始まった。1年生がデジタル教科書NEW HORIZON指導者用・学習者用デジタル教材(東京書籍)を活用しているという宇部市立厚東川(ことうがわ)中学校(河村宏子校長)の授業を取材した。授業者は宮本勝実教諭。同校では指導者用デジタル教科書と学習者用デジタル教材をどのように使い分けているのか。

■学習者用で前時の振り返り

 生徒は席に着くとすぐに学習者用デジタル教材のドリル画面にアクセス。前時のユニットを選択して単語の意味や英文の穴埋め,並び替えなどの出題形式を選ぶと,それに応じた難易度のドリル問題が提示された。

 20人が同時にアクセスしてもドリルの進行はスムーズだ。設定した3分を超えると,何問中何題が正解であったかが生徒用端末に表示された。

■指導者用で授業を展開

英語教室「新世代学習空間」の机上には生徒用端末が1台ずつ設置されている

英語教室「新世代学習空間」の机上には生徒用端末が
1台ずつ設置されている

 各自の端末での振り返りドリルを終えると,宮本教諭は指導者用デジタル教科書の動画を提示。指導者用と学習者用の画は画面上のタブで切り替えることができる。黒板大のホワイトボード左がデジタル教科書画面だ。音声はプロジェクターのスピーカーを活用している。

 この日の動画はブラジルについて。生徒はブラジルの子供たちの生活や食,文化についての説明を英語で視聴した。動画には英語の字幕が表示されている。

 「どれくらい内容が分かったかな?隣の人と話し合って」という指示に,生徒は「サッカーが好き」「サンバも」と話し合っていた。

授業は指導者用デジタル教科書を中心に展開

授業は指導者用デジタル教科書を中心に展開

マスキングして読みの練習

マスキングして読みの練習

 次に宮本教諭は,ヒラリー・クリントン大統領候補やノーベル賞を受賞したボブ・ディランなどの少年・少女時代の写真を提示。本時の学習内容「Who is this boy(girl)?」を使って生徒に何度も問いかけ,英語でやりとりをした。

 新出単語や基本文,本文の読みの練習も指導者用デジタル教科書を使う。ランダムで提示したり,速さを変えたり,班ごとに1文ずつ読み合うなど様々な方法で繰り返す。本文の一部をデジタル教科書のマスキング機能で隠すと,生徒の読み上げる声は急に元気がなくなったが,その後の各自の読みの練習では,より熱心に取り組む姿が見られた。

 活動はすべて,「デジタル教科書の音声と同時に読む」ように指示。宮本教諭は「音声を聞いてから読むと,実際とは異なる発音や調子になりがち。同時に読むことで,聞こえたように話すようにしている」という。

 練習問題では,各自で紙のワークに取り組んでから隣同士で互いの解答を確認。その後,一斉提示画面に生徒が書き込んで答え合わせ。デジタルとアナログを使い分ける様子も見られた。

選択問題(左)や入力問題(右)などの出題形式も各自で選ぶ 選択問題(左)や入力問題(右)などの出題形式も各自で選ぶ

選択問題(左)や入力問題(右)などの出題形式も各自で選ぶ

■意欲が高まると学習の質も上がる

 宮本教諭は学習者用デジタル教材について,「紙の教科書ではできない多様な活動が可能になり,予想以上の効果があった。生徒は小学校の外国語活動で,既にデジタル教材に慣れており,英語を楽しいものと感じている。1か月に1回程度のALTの訪問でも積極的にコミュニケーションをとっており,『聞く・話す』力があると感じる。中学生になり,書く力が求められることで,難しさを感じる生徒も出始めるが,学習者用デジタル教材を取り入れることで『楽しさ』を維持しやすくなると考え,毎時間の振り返りに活用している。現在は指導者用デジタル教科書を中心に学習を進めているが,学習者用デジタル教材の教科書データを使って,グループ活動の中で学び合える仕組みづくりに取り組んでいきたい。書く活動ももっと盛り込んでいく」と話す。

■意欲が高まると学習の質も上がる

宮澤剛彦 校長

河村宏子 校長

 河村校長は「顔を上げて生き生きと学習する生徒の姿が印象的。意欲が高まると学習の質が上がる。発音練習や読みの練習も,ごく自然にお互いに聞き合いながら進めている。学習者用端末を使ったドリル学習は,自分のペースで進めやすいため,従来の自習とは異なる集中が見られる」と語った。

 宇部市では現在中学校2校,小学校4校でオンライン英会話も検証中だ。同校では2学期に8回を予定しており,既に3回を終えた。

 教育委員会の大山裕子指導主事は「外国人講師が提示した寿司の写真が,逆さだった。生徒は,その誤りを伝えるための表現を調べていた。個別にコミュニケーションをすることが,伝えたいことを生み,英語を学ぶ必然性につながる」と述べた。

【掲載 2016/11/07付 教育家庭新聞】
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです

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