東京書籍

すべての人々に健やかな知的生活を

商品

評価関連商品 一般書籍

お客様

児童・生徒・保護者の皆さま 塾の皆さま 一般の皆さま

東京書籍

トラねこのトリセツ

トラねこのトリセツ

大石孝雄/監修

ISBN:978-4-487-81196-0
定価1,320円(本体1,200円+税10%)
発売年月日:2018年09月01日
ページ数:115
判型:A5

解説:
トラさんの知るといいこと、楽しいこと!

オールマイティーな性格って、けっこう疲れるんだよね。
そんなトラさんは、だから甘えちゃうし食べちゃうし。
明るいよ、一緒に暮らしやすいよ~。歓迎、ねこ初心者!

明朗トラさんと暮らしたい人、暮らしている人におくるトラさんのトリセツ。

はじめに 3匹と暮らす彼女のひとり言 「トラねこのハチ」

 週末の午後5時。
 高層マンションの26階の窓から外を眺めると、下を流れる川の向こうに山々が薄く陰っている。陽はずいぶん傾いているけれど、遅いランチを友人とともにとったわたしのおなかは、まだまだ空になっていない。
 今週も昨日まで全力疾走で働いてきた。疲れているんだ、わたしは。
 土曜日の夕方になっても、回復にはほど遠い。冷蔵庫には、まだもう一缶ハイボールがあったはずだ。それを飲んでもうちょい休もう。テレビでお相撲もやっている。わたしは、柔らかなソファに腰を下ろす前にキッチンに向かった。
 先ほどから、もちろん声は聞こえている。
「ねぇ、ハチ。お願い、もうちょっとだけ休ませてぇ〜。あと20分!」
 茶トラのハチ(♂)、ミケのナナ(♀)、ブチのロク(♂)……、ゴー、ヨン、サンと続くわけじゃないけれど、この子たちは兄妹だ。それまでのチャミが18歳という長寿をまっとうして、しばらくは思い出に生きようと決心したのに、半年も経たないうちに保護猫カフェで見合いをしてしまった。兄妹と聞き、揃って引き取って我が家に来たのが5年前。ミケのナナが長女で、ロクが長男で一番下がハチ。順番からしたら「ゴー」にしてもよかったけれど、いかにもハチなんだな、空気感が。
「ハッちゃん、いつもどうして待てないのー? ナナやロクはいい子にしているでしょう?」
 にゃー、にゃー、にゃー。
 ハチの体重は、いまやナナの1・5倍、そしてロクよりも大きい、というか太っている。食事には細心の注意を払っていて、まったく同じように育てているつもりなのに、どうしてこの差が生まれてしまうのか。ひと言、食いしん坊で、ナナよりもロクよりも甘えん坊で、私のこころをくすぐってくる。
「できない子ほどかわいいっていうけれど、ま、当たってないこともないか」
 トラ、ミケ、ブチと初めて一緒に過ごしてみて実感するこの違い。
 そこには、たしかに秘密がある。

著者情報

大石孝雄(オオイシタカオ)
農学博士。京都大学卒。元東京農業大学教授。専門は伴侶動物学、動物遺伝学、動物資源学。
 日本で初めて、毛柄別の猫の行動・性格調査をおこなう。著書に『猫の動物学』(東京大学出版会)、『ネコになる本』(双葉社)ほかがある。