書籍編集の現場から
『五木寛之セレクションⅠ【国際ミステリー集】』
五木寛之/著 対談解説/佐藤 優
このシリーズを五木寛之さんとおぼろげに考えていたのは、2020年の秋ごろであり、そのときはまさかロシアとウクライナの戦争が起ころうとは、夢にも思っていませんでした。直木賞受賞作『蒼ざめた馬を見よ』は、冷戦時代の東西両陣営による情報戦を描いたもので、図らずも今日のロシア問題に通ずる内容になりましたが、シリーズの狙いは、五木文学の斬新性と永遠性を伝えることにあります。
オビやポスターの肖像写真に驚かれた読者も多いことでしょう。撮影は石岡瑛子さんでした。本書に付いています月報には石岡さんの文章を掲載させていただきましたが、当時の撮影の様子がつづられています。“今までこんなセクシーな日本の男性みたことない”。その時の記念碑的ポートレイトが、今回の写真になります。
第Ⅱ巻についても少しお伝えします。第Ⅰ巻をご覧の読者は「おや?」「おおっ!」と、きっと思われるはずです。第Ⅱ巻の副題テーマは、第Ⅰ巻で告知したシリーズ広告のどこにも出ていませんでした。第Ⅰ巻刊行後、デビュー作『さらばモスクワ愚連隊』のリクエストが多く寄せられ、急遽、巻構成を見直すことになりました。「ミステリー」かと思えば「音楽小説」。次に何が飛び出すのか、作者も誰もわからない、まさにジャズ的な醍醐味といえます。
ブックデザインは仮フランス装に天アンカットというこだわりに加え、各巻のテーマごとに基調カラーを変えています。第Ⅰ巻は青(Blue Label)、第Ⅱ巻は赤(Red Label)。1冊ごとに配色の美しさがきわだっていきます。さて、第Ⅲ巻以降は?
東京書籍 出版事業部
2023年2月