戦争の中でぼくらは育った_オンデマンド版
ISBN:978-4-487-81798-6
定価2,970円(本体2,700円+税10%)
発売年月日:2024年08月15日
ページ数:208
判型:四六判
80年前、戦争は日常の一部だった。
戦前・戦中の東京の小学生はどのような毎日を過ごしていたのか。
遊び、食べ物、学校生活、そして、空襲、疎開、終戦。当時を知る最後の世代の者それぞれが経験した出来事、その記憶を次世代に伝える一冊。
はじめに
私たちは、日中戦争から太平洋戦争(第二次世界大戦)へと続く戦時下で、小学生から中学生時代を過ごしました。実際に戦場で銃を持って戦った訳ではありませんが、真昼の高空に敵機の姿を見て、その爆音を聴き、空襲警報のサイレンに深夜の夢を破られ、あるいは空襲で住み慣れた町や家を焼かれ、肉親や知り合いの人たちを失い、今では食べないようなもので命をつなぐといったあらゆる不自由を体験しました。一方であの戦争を肯定する大人たちの話に聞き入り、兵隊帰りのおじさんの手柄話に目を輝かせたこともありました。
2045年は、敗戦から100周年となります。その頃には、戦前の穏やかな日本も、戦時中の恐怖の時代も、そして敗戦後の飢餓の時代も、身をもって体験した私たちの世代は生き残っていません。そこで、私たちが戦争に負けて気付いた「戦争の恐怖と、やっと迎えた平和のありがたさ」をいまを生きる子どもたちに伝えたい——と、結晶させたのがこの本です。子ども時代の回想ですから、あの戦争の背景とか軍部の隠し通した日本軍の負の部分までには目が届いてはいません。しかし、次第に衣服・食べ物が乏しくなり、空爆の恐怖におびえながら自由にものを言うこともできなくなっていく、その怖さに気が付いてくれればと思います。
なお、本書の元になったのは、私たちの母校・大久保小学校(国民学校)の同窓会で出会った、同校を昭和48(1973)年に卒業した「ヨンパチ」世代の後輩諸君に、私たちの経験
の「タイムカプセル」を托すことを意図して編まれた四冊の文集です。そこから、戦時下の子どもたちがどのような生活をしていたのか、どのように戦争の現実を捉えていたのか、昭和・平成さらに令和を生きた現在の自分の見識や価値観で論じるのではなく(とは言っても、90年の人生から得た分析にはそれなりの価値があるのは当然なので、各章の随所に顔をのぞかせていますが)、当時の感覚と視点で率直に描かれた文章・記録を、精選・抜粋して再構成したものとなりました。
この本を読んでくださった次世代の皆さんは、きっとさらに次世代の人たち、2045年の子どもたちへとバトンを受け渡していってくれることでしょう。
令和6(2024)年夏
編者 小尾昭
青柳安彦
コンテンツ
80年前、戦争は日常の一部だった。
戦前・戦中の東京の小学生はどのような毎日を過ごしていたのか。
当時の子どもたちが、当時の状況を現在の子どもたちに伝えるため、回想して記憶を語り合い執筆した4冊の私家文集から、率直な見方と臨場感のある文章を精選し、17編の文章として再編集。
遊び、食、学校、地域での日常生活から、戦争報道、空襲、疎開など戦時下ゆえの経験までを、市井の子どもの視点でいきいきと描くことで、過去と現在が地続きであることがわかり、現代の子どもたちにとっても戦争の現実が他人事ではなく、リアルなものとして伝わるだろう。
戦前・戦中を知る証言と貴重な歴史資料であると同時に、平和教育、地域学習、しらべ学習にも活用できる文集である。