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五木寛之セレクションⅡ【音楽小説名作集】
『五木寛之セレクションⅡ【音楽小説名作集】』
五木寛之/著
定価1,980円(本体1,800円+税10%)

『五木寛之セレクションⅡ【音楽小説名作集】』

五木寛之/著

 五木寛之セレクション第Ⅱ巻をお届けします。
 第Ⅱ巻は「音楽小説名作集」と銘打って、1966年のデビュー作『さらばモスクワ愚連隊』をはじめ、ジャズやファド(ポルトガルのブルース的音楽)などをテーマに、人間の生き方と音楽の根源に迫る6篇の名作を収録しています。

 2023年1月5日、新春の書店店頭で驚くことがありました。デアゴスティーニ・ジャパンから『ブルーノート・ベスト・ジャズコレクション(高音質版)』の創刊号 (マイルス・デイヴィス/CD付)が山積みされていました。その隣には『ゼロから分かる!ジャズ入門』(世界文化社)が同時発売されていて、ジャズのリバイバルを予感させるものがありました。はたして翌月、2月17日にはジャズの名作漫画『BLUE GIANT』(石塚真一/小学館)のアニメ映画が公開されました。演奏シーンの大音響や迫力は、もはやアニメではなくライブと言ってもよいほどに情熱的でジャズの魅力にあふれていましたが、きっと「モスクワ愚連隊」が奏でたジャズも「JASS(漫画内のジャズチーム)」に勝るとも劣らない即興演奏だったことでしょう。
 『BLUE GIANT』は“音が聞こえてくる漫画”と評されていますが、はるか56年以上も前の五木寛之作品は“音の聞こえてくる小説”として、当時の文壇に新鮮な衝撃を与えたのでした。国境を越えた60年代のリズムとともに、五木寛之のデビュー作品を味わっていただけますと幸いです。

 収録作品の中からもう1篇『海を見ていたジョニー』についても短く触れておきます。稀代のジャズ評論家の植草甚一が次の批評を寄せています(1972年、作品集解説)。
 五木寛之には『海を見ていたジョニー』がある。ぼくには忘れられない作品で、(中略)、ぼくはこれこそ日本で最初のジャズ小説だと考えているのだ。それまでにもジャズ小説はあった。けれどあまりよくジャズのことは知らないようだったし、虚飾だらけだったから問題にならないと思った。
 この植草甚一のように、『さらばモスクワ愚連隊』よりも『海を見ていたジョニー』をジャズ小説の代表として推す人も多いことでしょう。「音楽は人間だ。ジャズ的とは人間的なことだ」。そう言い残して戦場に赴いた黒人兵ジョニーの戦慄のピアノ演奏がつむぐ、愛と哀しみの人間ドラマ。レコード化、映像化もされた不朽の名作が読めることも、本書の愉しみの1つです。

東京書籍 出版事業部
2023年5月
書籍紹介画像
さらばモスクワ愚連隊
海を見ていたジョニー
五木寛之 vs. マイク・モラスキー
老兵たちの合唱
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