はじめに　３匹と暮らす彼女のひとり言　「ブチねこのロク」

　週半ばの午後４時。
　高層マンションの26階の窓から外を眺めると、そろそろ西日が部屋に入り込んでくる時間帯だ。今日は出社してすぐに頭の重さを感じた。おかしいなと思って体温を測ってみると、38度３分。やばいなぁ、風邪引いた。とりあえず早退して、やっとのことで帰宅した。
　今週もまた、全力疾走のはずが週半ばでリタイア。体調管理がなっとらん。
　にゃー。
　なによ、ロク。いまこんな状態なのに遊べってか？　ベッドの横まで来て、お遊びのおねだり？　あんたさっきまで、こんな私に無関心だったじゃないの！　ハチもナナも私を迎えにきてくれたのに、あなたは何よ。ブチねこ（白黒）のロク（♂）、ミケのナナ（♀）、そして茶トラのハチ（♂）。ゴー、ヨン、サンと続くわけじゃないけれど、この子たちは兄妹だ。それまでのチャミが18歳という長寿をまっとうして、しばらくは思い出に生きようと決心したのに、半年も経たないうちに保護猫カフェで見合いをしてしまった。兄妹と聞き、揃って引き取って我が家に来たのが５年前。
「ねぇ、ロク。お願い、もうちょっとだけ休ませてぇ〜。あと20分！」　
　にゃー。
　ロクは「黒白」というよりは「白黒」のブチ。気まぐれだよね。警戒期間は意外と長かったけれど、打ち解けてからのあなたはカワイイ。遊ぶことで確かに信頼関係が生まれたよね〜、優柔不断なところはあるけれど。
　にゃー。
　「わかった、わかった。遊ぶから……」
　……って、５分で飽きるな！　止めるな〜！　あ〜、また熱が上がってきた。
　ブチ、ミケ、トラと初めて一緒に過ごしてみて実感するこの違い。
　そこには、たしかに秘密がある。