■いつでも使える環境で活用進む
村上教諭はタブレットPCを使ってデジタル教科書から3つの二次方程式の問題を、デジタルテレビに提示した。生徒は各自で解いてから、これまで学んだ二次方程式の3つの解き方「因数分解」「式変形して平方根の考え」「解の公式」のどれが最適な解き方かを話し合っていく。
テレビとタブレットはワイヤレスアダプタで接続。8インチタブレットは持ち運びしやすい
本時の目標は「いろいろな二次方程式を最適な方法を見つけて解く」こと。生徒が問題を解く間、村上教諭は、生徒のノートをタブレットPCで撮影。デジタルテレビに提示して、なぜそのように解いたのかについて説明を求める。生徒は、「係数がある場合は因数分解をしにくいので解の公式を使う」「因数分解しにくい場合は、平方の形に変形して平方根の考えを使って解く」「求めるべきxを割って消してはいけない」など、様々な考えや気づきを共有していった。授業の冒頭に行った宿題の答え合わせも、タブレットPCからデジタル教科書を操作してテレビ画面に提示してテンポよく行った。本時の課題につながる問題は、板書して解説するなど、授業の流れを考えて使い分けていた。
複雑な連立方方程式の文章題も
シミュレーションで理解できる
MY教科書エディタで提示したい
部分だけを編集・提示
■無線環境なしでデジタル教科書を提示
同校で現在、教室に設置されている大型テレビは平成21年度整備時のもの。このUSB(RGBを変換)とHDMIに「ワイヤレスディスプレイアダプター」(Miracast対応)を挿入することで、無線環境がなくてもタブレットPC画面をワイヤレスで提示できるようにしている。
村上教諭は「数学の部会長から活用事例を聞き、まずは1年間、できることは何でも試してみようと考え、授業の最初には必ずタブレットPCを立ち上げて、いつでもデジタル教科書を使えるようにしている」と話す。6月から活用を始めたばかりだが、「8インチのWindowsタブレットは持ち運びしやすいので教員の機動力を妨げず、生徒の様子を見取りやすい。生徒のノートをカメラ機能で撮影して提示することも、より円滑にできる。デジタル教科書の提示もスムーズで、見せたい問題だけを提示、迅速に共有できる。文字だけでは理解しにくい文章題もシミュレーションを見せることで、『どんな状況で何を解かなければならないのか』の理解を促進しやすい」とそのメリットを語る。
■教材研究が変わった
教材研究の方法も変わった。デジタル教科書がインストールされたタブレットで、すぐに教材研究ができるようになった。
「デジタル教科書のどこにどんな動画やシミュレーションがあるのかを把握して、興味関心を高めて理解が深まる提示方法やタイミングを考えている。9月以降、関数や図形の範囲に入るので、活用場面が一層広がる。どこにどう使おうかと考えることが楽しい」
デジタル教科書の研修会についても言及。
「使う前と使い始めてからの研修はそれぞれ必要であると感じた。特に使い始めてからの研修では、やりたいことを具体的に聞くことができる。先日の研修で学んだMY教科書エディタを早速取り入れて、教科書の提示したいところだけを編集して提示している」と語った。
慣れると授業時間内でもできるので、伝え方の手法が広がった。
「今後は、既習事項の振り返りができるリンク機能や、毎時間の冒頭に行っているミニプリントのデジタル化など、様々な方法や教材を試したい」
■小中連携で学習規律を整える
同校では、小中連携で「みいり学びのスタイル」を実践している。これは、「本時のめあて」の提示、毎時間1回はペアまたはグループで学び合いの実施、振り返りと「本時のまとめ」は必ず行うなどの学習規律だ。自己評価シートも毎時間記入。これらの浸透が、円滑な話し合い活動につながっているようだ。竹下校長は「詳細な検証はこれからだが、低学力層の減少傾向は明らか」と語る。
広島市では隣接学区選択制をとっており、小学校6年生を対象に全教科で体験授業も行っている。今年度は、デジタル教科書やタブレットを活用した体験授業も行う予定だ。竹下校長は「中堅教員がデジタル教科書やタブレットPCのメリットを理解できると、効果的な活用が期待できる」と話した。
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです