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ICT サポート情報 百人一首を声に出してみよう
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平成23年度からフューチャースクール推進事業(総務省)ほかの実証校として児童1人1台端末活用に取り組んでいる佐賀市立西与賀小学校(今泉弘校長・佐賀県)。本事業により現在の小学校6年生は,1年生から情報端末を活用している。3月,同校の4年国語の授業を取材した。授業者は江里口大輔教諭(所属は取材時)。

■古典の世界を動画で理解

この日の学習課題は,古典の導入教材「百人一首を声に出して読んでみよう」,めあては「言葉に注目して短歌を読もう」だ。

冒頭で児童はデジタル教科書の「百人一首」の説明動画を視聴。百人一首について「藤原定家が選んだ和歌」「五七五七七の区切りがあり31音である」「一首二首と数える」など学んだことを発表して重要事項を共有した。

次に,江里口教諭自作のワークシートを各自の情報端末に配布。そこには,今日学ぶ和歌「秋風に たなびく雲の絶え間より もれ出づる月の影のさやけさ」が記載されている。児童は早速,デジタルペンでワークシートに名前と今日のめあてを書き込んだ。

その和歌をどこで区切って読めば良いかを考えてから,デジタル教科書の範読を聞いて確認。全員で「区切れ」を意識しながら斉唱した。提示されたデジタル教科書には和歌と百人一首の読み札と取り札が掲載されているが,そのうちの1枚は付箋で隠されたままだ。

情景がわかる百人一首の絵札を隠して意味を考えた

百人一首の「意味」を学ぶ場面では,児童が「意味がよくわからない」とした「たなびく」の意味を,枕草子「春はあけぼの」の一文から,「さやけし」の意味は「秋来ぬと目にはさやかに見えねども(後略)」の和歌から,児童同士で話し合わせるなどして類推させた。

児童は「たなびく」については「薄くて細い感じ」「雲が薄く細くなっている」,「さやけさ」については「確かに」「ちゃんと」「はっきり」など,やりとりの中で少しずつ意味に近づいた。

ここで和歌のどの部分が良いと思ったのかとその理由をデジタルワークシートに記入。「たなびく雲」に線を引いた児童は「うすく広がる感じがなめらかで良い」「うすく広がって流れている様子がきれい」とその理由を記載していた。

さらに江里口教諭は,「光さやけし」ではなく「影さやけし」と詠まれていることに注目させた。「影が明るいとはどういうことか」と質問。作者がこの和歌でどのような情景を伝えたかったかについて考えを深めた。

児童のやりとりの中で「月の光が強くて影がくっきりしている様子」という答えを導いてから,付箋で隠していたデジタル教科書の取り札を提示。すると,その絵には月に雲が霞がかっている様子が描かれていた。

さらに電子黒板に「明るい月に雲がかかっており,影がくっきり見えている写真」も提示。児童はそれらを見ながら,全員で声をそろえて和歌を音読した。

最後の振り返りも,デジタルワークシート上に記入。児童は「影のさやけさの意味が難しかったが最後は分かった」「たなびく,もれ出づる,さやけさという言葉の意味が分かって良かった。影のさやけさという言葉から,月の光の強さがわかった」などと表現していた。

■言葉の意味は他の文例から類推

ICT推進委員である江里口教諭は同校に赴任時,「ICT環境が進んでおり,調べる力,プレゼンする力など児童のICTスキルがとても高い」と感じたそうだ。

左にサムネイル表示されている2枚目がこの日使うワークシートだ

デジタル教科書は同校で初めて活用した。

「映像や画像などの資料が豊富なので,言葉で伝わりにくいイメージを伝える際に活用している。教科や教材により,導入,展開,まとめと活用場所を使い分けている」と話す。

和歌に初めて接する学習で,他の和歌や古典から意味を類推させるという試みについては「意味のイメージを固めるために他の文例を示して類推させる活動は,他の単元でも取り組んでおり,児童は慣れている」という。

デジタルワークシートは日常的に活用しており,教室に常設しているプリンターで印刷してファイリングさせている。「児童はファイルが厚くなることが好き」と語った。

■ICT推進員を分掌に設置 環境が教員スキルを後押し

今泉弘 校長

今泉弘 校長

前任校の多久市でICT活用に関わるプロジェクトに取り組んできた今泉校長は,「西与賀はICT環境が定着しているため児童のスキルが高く,1人1台のメリットを感じた。ICT活用歴が浅い教員もスキルの向上に自然に熱心になる。そのため研修が浸透しやすく,情報交換も積極的」と語る。授業研究には必ずICT活用の視点を盛り込んでおり,それぞれの教員の得意な科目で活用。教員の入れ替わりがありながら,安定して他校の参考となる事例を継続して提供している。

新年度を迎えて落ち着きの出始めた6月に全体研修として,ICTをフル活用した授業を公開。市では各校にICT推進員を分掌として位置付けており,同校にはICT支援員も常駐している。週2日,情報端末を活用したドリル学習も行う。

平成28年度に佐賀大学の教育学部が再編され,教職課程を取得する学生が倍増することから,もともと代用附属校だった本庄小,城西中に加え,新たに同校も代用附属校として教育実習生の受け入れが始まる。既に1年「情報基礎」でICTを活用した授業の視察が同校で始まっており,同校のICT環境のさらなる進展が期待されている。

【掲載 2017/05/08付 教育家庭新聞】
※執筆者の所属や役職は執筆時のものです

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