ミッドナイターズ
シリーズ最終巻(3巻)は2007年11月予定
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あらすじ 登場人物 訳者のことば 読者モニターの声 ミッドナイターズの謎 ダークリングの謎 第3巻予告

訳者の言葉 金原瑞人

もうずいぶんファンタジーを訳してきたが、ふと立ち止まって思うのは、ファンタジーって、 ほとんどがどこかに「幼さ」を持っていて、なんとなく「けなげ」で全体的に「感動的」で、そこがまたいいんだけど、 そのぶん、なんとなく物足りないかも、ということだ。

「ナルニア国シリーズ」にしても「指輪物語」にしても「ハリー・ポッター」にしても「ダレン・シャン」にしても、 ある意味、児童文学の王道みたいなところがあって、 見方を変えれば、ちょっと昔までのいい子の活躍する冒険物語とそう違わない部分が目についたりする。 だから、「ミッドナイターズ」を読んだときは、ちょっと驚きだったし、とてもうれしかった。 だって、かっこいいんだもん。

たとえば、ジェシカが初めて経験する“ブルータイム”。

雨に濡れて光るアスファルトの上で、何百万というダイヤモンドが、空中にびっしり浮かんでいた。 ひと粒ひと粒の感覚は十センチもない。 そんな光景が、見わたすかぎり通りのずっと向こうまで、空のずっと上まで、どこまでも続いている。 涙の滴くらいの小さな青い宝石が、無数に浮かんでいるのだ。

そして背景には青い光、そして空を半分埋めつくすかのような巨大な黒い月。

この鳥肌が立つほど美しい世界のなかに突如、出現する不気味な闇の生き物たち。 そしてこの1時間限りの異界をのぞくことを許された若者たち(登場人物表参照)。

ウェスターフェルドの「ミッドナイターズ」は、その発想といい、イメージといい、物語の展開といい、 いままでのファンタジーとは、ちょっとちがう。そして雰囲気はまるっきりちがう。 おそらく主人公たちが高校生ということもあるんだろうけど、すごく大人っぽいし、 シャープだ。いままでのファンタジーとちがって、「幼さ」や「けなげさ」のかわりに、 一種「危うくて、危ない」感触が強い。ただ、「感動的」な部分はしっかり残っている。

ファンタジーの「新しい波」かなとか思ってしまう。