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2026.05.26
東京都北区・王子に、日本初の教科書図書館があるのをご存知ですか。その名も「東書文庫(正式名称:東京書籍株式会社附設教科書図書館 東書文庫)」。 鎌倉時代の古往来から江戸時代の寺子屋で使われた往来物、さらに戦前・戦後、そして最新のものまで、約16万点に及ぶ教育関係資料を所蔵し、そのうち7万6,420点が国の重要文化財に指定されています。これらの資料は、展示室と閲覧室で見学や閲覧ができます。2026年6月25日の開館90周年を前に、館長の髙石和治さんに東書文庫の概要や歴史的意義などについて伺いました。
東書文庫のホームページはこちら
昭和11(1936)年、東京書籍の創立25周年記念事業として設立されました。当時の第3代社長である石川正作氏が、「今のうちに日本の教科書を蒐集し保存をしないと何れ散逸してしまう」という強い危機感を抱き、日本で初めての教科書図書館を創設しようとしたのが始まりです。
教科書は誰でも手にするありふれたものだからこそ、保存や整理が行われにくい側面があります。しかし、時代を追って系統的にたどることで、当時の国や教育が何を目指していたのかがよく見えてきます。まさに教科書は「時代を映す鏡」とも言えるのです。例えば、戦前と戦後では教育の方向性が大きく変わります。この時代の教科書の変遷を追うことで、歴史の中の教育の役割が明確に理解できるようになります。これは、東書文庫の存在意義の一つだと思います。
教科書が辿ってきた歴史と、そこに込められた想いをお話してくれた髙石館長
教科書の特徴や変遷をわかりやすく辿れるように展示しています。江戸時代の寺子屋で使われた当時の教科書である往来物から、明治時代の翻訳教科書や国定教科書、そして現在の教科書まで、およそ100点の資料が展示されています。特に、当時の教科書を印刷する際に使われた挿絵の原画や版木なども一緒に展示しているのが、当館ならではの特徴ですね。ご来館の際は、まず東書文庫や教科書の変遷についての動画をご視聴いただき、その後、展示資料の見学となります。その際スタッフが資料の説明も行います。展示室での見学時間の目安はおおよそ1時間です。
展示室のほかに閲覧室があり、そちらで実物の資料をご覧いただけます。当館は書庫に資料を保管する「閉架式」のため、受付にて申請書にご記入の上、見たい本をリクエストしていただく必要があります。リクエストされた図書は、スタッフが書庫から閲覧室へお持ちします。資料の状態によっては、パソコン画面でのアーカイブ資料の閲覧となるものもあります。教科書は東京書籍以外の発行社のものも保管しており、みなさんにとっての「なつかしの一冊」もあるはず。「あのときの教科書」に再会するような気持ちでも、ぜひご来館いただきたいですね。
研究目的で来られる先生や教育学部の学生、修学旅行で来られる中学生など多くの方がいらっしゃいます。ただ、実は年代や目的はとても幅広いんです。王子という町は明治初期から製紙業で発展してきた歴史があり、紙と教科書は関係が深いので、そのような地域の歴史を学ぶサークルの方々や、趣味で来られる一般の方もいらっしゃいます。
そうなんです。東書文庫は、大正後半から昭和初期に流行した「アール・デコ様式」を取り入れた建造物です。実は、東京都北区の指定有形文化財や近代化産業遺産にも認定されているんです。直線と曲線をうまく組み合わせた意匠やシンメトリーな構造が特徴で、玄関の円柱や階段のジグザグ型の手すり、丸窓など、歴史的な建造物としても見どころがたくさんあるため、建築関係の方やカメラマンの方が来館されることもあります。
先日、80代の方が、ご自身が当時使っていた小学校の教科書の内容を確認したいと来館されました。閲覧室で実際に教科書をご覧になった際、教科書の教材名や冒頭の文章がご自身の記憶と正確に合致していたことに大変感動されていました。教科書は時代を超えて人々の記憶に残り続けるものだと、改めて感じましたね。
これだけ膨大な重要文化財や資料を維持・管理し続けることは大変ですが、歴代館長やスタッフの90年間の地道な作業の積み重ねによって今に至っています。東書文庫という場を通じて、教育と教科書の歴史を証明できていることを光栄に思いますし、これこそが当館の歴史的価値だと考えています。これからもその価値を大切に守り、社会に貢献し続ける施設として、次の100年、そしてその先へと歩みを続けていきます。
教科書を通して当時の思い出に浸るだけでなく、学びの原点や教育の変遷に触れることができる「東書文庫」。「あのとき使っていた教科書」に会いに足を運んでみてはいかがでしょうか。
【ご利用案内】
● 開館日:月〜金曜日(休館日:土・日・祝日・年末年始および会社休日)
● 入館料:無料(完全予約制)
● 予約・お問い合わせ:TEL 03-3927-3680(レファレンスサービスは行っておりません)
● ご利用内容:展示室の見学、図書の閲覧利用(水・木・金)
● アクセス:東京さくらトラム(都電荒川線)栄町駅下車徒歩3分、JR京浜東北線王子駅南口 下車徒歩10分、東京メトロ南北線王子駅1番出口 下車徒歩13分。駐車場はありませんので、公共の交通機関をご利用ください。
● 詳細:東書文庫ホームページをご覧ください。