よみぐすり_オンデマンド版
ISBN:978-4-487-81616-3
定価1,375円(本体1,250円+税10%)
発売年月日:2022年05月31日
ページ数:160
判型:四六変型判(180㎜*120㎜)/並製/1C
「死にたい」に、代わる言葉が必要なんだと思う。
2012年より、自身の携帯電話の番号090-8106-4666を公開し、「いのっちの電話」として、現在も年間平均1万人を超える「死にたい人」の話を聞き続けている著者、坂口恭平。そんな著者が、死にたい人からの電話を受けた後、たびたびTwitterで記してきた、そして今も毎日書きまくっている、言葉たち。「死にたい」に代わる言葉を探す一連の運動の軌跡を厳選した言葉集。
はじめに
こんにちは、坂口恭平です。僕のことを知らない人もいると思うので、なんで帯に自分の携帯電話の番号まで公開しちゃって、この人大丈夫かなと思ってらっしゃる方もいるかもしれませんので、少し自己紹介をしましょう。
私、坂口恭平は、普段は本を書いたり、絵を描いたり、歌を歌ったりしてます。一応、それを生業にしてます。さらに躁鬱病というものを患っているので、最近では一ヵ月に二五日間は元気いっぱい楽しく生きてますが、五日間はありえないほどぐったりして布団の中で寝込み、毎日死にたいと感じ、本当に泣いてます。
しかも、そんな病気なのにもかかわらず、僕は自分で日常的に使っているiPhoneの電話番号090-8106-4666を公開しており、寝ている時以外はずっと、死にたい人からの電話を受けてます。最近では、「死にたい」と検索すると僕の電話番号がすぐ出てくるらしく、昨日は三五件ほどかかってきました。毎日大体こんな感じです。一日三〇件ですから、一ヵ月で九〇〇人、一年で一〇〇〇〇人の死にたい人からの電話を受けていることになります。自分でも今、書きながらびっくりしてます。
自己紹介をしても、余計になにをしている人なのかよくわからなくなるかもしれませんが、僕は自分でも月に五日間、なぜか知らないけど、ま、理由は病気なので仕方がないのですが、理由もなく死にたくなり、さらには年間一〇〇〇〇人の死にたい人たちの話を聞いてますので、もう毎日、なにを考えているかというと、人生で成功するとか、幸せになるとか、そういうことを飛び越えちゃって、どうやったら、死なずに寿命をまっとうできるのか、ってことなんです。もはやそれだけなんですね。
でも、そのおかげもあって、なんか知らないけど、死なずにそれなりに穏やかに過ごす、みたいな方法というか、コツみたいなものはつかんできたんですね。別に成功者でもなんでもないですよ僕は。ただ、死にそうなのに、死なずに済んでいるという意味では、結構な玄人だと自分でも思います。
僕は死にたい人からの電話を受けた後、たびたびTwitterでどうすれば死なずに済むかってことを書きまくってきました。今も毎日書きまくってます。この本はそんな膨大に書き残した言葉の中から、編集者が厳選してまとめてくれたものです。
あなたが死なずに少しでも気持ちが楽になればと願いを込めて。
短いですからきっと読みやすいです。
それでも危ないな、これはまずいなと思ったら、すぐ090-8106-4666まで電話してくださいね。
みなさんの健康をお祈りします。
二〇二二年四月五日
毎日作品を作っている熊本のアトリエから
坂口恭平