全国土産銘菓TVチャンピオン中尾隆之の「全国銘菓風土記〜九州〜」
九州のお菓子は、福岡の鶏卵、長崎・佐賀の南蛮渡来・中国伝来菓子、鹿児島の蒸し菓子など、それぞれの県に顕著な個性がある。
福岡には江戸時代から卵黄と糖蜜だけを材料にした素麺そっくりな甘すぎるほどの「鶏卵素麺」(福岡・松屋菓子舗)があれば、卵白だけを使ったふわふわのマシュマロの「鶴の子」(福岡・石村萬盛堂)もある。また愛らしい形の「ひよこ」(飯塚・ひよこ本舗吉野堂)や「千鳥饅頭」(福岡・千鳥屋)も卵をいっぱい使った黄味餡とともに形や焼き印で鳥を表現する。
海外に窓を開いていた長崎には、早くから砂糖が入り、ポルトガルや中国から多くのお菓子が伝来。長崎街道(シュガーロード)などを経て佐賀や福岡など各地に伝わった。その代表が卵、砂糖たっぷりの贅沢きわまりない「カステラ」(長崎・福砂屋、文明堂、松翁軒ほか多数)だろう。卵黄たっぷりの「カスドース」(平戸・つたや総本家)、「丸芳露(マルボーロ)」(佐賀・丸芳露本舗北島)などもポルトガルが源流の南蛮渡来菓子である。佐賀の小城には20数軒共存する「小城羊羮」(村岡総本舗ほか)がある。
大分にはキリスト教を伝えたザビエルに因んだ「ざびえる」(ざびえる本舗)、由布に「ドン・フランシスコ」(菊家)というお菓子もある。からくり饅頭とも呼ばれる江戸時代からの「一口香」(長崎・茂木一O香ほか)は、佐賀では「逸口香」(あけぼの菓子舗)、宇和島では「唐饅頭」(清水閑一郎本舗)の名で伝わる。“よりより”の愛称が定着している「麻花兒」や「金銭餅」(長崎・萬順製菓、蘇州林ほか)は中国伝来。
郷土菓子の中でもユニークなのは、生のサツマイモと小豆餡をいきなり蒸した熊本の「いきなり団子」。カボチャ餡を入れた宮崎の「日向かぼちゃ」、米粉の黒糖、小豆餡などを練り合わせて蒸した鹿児島の「高麗餅」もユニークだ。
沖縄といえば、小麦、砂糖、ラードなどを練って揚げたさっくりクッキーの「ちんすこう」、紅イモの旨みと甘みしっとりの沖縄の「紅いもタルト」が有名だ。
神武天皇に献上との神話にまつわる「つきいれ餅」(宮崎・金城堂本店)、加藤清正が朝鮮に持って行ったという「朝鮮飴」(熊本・老舗園田屋)、薩摩藩主島津斉彬の命で作られた「かるかん」(鹿児島・明石屋ほか)などには歴史の味がたっぷり加わっている。
1942年北海道生まれ。高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。
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